165.ああ、なんか、いいなぁ
装備を付けたまま、剣の素振りをさせる。
とにかく、身体に馴染ませる。
剣も鎧も、身体の一部になるかのように。
盾は持ったまま。剣を振るう時は身体の横に。振り戻す時は身体の前に。
何度も何度も、繰り返し行わせる。
ああ、なんか、いいなぁ。
若い子が自分を信じて稽古に打ちこんでる姿って。
1時間位、基礎動作を行わせた後は。
シュランの模擬剣を借りて、あたしが軽く打ち込みを始める。
盾で、剣で、とにかく防いでみせな、と前置きして。
速度を落として、上下左右から打ち込んでいく。
最初はまるで話にならなかったけど、だんだん分かってきたみたいで、1時間後には、ほぼ防ぎきるようになってきた。
「モノになってきたじゃないか」
息が上がっていても、達成感があるらしくて、笑みがこぼれている。
「はい。でも、まだまだです」
「そりゃそうだね。よし、一旦休憩」
「は、はい……」
シュランは腰を落とそうとして、急に崩れ落ちた。
「あ、あれ……」
「ハハ、緊張が解けたみたいだね。そうやって、基礎体力を付けていくんだよ」
シュランが休んでいる間、あたしは仮想オーク・ジェネラルを呼び出して、自分の稽古を始める。
なんか、楽しそうに一生懸命稽古しているシュランに、触発されちゃったわ。
こないだは、アギト・ナイフが肩に刺さって取れなくなったんだよね。
断ち切る強さが欲しい。貫く勇気が欲しい。搔き斬る速さが欲しい。
目を、鼻を、首を狙って、アギト・ナイフを突き刺しては離れる。
左右に身体を振って翻弄し、背中に向かって跳びかかっては離れる。
発勁の応用でアギト・ナイフにひねりを入れて、溜めた力を先端から放出してみる。
うわ、これ、すごく疲れる。
実戦では使えない、かな……
「おう、ししょう。ししよー!」
なんか聞こえる。
あたし?
あ、あたしだ。
「……ゴメン、夢中になってた」
「いや、大丈夫です。見てて、参考になってます」
そういってくれると助かる。
いつの間にか、日が暮れかかっている。
ぼちぼち、夕食の時間だね。
「……あがろうか」
「はい」
あたしたちは、建物の中に入った。




