126.そんなの、ダメなんだどーダメなんだけどー!
青の教会に入ると、中が結構騒々しい。
「いらしたんですわー」
「おつかれさまなのー」
「よろしくーだけどー」
黄色いのと緑なのが増えてる。
3人揃うと、かしましーんだけど。
なんで?
「介護と看護で人手が足りなくてね。伝手を使って呼び寄せたのさ」
あ、どうも、おっかさん。おはようございます。
「ようこそおいで下さいました!」
晴れ晴れとした顔のお父さん。
「ただいまー」
父母にきちんと朝の挨拶が出来る弟君。
「息子は、どんな感じでした?」
「ん-まだまだ素人だね。ま、通ってくれれば、それなりに物にはなると思うよ」
こっちのお仕事もあるからね。そんなに初日からシゴいたりはしないよ?
横で息子君が、なんか照れてる。照れる要素あったっけ?
「コイツ、ばっちりシゴいてあげていいんですけどー」
お、姉ちゃん厳しいね。
「そうですわ。公には付き人として歩けないんですわー」
「領主の娘様に見つかると、大変なのー」
「そのことなんだけど」
お、みーよが割って入ってきた。
「昨日、大聖女オラフレア様から、聖戦を迫られてしまって」
「まずいんですわー!」
「きちゃったなのー!」
「やばいですけどー!」
「どうしても避けられなくて……」
野良聖女ズの顔色が変わる。
お父さんおっかさん弟君も、あ、それはヤバイみたいな顔。
「で、郁ちゃん、勝っちゃって……」
みんな、急に固まる。
「うそですわ……?」
「うそなのー」
「あ、ありえないんですけど……」
ホント、同時にしゃべるのヤメテ。かしましさ3倍なんだけど。
「いやまさか、あれを相手にかい?」
「ミヨ君、神格が全然足りてないじゃないか」
「冗談なんですよね? 俺、あいつらの桁外れな強さ、実際に知ってるし……」
ちょっと困った顔のみーよ。証明してみせて、と言われても、ねえ。
「街で大きな騒ぎになったと思いますよ。かなりの観客がいましたから」
みんな、顔を見合わせる。
知ってる?
そういえば、なんかあったかも。
「本当らしい。ここに来るときに、街の連中に聞いて来たわい」
ダナン登場か。デンも一緒だね。
今日は人数多いなー
「お前ら、ホントに凄いな!」
「なーによ。当然でしょ」
こっちは体張った商売やってんのよ。
お強いんですか、ハイそうですかって、負けてらんないでしょ?
「昨日のことなら、話してくれても良かっただろう?」
マイアミが不満そう。
「酒飲んで仕事の話してたでしょ。わざわざ言うほどの話でも無いしね」
「いやいや、言うほどの話だろう!」
そうかなあ? 大した自慢話でもないよ?
「それで、聖約なんだけど……」
みーよの、少し大きな声に、みんな静かになり、注目した。
「聖女オラフレア様には、アオイとイーシュの付き人契約を再び御認め頂くよう、お願いしたの。だから、二人一緒に堂々と街を歩いても、もう大丈夫よ」
静かさが、少しの間、続いた。
そして、急に爆発した。
「えええぇ! なにそれですわー!」
「どういうことなのー!」
「あ、あ、ありえないんですけどー!」
「あんたたち、なにやってんだい!」
「そ、そんな、子供たちのために……」
「な、な、なんなんですかそれ!」
「何やっとんじゃお前ら!」
「聖戦の願いが、それでいいのか!」
「……」
誰が何言ってるのか、一度に言われても分からないでしょ!
大体、人数が多すぎだわ。どー収集つけるつもりなのよ。
「わたしが、そうしたいと、思ったから」
ワーワー言ってた連中が、ピタッと黙り込んだ。
「オラフレア様は、わたしたちの付き人誓約を解消するように迫って来たの。
だから、それに見合った要求は、付き人誓約を御認め頂くことでしょ?
わたしの願いは、みんなで仲良くこの街を守護していく事。だから、そう願ったのよ」
「だ、だからって、そんなの、ダメなんだけど……」
アオイが、みーよに近寄ってくる。
怒ったような、泣きたいような、嬉しいような、受け止めきれないような。
「この街に行き倒れて、急に聖女になったわたしに、みんながしてくれたことを、わたしは忘れないよ。だから、わたしが出来る事を出来る時に願っただけだよ」
そっと、みーよがアオイを抱きしめる。
「そんなの、ダメなんだどーダメなんだけどー!」
肩の荷が急に下りたらしい。そうは見えなかったけど、プレッシャーが掛かっていたんだね。
ダメなんだけどーダメなんだけどー言いながら。
アオイはみーよに抱きしめられながら、ひとしきり、子供のように泣きじゃくった。




