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Sweet Bomb NEXT  ~ 今度は異世界で大暴れっ!  作者: 白河・DG・夜舟
転移二十日目っ! ~ 迷宮を探索っ!

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144.って、ちょ、勝手に行くなぁ!

 昨日、大カマキリと戦った場所を抜けて、探索を再開する。

 例のカマキリが、その辺の生き物を片っ端から食べていたようで、大きな生き物は全然見かけなかった。

「あ奴、階層主だったかもしれんな」

「可能性は、ありますね」

 ダナンとマイアミが話していると、デンが何か見つけたらしい。

 手招きしている。

「これ、隠しスイッチ」

 壁に突き出ている、何の変哲もないでっぱり。

「どうする?」

 押すか押さないか。

「我々は少し離れて様子を見る。デン、頼めるか」

 デンが頷いて、あたしたちに下がるよう促す。

 危ない役目を押し付けているみたいで申し訳ないけど。

 ウチらで一番素早いのは、アンタだもんね。あたしでも敵わないわ。

 あたしたちの様子を見届けてから、デンがスイッチを押した。

 何も起こらない?

 そう思ったのは、ただ気が付いていないだけの話だった。

「振動がした。通路が変わっているはず」

 デンは、気づいたらしい。

 あたしは、分かんなかったな。

 みんなも同じらしい。

「こっち」

 こういうのは、任せた方が良さそうだ。

 マイアミが頷き、あたしたちはそっとデンの後をついて行く。

「これ」

 前に通った時は、壁だった、っけ?

「確かに、今までは無かったな」

 マッピングしているマイアミが、地図を確かめている。

「デン、でかした」

 マイアミが褒めると、フードの影でゴニョゴニョ言っているのが聞こえた。


 通路は少し先で、下に向かう階段になっている。

 割と(くだ)って、やがて開けた場所に出た。

「第11階層だな」

「まちがいないわい」

 そうなんだ。わかるものなのかしらん?

「我々は第10層の資格持ちじゃからな。分かるんじゃよ」

 へえ、そうなんだ。

「おぬしらも、どこかで階層主を倒せれば、分かるようになるんじゃ」

 そりゃ楽しみだねぇ。

「よし、地道だが周辺のマッピングから始めたい。デン、頼む」

 デンが頷き、ゆっくりと通路の一つに向かって歩き出す。

 と、足を止め、地面に耳を付けた。

 ん?

 あたしも周囲を警戒するけど、危険は感じない。

 デンはしばらくそうしていたけど、こっちに戻ってきた。

「……上への通路が塞がった。どうする?」

「戻れない、ということだな」

 デンが黙って頷く。

「本当にダメなら帰還スクロールを使おう。赤字になるが、やむを得ない。探索を続けたいんだが、いいか?」

 ま、それしかないよね。

 いざという時の保険。帰還スクロール。

 確かに、あれば安心だけど。

 あたしがこのダンジョンの主なら、そんな甘いことは許さないけどね。

 マクロン閣下の“なんでもあり”は、それを通しちゃいそうなんだよね。

 デンは、再び通路の探索を始める。

 その小さなローブ姿が闇の中に溶け込む寸前、立ち止まって合図を送られる。

 あたしたちはその後をついて行き、デンは再び通路を探索する。

 何度か、同じことを繰り返していくと。

 通路が二手に分かれた。

「最初の地点から道が3つ。ここでさらに2つか」

「右はやや登り、左は少し下りだな」

「デン、両方の道を、少し奥まで調べられるか?」

 デンは頷き、まず左の下りを歩き始めた。

 ほどなく戻り、右の道も調べた。

「どちらも、あまり使われていない」

 マイアミがやや思案する。

「戻って、他の道の可能性を探ります」

「ここまで来たのに?」

 と言ったら、苦笑された。

「イクミ殿には、地味で退屈に思えるかもしれないな」

 いや、あたしシロウトだし。そこまでは思わないよ?

「上の通路が閉められたということは、正解の道がどこかにあるということになる。意志を持つもの(ダンジョンマスター)が管理するダンジョンは、そうした正解を用意するものなのだよ」

 はいはい、そうなんですね、マイアミ先生。

「間違った道に誘導して迷わせるのも、ダンジョンマスターの狙いだからな」

 そうなんですね。わからんけど。

 あたしたちは元の地点に戻り、別の道の可能性を探った。

 こっちも、あまり使われていないみたい。

 残るは、もう一つの道。

「最初の道の分岐、左の下りと、次の道の分岐の右の下りは、繋がっている可能性が高そうですね」

 マイアミの書いた地図で、あたしたちの位置が大まかに分かってくる。

 見ると、確かにこの二つの道は奥で繋がりそうな気もする。

 なるほど。マッピング地味だけど、大切なのかもしれないね。

「こっちの道も調査しましょう。大まかな方向は、それが終わってから決めても良いと思えます」

 反対する理由もない。

 同じようなパターンで、あたしたちはデンを先導させて通路を進み始める。

 それにしてもこのフロア、生き物の気配がまるでない。

 まるで、定期的にお掃除でもされているのか、あるいは……

 ん、なんか、感じた。

 いる。なんかいる。

「デン……」

 かなり離れた所で何かを調べているデンに声を掛けようとして。

 ちがう、そっちじゃない、後ろの方だ。

「みーよ、光の障壁準備。ダナン、構えて。後ろから何か来る」

「え?」

「なぬ?」

 ああ、もう来る。絶対に来る。

 スリングを取り出し、石をセット。

 何も見えない虚空に向かって、ヤマ勘で投擲!

