167.「デモもナニも無い。今スグ行く!」
カンタのイイ所は、立ち直りが早い所。
夕食の席では、もう復活している。
あんなに騒いでいたのに、何事も無かったみたいに振舞っている。
で、立ち直れていないのが、アリちゃんだね。
どんよりと、暗いよ。
リコットが気を使っているのが、なんか痛々しい。
シュラン、分かってるんだろうね。
本当にアリちゃんを支えてあげられるのは、アンタしかいないんだよ。
食事が済んだ後、アリちゃんは体調がすぐれないと言って、女部屋に引きこもった。
みーよが、コーヒーを二杯淹れて、シュランに持たせる。
「はい、行って来て」
「で、でも、俺……」
みーよは、キッという目つきでシュランを睨みつける。
「外に誘いなさい。二人で、ちゃんと話し合うの」
「い、いや、話は散々……」
みーよは、深いため息をついた。
「これだから男の子は。
あんたのそれは、話し合いじゃない。
アリの話を全部聞いてあげて。
否定しない。
真剣に聞く。
話している時に口を挟まない。
……分かった?」
「でも」
「デモもナニも無い。今スグ行く!」
追い立てられるように、シュランはコーヒーを持たされて女部屋へ。
少しの話し声と、ちょっと大きなアリの叫び声と、泣き声と。
やがて、外への扉が開いて、閉まる音と。
かすかに聞こえる、外で何か話している声と。
「ホント、世話の焼ける」
全くだね。みーよ、大変だねぇ。
「リコット、先にシャワー浴びてきて。髪を梳かしてあげる」
「うわ、やったー!」
お姉ちゃんは今、とっても忙しいの。
リコットは頑張ってるから、ねぎらってあげる、って所かな?
ホント、みーよ、大変だね。
ま、生きていくって、誰でも大変な事なんだよね。
それでも、何とか、上手くまとまるとイイんだけどね。
みーよが、リコットのお世話をしている間に、あたしもシャワーを浴びて、お着換えして。
一つ伸びをして。
寝入っているちびちゃんたちの匂いを嗅いでいるうちに。
いつのまにか、あたしは眠りに落ちていった。
(つづくっ!)




