141.もう、頼りは無口なデンしか、いないわ
第2層は、犬鬼の群れと遭遇した。
少し広がった通路で待ち構えていたみたい。
結構な数だったし、クロスボウで武装していたけど。
デンが事前に気づいていて、あたしたちを待機させて、単身、群れの中に突っ込んでいった。
コボルトたちが一斉に矢を放ったけど、幻覚? 幻術? みたいなものを使ったみたいで、あらぬ方向に打ち込まれていった。
そこに、みーよの輝光の奇跡が撃ち込まれ、次の弾をつがえる暇もなく目を眩まされたコボルトたちに、あたしたちが斬り込んでいった。
ダナンの邪魔にならないように少し距離を取ったけど、うん、あたしの出番はなかったね。
戦斧の威力は絶大で、多少反撃があっても、全身金属鎧のダナンにはほとんどダメージが通らなかった。
一振り、二振りで、コボルトはほぼ全滅。
何匹か逃がしたかも、だけど、30匹近く居た群れが、あっという間にほぼ全滅だった。
「クロスボウは割と金になる。ミヨ殿、奉納できそうか」
「問題ありません」
マイアミの言葉に、頷くみーよ。
手先の器用なコボルトは、魔石こそ安いけど、装備が比較的良いのでイイ稼ぎになるんだって。
ただ、万が一捕まると、残虐さで有名な魔物なだけに、ロクな死に方はできないらしいね。
あと、犬の毛皮持ちに見えるけど、皮の買取は無理なんだって。
オークの肉は腐ってるのと同じ理由で、コボルトの皮は呪われているんだそうな。
オオカミの毛皮は重宝するのにねえ。
死骸をマイアミが浄化して。
第3層へ。
ここはアンデッド・ゾーン。以前は階層主がいたのだとか。
マイアミが打ち倒して、討伐者の資格持ちになったんだって。
へぇ、そうなんだ。
その話を聞いてたら、なんですかその顔は、と睨まれちゃった。
ううん、なんでもない、なんでもないよ、うん。余計な事は、言わないよ。
ここは、デンが先行しない。そういう知能を持つ敵がいないのだそうで。
で、知能を持たない敵がお出まし。
ゾンビだね。うん、見事に腐っていて、気持ち悪いね。
3体、あたしたちの匂い? 生命力? を、かぎつけたみたいで、ゆっくりと歩いてくるね。
「どうするんじゃ?」
「無駄な戦闘は避けましょう」
あ、そうなんだ。義務だ責務だとか言って浄化させたげるのかと思ってた。
そういう宗派もあるんだそうで、先を急ぎたいパーティーと考えが合わない場合もあるのだとか。
トルモルトは武人系なので、そういう制約は無し。
うん、あの聖人を見れば分かる。あれは聖人じゃない、性人だわ。変態め。
みーよの女神ちゃんは、大体何でもできるけど、得意不得意もある。
で、死骸とか穢れたものが苦手。できれば触りたくない。
奉納するなら死骸じゃなくて、ちゃんと精肉にして欲しい、位の苦手ぶり。
でも、積極的に死骸を浄化しなきゃ、ではなく、汚いので片づけたい、位みたいね。
ふぅん、イロイロあるのね。
ちなみにヴァラミンやメロー(誰だっけ? あー黄色い聖女ちゃんか)の信奉する大地母神は、見つけ次第浄化する、むしろ探し出して浄化するんだそうです。他には、生命と死の裁定者も、死者への冒涜は許すまじ、みたいな事を唱えているんだってさ。
ホント、イロイロあるのね。
それはさておき、足の遅いゾンビは置いて行って、第10層迄の直通路へ到着。
こっちも、円形の魔法陣だね。
「これは、ダンジョンマスターが設置しているのですが、生成時に根源として備えられたものなので、罠としては使えないのだそうです」
ん? なに?
「えー絶対安全、です」
あぁ、そうなんだ。マイアミがそういうなら、そうなんじゃない?
な、なんでみーよが笑うのよ? ここ、笑うところ?
だ、ダナンまで、鼻で笑ってるじゃない。
あたし、なんかした??
もう、頼りは無口なデンしか、いないわ。