 壁に、じゃない。何かに当たったけど、音がしない。

「みーよ!」

「光よ照らしたまえ!」

 みーよが召喚(よびだ)している光の球の輝きが増した。

 強い光にあぶり出されて、壁に張り付いているでかい生き物の姿が浮かび上がった。


挿絵(By みてみん)


 蜘蛛だ。体長8メートルくらい。脚を入れるとその倍近くになるね。

 全身を黒い剛毛に覆われている。

 頭部に大きめの複眼が8つ。その下には大きな牙が一対。

 8本の太い脚のそれぞれに、細く鋭い爪。

 多分弱点だと思う、腹部は床面に隠れて見えない。

 じっと動かずに、あたしたちを品定めしている。

 もし気付かなければ。

 背後から忍び寄られて、一人か二人はヤラれていたんだろうね。

「郁ちゃん……」

 みーよが、あたしの制服の裾を掴んでいる。

 掴まれると、すぐに動けないんだけど?

 あぁ、前に蜘蛛に襲われてどうこう言ってたね。

 ションベンがなんとか、ってコイツのこと?

 息が荒い、みーよ。よっぽどのトラウマだったんだね。

「落ち着いて。光の障壁でとりあえず身を守って。様子見で、祝福も欲しいかな」

 そういうと、みーよの息が、少し落ち着いてきた。

「マイアミ、戦うしかないんでしょ?」

 一応、リーダー殿に確認。

 緊急だったんで取りあえず仕切ったけど、睨み合いになったんで指揮権を返す。あたし、どっちかというと前線で暴れる方が好きだし。

「う、うむ。逃げ切れるとも思えませんね」

「フロアに生きもんの気配がせんかったのは」

「コイツが全部、喰っていたんでしょうね」

 でしょうね。

 いつのまにか、デンが傍らに潜んでいる。

「出る。続いて」

 あ、行くの?

 マイアミ、行かせていいの?

 って、ちょ、勝手に行くなぁ!

「んもぅ!」

 みーよ、パニくらないでね、と思いだけ残して、デンに続く。

 って、デンが速い!

 でも、大蜘蛛が即反応する。大きな尻を出して、後ろの脚を使って糸を広い範囲に放った。

 デンが素早く右側へ飛び退く。

 これ、そのまま突っ込むと、糸に絡まるのよね。

 あたしもデンと逆の方向に跳ぶ。

 スリングに石をセット。頭部の目を狙って放つ!

 ン、空中で石が絡めとられる。

 周囲を糸で守っているらしいね。

 細すぎて、よく見えないんだけど。

 デンが懐から、小さな革袋を取り出した。

 そのまま蜘蛛に向かって投げたけど、同じように見えない糸に絡まってしまう。

「イクミ!」

 なによ、狙えばいいんでしょ。

 先に言いなさいよね、石一個無駄にしたでしょ!

 あたしの放った石が袋に命中すると、中から液体が飛び散った。

 と、一気に燃え広がる!

 大蜘蛛がビクッと震え、こちらを見ながらそそくさと後退しはじめた。

 燃える糸をくぐるように、デンとあたしが後を追う。

 後ろ、ついてこれるかなぁ?

 ちょっと心配だけど、こっちが先だね。

 大蜘蛛が立ち止まり、迎え撃つ姿勢を取る。

 構わずデンが突っ込む。

 飛び上がるフェイントを入れて、スライディングしていった。

 狙いは腹か!

 続くあたしはそのまま跳び上がり、頭を狙う。

 空中でアギト・ナイフを抜いた。

 上と下から同時に迫られて、反応しきれまい!

