175.これからもいっぱい食べてね
女部屋が騒がしい。
覗いてみると、シャワールームの前でケイトとエレナがキャーキャーいっている。
「こんな立派な設備、見たことありません! さすがは魔導帝国ですね!」
「私んところなんて、桶に汲んだ水で身体を拭いて終わりだったもん!」
でしょでしょ、スゴイでしょ、と、アリやリコットもご満悦ですね。
「んー盛り上がってるところ、悪いんだけど」
4人が一斉に振り向いた。
「ケイトとエレナに、普通の服を買ってあげたいの。院長先生に叱られちゃったんで」
アリとリコットが顔を見合わせて。
あーそうだよねーと頷き合った。
新しく教会に入った人たちの歓迎会ということで、服を買いに行くついでに、必要なものも買おうということになったらしい。
マム院長とちびちゃんたちに留守番を頼んで、他の全員でもう一度街までお買い物に出かけることになった。
みんな、それぞれいろんな事情を抱えてるんだと思うんだけど。
意外に打ち解けるのが早いね。
まあ、エレナはカンタ並みに元気だし。リコットとも仲良くできそうだね。
ケイトは年齢が高いだけあって、落ち着いてるんだよね。子供たちも慣れて来たのか、安心感を抱いているみたいだね。
食料品の市場での買い物は、俺が見守ります。もう何度も来ているし、大丈夫ですよ。
シュランの言葉を信用して、子供たちに食料品の買い物を任せて、あたしたちは古着屋に向かう。
店主に、お、なんだ、という顔をされたが、黄色い見習い服の二人の服を見繕って欲しいと頼むと、事情を察して、店内を案内してくれた。
好きなのを選んでいい、替えも欲しいので2着買ってねと言うと、恐縮されちゃった。いいのよそんなの。大した金額じゃないわ、古着だし。
ついでにサンダルも購入した。いつまでも青いサンダルを履かせられないのよね。
やっぱり、履き替えると、青い光になって消えてしまった。御役目御免ってわけね。
ケイトはダークブラウンのワンピース。替えはベージュのシャツとチャコールブラウンのロングスカート。
服選びのセンスがあるみたい。偉い人にお仕えしていたみたいだから、そういう教育をされてるのかしらん。
エレナは何を選んで良いか分からないみたいなので、ケイトが選んでくれた。こっちもワンピと、替えにはシャツ、スカートだね。
全部で4着。金貨1枚。新品御仕立て上がりの約4分の1だけど、小物を買ってないからこんなもんだと思う。材質も全然違うしね。
うん、そのうち、新品を仕立ててあげましょうね。
店を出ると、ちょうど子供たちが、食材を詰め込んだ荷車と一緒に、あたしたちと合流する所だった。
「わあ、素敵ですね」
アリちゃんが、ケイトの格好を褒める。
「そうですか? ありがとうございます」
ケイトもまんざらでもないみたい。
ふくよかな彼女でも似合うサイズがあって良かったよ。
身体のサイズは、あたしの方が一回り大きいんだけど。
お腹周りはあたしの負け。いや、勝ち負けじゃないか。
体重は同じ位なんだって事は、オークの憑依体を追い出した時に組んず解れずしたんで知ってるんだ。
この世界で太れるってことは、以前は好い所にお勤めだった証拠だね。
大丈夫。あたしらが飢えさせたりしないよ。
ウチらの教会でも、これからもいっぱい食べてね。
「エレナちゃんも可愛いよ!」
「そう? ありがと!」
カンタが褒めると、エレナもスゴク楽しそう。
あ、ジトっとリコットが睨んでいる。
これは、もしや、恋の三角関係?
うーん、この浮気者めってコト?
「でも、リコットもすっごく可愛いんだよ!」
なんかテンションが高いカンタ。
「え、あ、そ、そうかな……」
「そうだよ!」
こんどはそっちの手を取って上下にブンブン振り回す。
エレナも一緒に、手の動きに合わせて飛び跳ねている。
これは、リコットに服を買ってあげた時のテンションを思い出したってヤツか。
そうだね。恋愛の泥沼は、君らには、まだちょっと早いのかもね。




