173.最後まで、面倒を見るのですよ
どうやら解散の運びの様で、シュランはイーシュを手伝って会場の長テーブルや椅子を片付け始めている。白黒じいちゃんのお弟子さんたち二人も、一緒に手伝っている。
あたしはみーよに付いてないとマズイので、手伝えないけど。
で、みーよが少し困っている。
尋ねると、エレナとケイトをウチらの教会に連れ帰る方法を考えているらしい。
んなもん、歩いていけば……
あ、そうか。彼女たちは入院用のポンチョのままだね。
青いサンダルを履いてるけど、これって青の教会を出たら消えちゃうんじゃないの?
服か。どうしよう?
取りあえず、なんか着せないとダメだね。
今から仕立てるのは無理なので、中古洋品店で揃えるとか?
そこにヴァラミンと、大きなトランクを抱えたメローがやってきた。
「お困りの様ね?」
「は、はい……」
「大聖女を目指すなら、細かいことに気が回る者をそばに置きなさい」
そういって、メローに指示すると。
トランクを開けて、中に入っていた黄色いワンピースを選び始めた。
「サイズはこれで大丈夫だと思いますわ。着てみて頂いても?」
エレナとケイトに手渡して、青の教会の中で着替えるように勧める。
「随分、用意がいいのね」
「当然ですわ。お姉さまがなさることですもの」
メローが気を回したわけじゃないのか。
「本当は大地母神で引き取って連れ帰るつもりでしたのに、横取りされてしまいましたからね」
後ろからヴァラミン。
「アストレージも、生命と死の裁定も、私たちも、馬車で来ているのは虜囚者を乗せるためですのよ? 人目を避けられるでしょう?」
あ、確かにね。単なるカッコつけじゃ無かったのね。
「こんな事もあろうかと、虜囚者用の着替えを用意しておいて良かったですわ。その服は見習い用ですので、暫くお貸し致しますわ」
みーよがペコペコと頭を下げている。少し顔が赤い。
そこまで気が回っていなかったんだね。それは、しょうがないんじゃない?
「無理を言って引き受けたからには、最後まで、面倒を見るのですよ。まあマム・エンデバス様がおられるので、その辺は大丈夫でしょう」
最後まで偉そうに説教を垂れると。
「では、皆さま、ごきげんよう」
そういって、メローと共に馬車に乗り込んだ。
他の馬車組も、それぞれ色白さんとスラブ美人を連れて乗り込んでいく。こっちは、入院着のままだね。
その後ろに、宙に浮く布に乗ったエロハゲと愛人たちが続く。
受け入れてくれた家族に包まれた女性たちが、涙ぐみながら見送る。
あたしたちの元に来た、黄色いワンピースに着替えたエレナとケイトも、同じように涙ぐみながら彼女たちを見送った。
そして。
残った人たちも、別れを惜しみながら、一組、また一組と去っていく。
本当に、互いへの絆がとても強いんだね。
「さあ、わたしたちも帰りましょう」
「はい!」
みーよの言葉に、シュランが張り切ってるね。
すごいものを見た、って感じかな?
うん、あたしもキャパオーバーだわ。
色々と頭に詰め込み過ぎて、ちょっとフラフラする。
青の教会の面々と、捕虜の女性たちとその家族に見送られて、あたしたちも帰路についた。
青いサンダルは、教会を出ても消えたりしなかった。
みーよとしては、光の奇跡で履物や着る物を出すつもりでいたんだって。
でも、女神ちゃんが認めてくれなかったみたいなのよね。
うーん、ケチねぇ。
ま、何でも認めちゃうと際限が無くなるのは、その通りなんだけどね。
どこかで中古洋品店に行くか、新調しないとダメだね。
うーん、お金かー
マムちん、今回、太っ腹に資金出してたしね。大金貨2枚だって。
ついでに彼女たちの洋服代、出してくれないかな?
シュランの装備一式は、みーよがポンと出してくれたけどさ。
そのついでで、洋服代も、ウチらで出すのかなぁ。
ま、その辺はみーよが決めることだね。
あたしは、ケイトとエレナの手を繋いで街中を歩く。
みーよの護衛はシュランに頼んである。前を歩き、時折きょろきょろして様子を見ている。初々しいね。
あたしの可愛い制服の両脇に、大地母神の見習い服らしい黄色のワンピースを着た二人。ついでに青いサンダル。
で、その前を歩く白い法服のみーよ。
うん、注目されてるね。スゴク注目されてます。
「なんか、照れるというか、見られてるね」
後ろを振り向いて、照れてるみーよ。
「みたいね」
でも実はあたし、そんなに気にしてなかったりする。
普段から、注目されるのには慣れてるんだよね。
でも、ケイトとエレナは、それどころじゃないみたいだね。
自分たちがどこに連れていかれるのかと、街の様子を少しでも覚えておきたいみたい。覚えないと、道に迷っちゃうもんね。
スラムに入ると、直接の視線は無くなったけど、バラックや廃墟の影からの視線は感じるようになった。
まあ、あたしはともかく、大地母神の見習い法服を着て歩いてる二人の事は、何者だ、と思うわよね。
でもまあ、あたしがいるし、武装したシュランが先頭を歩いているので、特に絡まれたりはなかったわ。




