162.「なにか、いいことがありましたか?」
カンタとアリは、それぞれ男部屋と女部屋の寝室に籠ってしまった。
リコットが、後の事は何とかする、と言ってくれた。
みーよも、教会に残るつもりみたい。
あたしはみーよから軍資金を貰って、シュランを連れて武器防具や他の装備を揃えに向かった。
「まさか、アンタがみーよの付き人にねぇ」
軽口を叩くと。
「いや、師匠、俺、真剣に考えたんですよ。ホントですよ」
ほっとしたのか、すごい早口で言い返してきた。
まあ、反対してる子供たちが多いんで、ダメだとみーよが言い出す可能性もあったからね。
「色々と相談したし」
「あたしにはなんにも言わなかったじゃないか」
「そ、それは……」
「それは?」
「反対されると、立ち直れそうになかったんで」
何よ、そんな理由?
「お願いする当日には、あたしに言われる事なんじゃないの?」
「それは、もう、勢いが付いているので」
ふん、子供みたいな言い訳だねぇ。
いや、大人でもそういうこと、あるか。
とか、会話してるうちに、防具屋に着いた。
「先に防具なんですか?」
「そうだね。アンタの体力で、どこまで重いものが持てるか、先にコッチを決めないとね」
あたしみたいに鎧無しの軽装でいいなら、防具は後回しでイイんだけどね。
多分、みーよの近くで守護するだろうアンタは、ちゃんとした防具を着た方がイイと思う。
今まで教えてきた事が、生きない訳じゃ無い。
でも、アンタには最低限の防具ってものがヤッパリ必要なんだよね。
え、あたし?
あたしには、んなもんイラン。天才ですから。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
最初に来た時は不愛想だった店主。
でも、あたしというよりシュランの顔を見て、これはちゃんとした客だと見抜いたらしい。愛想がいいなあ。
「コイツに、初心者用の鎧、盾、兜、手甲、ブーツ、マントを見繕ってくれる?」
「畏まりました」
「師匠、盾ですか?」
「うん、アンタにはその方が向いてると思う。アンタがもう少し年若いなら、あたしの流儀を仕込むんだけどね。アンタは地道にやった方がいいと思うね。盾の使い方は、そのうちマイアミにでも教わるといいよ」
「判りました」
付き人なら、みーよから祝福を貰って、剣や盾に付与すれば、それなりの事は出来ると思う。
正直、シュランには戦いに関して、そこまでの光る才能はないと思うけど。
アンタにとっては、普通に冒険者をやってる、なんならC級ライセンス持ちでさえあるマイアミは、とても参考になると思うんだよね。
結局、中古品として売られていた皮鎧を手直しして使う事になった。
盾も、革製の五角形シールド。補修しながら使うことになると思う。
兜も手甲も、全部革製。
金属系の防具も試してはみたんだけど、重すぎて無理みたいね。
うん、体力をもっと付けないとダメだね。
でも、一式を身にまとうと、それなりに“らしく”見えるから、不思議だね。
兜、手甲、皮盾、ブーツはそれぞれ金貨1枚。
革鎧は金貨2枚。
マントは大銀貨5枚。小物を入れる腰袋とセットにして、金貨1枚でどうかと言われた。相場としては多分高いとは思うんだけど、めんどくさいんでそのままでいいよと言おうと思ったら。
シュランが値切りにかかった。自分は初めて冒険にいくんだ、ちゃんとした防具を見繕ってくれたのは嬉しい。成長したら金属製の防具も欲しい、ひいきにするから、応援と思って値引きしてくれないかって。
店主も苦笑して。めんどくさいのでと、マントと腰袋はオマケにしてくれた。
金貨1枚、値引き??
いや、元々そんなにしないんでしょ?
あたしは騙せても、シュランは騙せないみたいね。やるねえ。
で、隣にあるいつもの武器屋に。
「あ、いらっしゃいませ」
例の30代の感じのいいラテン系の店主。
シュランの顔を見て。
「なにか、いいことがありましたか?」
うわ、鋭いねぇ。
人を見る目の年季が、あたしなんかとは、まるで違うんだね。
「はい。聖女さまの付き人になりました」
「それはそれは、おめでとうございます!」
大げさは見えない、心から嬉しそうな喜び方。この辺も、巧いんだよね。
も―ホント、この店大好きだわっ!
「基本は仕込んでるけど、マダマダだとは思う。武装を見繕ってあげて欲しい」
「はい、畏まりました」
と、選んでくれたのは、鉄製のショートソード。金貨2枚。
あと、予備武器で同じく鉄の短剣。金貨1枚。
防具を着込んだんで、ロング・ソードはまだ扱えないみたいね。思春期を終えて、もう少し身体が出来てきたら、武器の持ち替えをしてもいいと思う。
その時は、今使うショートソードを、予備武器に出来ると思うよ。
まあ、まだまだ子供なんだよ、君は。




