12.スリング
翌朝。
スゴクよく眠れた。あたし、心配事とかどこかに置き忘れてるのかもね。
みーよも同じらしい。というか、冒険の最中はちゃんと寝ることはあんまりないそうで。そーなの?
トマト缶を温めながらパスタを茹でてくれた、みーよ。
今までの食事はどうしていたのか聞いたら、この世界の人と一緒だと、光の女神さまは現代食を提供しては下さらないのだそうです。ケチねぇ。
一人の時は大丈夫。でも、一人だと危ない。この世界の人を食で夢中にさせちゃうのは、女神さまの意向に反するのでダメ。みーよ、中々たいへんだったねぇ。
あたしといるときはまるで平気らしい。どーいう思考回路なのかしらん。
インスタントコーヒーの香りを楽しみながら、そんな話をしていた。
食べ終わったので、さっさと撤収。
みーよが光の杖をかざしてお祈りすると、カンタンカンタンあら簡単。
やっぱ、みーよスゴイよ。
一応、馬車は走れる程度に整備されている(と言っても、土だけどね)道を歩き、丘を3つほど超えた辺りで、なんか見られている気配を感じ取る。
まだ、なんとなく、だけど。
「なんかあった?」
「んー、まだ気のせいレベル。どっかから見られてるね」
形の良い眉をひそめるみーよ。
「あのオークたちが特別で、他には魔物はいないと思いたいんだけどね」
「そうだね。この辺なら、オオカミはいてもおかしくない。あとは、群れからはぐれた小鬼か犬鬼は、たまに見るよ」
あ、いるんだ、魔物。
“はぐれ”は普通に人里にも出没するんだそうで、放置しておくと急速に増えて大変なことになるのだとか。
そういう依頼を受けて動くのも冒険者の仕事になるんだって。
今回の件も、その類だと思ったんだねぇ村人さんたち。
んで、対策としてオークの腰袋を改造して、今朝、スリングを作ってみた。
一本の細いベルト状の皮ひもの中央に、石を包み込む厚手の革を貼り付けるのが正しいやり方だけど、腰袋を切ってしまえば、ちょうどいい塩梅になった。
腰袋の中にいい感じの小刀が入っていたので、加工は割と簡単だった。
滑らかな石を探すのが、ちょっと手間暇なんだけど、妥協すればいいだけの話。どうしても気に入らなければ、削ればいいんだけど、面倒だね、妥協の方向で。
飛び道具は、こういう旅では必要不可欠。
さすがのあたしも弓は扱ったことないけど、スリングはパパと一緒に動画を観たことがある。一回観れば、どういうものかは理解できる。
実戦で試したいんだよね。遠巻きに囲んでいるらしい、ナニカちゃん。襲いに来ないかしらん?
昼過ぎまで歩いて、丘の上で休憩。まだ街は見えない。
通りがかりの馬車でも来れば、乗せてもらえないか交渉できるんだけど、あの村、相当辺鄙な場所にあったみたいね。
あ、コーヒーありがと。
「追手の気配は、どう?」
「ん-こっちを見極めている、感じかな?」
「襲えそうか、どうか?」
「そ。怯えて逃げ出したら、喜んで追ってきそうね」
「気にしないで歩いてるから、逆に迷ってるってこと?」
「そうね。気づいてるゾ感は、出しているからね」
時折、潜んでいる場所を睨みつけてやる。
なんなら殺気も飛ばす。
なので、向こうも気づかれてる事は分かってると思うんだよね。
こりゃ、おちおち街道も歩けないね。
冒険者のお仕事に護衛があるって意味、よく分かるわぁ。