 大蜘蛛は、あたしの処理を先にすると決めたみたいで、一番大きい前脚を2本広げて突き刺しに来た。

 足で蹴飛ばして、一旦かわす。

 逆側の蜘蛛の脚には、アギト・ナイフの一撃をくれてやった。

 硬い、でも、刃は入っている。

 斬った反動も使って、大蜘蛛の背中へ飛び込むように着地。

 即、空いた片手で剛毛を掴み、蜘蛛の背中にナイフを突き立てる。

 ぐ、硬い。

 柔らかそうな部分といえば、目、しかないよね。

 脚が届くんで、怖いけど。

 でも、こっちが頑張らないと、デンが狙われちゃうしね。

 ナイフを一旦仕舞い、両手で剛毛を握りながら頭部に向かう。

 大蜘蛛は身体を左右に揺らし、あたしを振り落とそうとするけど。

 アンタの毛が掴みやすいんで、そういうわけにはいかないんだわ。

 頭部に近づくと、脚が届く範囲らしく、何本もの爪があたしを狙ってくる。

 片手で剛毛を掴んだまま、アギト・ナイフで打ち払う。

 向こうもきちんとあたしを見えていないようだけど。

 あたしはあたしで、片手で身体を支えているので、そんなに力が入らない。

 ちょうど、大蜘蛛の頭部で拮抗していると。

 ガクン、と大蜘蛛の態勢が崩れた。

 デンだ。急所に一撃入れたらしい。

 脚の、爪の反応が鈍くなる。

 あたしはそのスキに頭部に近づき、一番近くの複眼に刃を刺し通した。

 刺し入れた刃を前後に揺らし、充分に破壊して引き抜く。

 にじみ出た濃い緑色の体液が、ねばねばしたままヤツの表面を伝っていく。

 汚いので触らないようにしながら、次の複眼を探す。

 二つ目を処理し、三つ目に取り掛かった所で。

 大蜘蛛が完全に停止した。

 周囲を確認し、安全を確保して、飛び降りる。

 すぐにデンが寄ってきた。

「怪我は?」

「割と」

 見ると、左腕がダランとぶら下がってる。ローブの右脚辺りも裂けていて、血が滲んでいる。

「アンタ無茶するねぇ」

「そっちこそ」

 あら口答え?

 言い返そうかと思ったけど、治療が先だわ。

 みーよ、と呼ぶ前に、全部分かっているらしい、マイアミが先に来た。

「傷をみます。ローブを脱がせますよ」

 コクンと頷くデン。彼には素直なのね。

「傷、郁ちゃんの方は?」

 ん-どうかなぁ?

 直接貰ったダメージは無いと思う。

「凄いねぇ。ほぼ二人で討伐しちゃったんでしょ?」

 お、トラウマを乗り越えたのかな?

 小山のような大蜘蛛を見つめるみーよに、震えや緊張がない。

「この手の輩は苦手でな」

 後からやってきたダナン。

 まあそうだろうね。重戦士だと、糸に絡めとられてがんじがらめだろうね。

「デンが対策してくれてたんで、仕留められたようなもんだよ。今回はあたしもサポートしかしてないしね」

 うん、出来る子デンだね。大したものだと思うよ。

「迷宮の怪物は、何が出てくるか分からんからな。地道に覚えるしかないんじゃが」

「その辺は、誰もダナンには期待してないと思うよ?」

「な、なんじゃと!」

「期待されたいの?」

「い、いや……」

 でしょ?

 融通の利かなそうなその恰好で、あれこれ手配してなんて言うつもりもないよ。

 アンタはみんなを守る盾役と、あたしらじゃ刃が通らない硬い奴にとどめを刺してくれればいいんじゃないの?

 とはいえ、アギト・ナイフを主戦武器(メイン・ウェポン)にするのは、ボチボチ心もとないね。

 こいつは予備武器(サブ)にして、もっとゴツイ武器を探さないとダメかもね。

 出来れば、軽くて壊れないのが理想なんだけどね。

 後は、みーよの光の祝福に期待するとか、かなぁ。

「治療、終わりました」

 少し汗をかいたマイアミ。

 何か元気の無いデン。

「大丈夫なの?」

「まあ、ちょっと頑張りすぎたな、デン」

 マイアミが話しかけると、その陰にコソコソと隠れた。

 なによ、照れてんの?

「コイツは、ほとんどアンタが仕留めたようなもんでしょ?」

 大蜘蛛を指差して、そう言ってやると、フルフルと首を振る。

 なんだかなぁ。

「ミヨ殿、これもトルモルト様に奉納で宜しいですかな?」

「はい。アーリューシャイン様は、蜘蛛がお嫌いの様ですから」

 少し苦笑いする、みーよ。

「どゆこと?」

 こそっと聞いてみると。

 みーよが以前に大蜘蛛に襲われた時は、まだ洗脳が解けていなかったとのこと。

 なので、みーよの経験は、モロに女神ちゃんにも伝わるんだとか。

 そんなことある?

 よく知らんけど、その期間中のみーよの経験は、結構ダイレクトに女神ちゃんの経験にもなるらしいんだわ。

 ん-没入型のバーチャルゲーム体験でもしてる感じ?

 みーよの身体を使って?

 ぬう、それって他人の身体を乗っ取ってオモチャ代わりにしてたって事でしょ。

 あたし、やっぱり女神ちゃん、好きになれないや。

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