164.「親を寄こせよ!」
用事が済んだんで、教会に帰る。
シュランに武器と防具をなじませなきゃならないね。
と、珍しい。スラムの住民があたしらの道を塞いでいる。
シュランと同じ年代の少年だ。4人いる。
「誰?」
「薪拾いの仲間、だった子たちです」
少し言いにくそうなシュラン。
仲間、だったのね。
今は、違うのね。
「お、お前!」
中の一人、リーダー格かな?
精一杯叫んでる。
「ズルいぞ、お前ばっかり!」
「そうだ!」
「ズルいぞ!」
「俺たちも……」
あらら、妬ましいのかしらん。
まあ、気持ちは分からなくもないけど、さ。
「どうする?」
男の子同士の喧嘩に、手なんか出さない。
アリやリコットに手を出すなら、ガキだろうと絶対に許さないけどね。
男なら、自分で解決しな。
「なにが、どうズルイんだ?」
おお、シュラン、そのまま向かっていったよ。
「なにがって、なんでもだ!」
向こうも強気だね。4人いるから?
こっちはあたしがいるんだけどね?
あえて無視、かな?
「じゃあ、どうすればいいっていうんだ」
そのままシュランはリーダー格の真ん前まで行った。
睨み合う二人の少年。
「ど、どうすればって、お、お前なぁ!」
リーダー格、大きく拳を振り上げた。
シュランは片手を顔の前に上げた。
ガードかな、と思ったら、違った。
そのままリーダー格に向かって、手甲で覆われた腕を、肘を支点にして振り下ろした。
スナップジャブ!
へえ、いつの間に覚えたんだろう?
「ぐぎゃ!」
リーダー格、全く油断していたみたいで、モロに喰らって倒れ込んだ。
そのままシュランは、周囲の少年たちを見回す。
「他に文句の有る奴はいるか?」
「な、な、何を……」
何か言いかけた少年の肩を掴んで片足を蹴飛ばすと、面白いようにひっくり返った。
「ぐはっ!」
手加減したのかな?
それでもむき出しの腹を蹴っ飛ばして。
ぐぇえと呻いているのを無視して。あとの二人を見つめる。
「おまえらも、やるのか?」
「い、いや……」
「ご、ごめん……」
シュランは一つ、ため息をついて。
「今まで一緒にやってきた仲間を傷つけたくはなかったけど」
蹴った相手や、ジャブをかましたリーダー格を、手を伸ばして立ち上がらせた。
「俺は、お前らみたいに親がいないんだ。だから、自分の事は自分でやるしかない。俺に文句を言うなら」
少し息を吸った。
「親を寄こせよ!」
誰も、何も言えなくなった。
「師匠、スイマセン。片付きました」
何でもなかったかのように、あたしに頭を下げるシュラン。
へえ、やるじゃん。
もう、子供のように頭をなぜる必要は無いね。
大人の男として扱って良さそうだ。
胸を軽く、皮鎧の上から叩く。
「午後から、みっちりしごいてやるよ。覚悟しな」
「は、はい!」
でっかい声で、シュランは返事した。




