174.「なんなんですか、彼女たちのあの格好は!」
教会に到着して、住居棟の玄関を開けると、留守番していた子供たちが迎えに来てくれた。
「おかーり……」
「だ、だれ?」
お、物おじしないチビちゃんたちも、さすがにビビったのね。
「お疲れ様で……お客様です、か?」
アリちゃんも対応に戸惑ってるね。
「せんせー、せんせー!」
リコットがマムちんを呼びにいったね。
「わー女の子だー」
カンタは元気だね。エレナの所に駆け寄ってきた。
「エレナだよ、よろしくね!」
「カンタ! 俺、カンタ!」
お互いに手を取り合って、上下にぶんぶんゆすっている。
子供は元気でいいね。すぐ打ち解けるんだね。
ん、子供というより、カンタがそういう性格なのかな?
取りあえずチビたちを抱き上げようとしたら。
「怖がらないようでしたら、私が一人抱きますよ」
そういって、女の子の方のチビちゃんを抱え上げた。
ケイトに抱えられたチビちゃんは、あたしの顔を見て、あ、大丈夫なのね、と察して、そのまま甘え始めた。
こっちも抱えた男の子の方のチビをあやしながら、中に入る。
談話室で、マム院長がリコットを従えてお待ちかねだった。
「ようこそいらっしゃいました。さ、お座りになって」
マムちんの指示で、みんな席に着く。
いつもの朝ごはんの時の席で、あたしの両脇がワンコどもじゃなくて、ケイトとエレナって感じです。
マムちんが自分の自己紹介をして、子供たちもそれぞれ名前を名乗る。
あたしとみーよは、自己紹介はいらないでしょ?
で、両脇の彼女たちも名前を名乗って、顔合わせはとりあえずおしまい。
ケイトもエレナも、お手伝いに意欲的なので、アリとリコットが一通り教えるみたいね。
で、その間にあたしたちは院長室で今後の打ち合わせね。
~ ・ ~
「聖女ミヨ」
「は、はい……」
あ、みーよの顔。これは、説教を覚悟してる顔ですね。
「なんなんですか、彼女たちのあの格好は!」
うわぁ、マムちん怒ってるよ。
「スイマセン。あの、女神さまに、服を……」
「出してくださるはずがないでしょう! ホントにもう、恥ずかしいったら……」
マムちん、頭を抱えて首を振る。
へえ、そういうもんなんだ。
こりゃ、みーよがヤラかしちゃってるんだね。
しょうがない、助けてあげよっか。
みーよ、一つ、貸しですからね。
宗派間会議の時の、ヴァラミンのあの態度。ん-カッコイイじゃないのさ。
そんな感じで、マムちんにお願いしてみる。
「やっぱ他所の宗派の見習い服は、マズいんでしょ?」
「当然です! あんな格好で戻ってくるだなんて……なんたる屈辱!」
おお、荒れてますなぁ。
「代わりの服を用意しなきゃだけど、この教会にはそんなものないよね?」
あたしの代わりの服は、マムちんの旦那さんのがあったけどね。
「……そうですねぇ。ない事もないのですが」
マムちん、少し考える。
え、あるの?
マムちん専用の寝室に行き、少しして戻ってきた。
「見習い用の修道服ですが、サイズがあうかどうか……」
あれ、あるんだ見習い服。
そんなあたしの顔を見て。
「あるに決まってるじゃありませんか?」
なんでそんな顔するの? って感じのマムちん。
「いや、だってアリやリコットは普段着てないでしょ?」
「それはそうですよ。見習いではありませんから。ですから彼女たちも……」
い、いや、そういう事じゃなくて。
「アリとリコットは、将来、聖女を目指すんじゃないの?」
「以前はそう考えていましたが、聖女にはミヨが成ったので、不要になりましたよ?」
だから、見習い服も着れなくなったって事か。
ん-それだと、やる気も無くなっちゃうよね。
「今は違うんでしょ? アリやリコットに着せてあげたら?」
「どうでしょうね。聖女の修行は厳しいですよ。才能の無い者には務まらないのですけどね」
懐疑的なマムちん。
いやでも、ケイトやエレナに見習い服着せちゃうと、アリやリコットの立場が厳しくならない?
だって、新入りが聖女見習いになっちゃうんでしょ?
「女性は、聖女に成れなくても嫁に出せば済みますからね。それほど心配はしていないのですよ」
いやまあ、そうなんだけどさ。
でも、シュランやカンタの気持ちもあるでしょうに。
「嫁ぎ先さえあれば、女性の場合は身元が保証されますからね。出仕については一生言われはしますが、嫁いだ家で子を産み、立場を確立してしまえば、平民でしたら何も言われなくなるものですよ」
まあ、そうなんだけどね。
取りあえず、女性の生き方は置いといて。
「見習い服は、とりあえずアリとリコットに着せてあげて欲しいな。恰好が決まらないと、勉強する気も起きないでしょ?」
「あなた方が買ってあげた服は、どうするおつもり?」
あら、なんかマムちん楽しそうね。
「お出かけ用でいいと思う。外に出るにも見習い服じゃないとダメってことはないんでしょ?」
「ありませんね。ふむ、宜しい。付き人イクミの提案をお受け致しましょう」
ほっ。
良かったね、アリ、リコット。
「で、彼女たちの服は、どうするおつもり?」
んー、忘れてないけど。
この顔は、私はお金を出しませんよって顔だよね。
「乗りかかった船だし、あたしらが出すよ」
「そういうことでしたら、結構ですよ」
ううむ、マムちん、シタタカだなぁ。嵌められたかな?




