107.アンタの中身はカンタのレベルと一緒なの?
落ち着いて、再び眠り始めた少女。
うはぁ、制服がべったべただよ。分かってはいたけどね。
「この子の着替えを用意します。イクミ様も着替えられますか?」
イクミ様、ねえ。
「アンタ、そんなキャラじゃないでしょ?」
「えーアーあれは、3人でいる時だけだけどー」
「郁ちゃんの分は、わたしが用意します」
杖を光らせながら、みーよが近づいてくる。
「え? メディケーション掛けたままで?」
「ええ」
みーよが片手に光の球を作り出し、空中に浮かべた。
その光が、メディケーションの代わりの光らしい。
で、そのまま杖を振るうと。
ああ! シャワールームバージョン2だぁ!
「ありがとみーよ!」
速攻で飛び込んで、制服脱ぎ散らかして、頭からアウトドア電源による温かいシャワーを存分に浴びる。
この白い液体、ホントに臭いんだよね。シャンプーリンスとボディソープで残らず落として、うわぁ、スッキリするわー!
きれいサッパリして、下着も交換。今日の柄はチーターかしらん。
オニューな制服にもお着換え。ん-気持ちいー!
出てみると、眠ったままの少女の着替えも完了してた。
マイアミはさすがに追い出されたらしい。お父さんもいない。
床はキレイに掃除されていた。
「お疲れ様」
みーよがコーヒーも出してくれていて、聖女アオイも一緒にご相伴に預かっていた。
うん、ちょうど飲みたかった。でも、他所の宗派の人に振舞っても大丈夫なもんなの?
「今回は、無関係じゃないからね」
「すごく美味しいんですけど。普段からこんなもの飲んでるの?」
「あーまーみーよに全部任せてる」
「それに、このしゃわーるーむって、確かに清めの部屋は必要なんですけど」
アオイは、シャワールームの概念が無いらしい。共通語理念は、対象の概念を持っていない場合はちゃんと翻訳しないっていうのは、この世界の住民にも当てはまるんだね。
「あーやっぱり付き人がいないと、レベル上げが出来ないんですけどー」
そんな机に突っ伏してお手手をパタパタさせたって、誰も何にもしてくれないよ?
「弟さんは、まだ引きこもったままなの?」
「そうですけどーいつまでも引きずってるんですけどー」
へえ、弟いるんだ。
「青き清浄の調べ教会は、家族経営だからね。お母さんも修道女だよ」
なるほどね。で、弟君は引きこもってるの?
「以前、アオイの付き人になっていたのよね」
「あの忌々しい真っ赤っ赤にぶちのめされて、ショックで引き籠ってるんですけどーふぇええん、お代わりぃ!」
愚痴りながらコーヒーお代わりしてるよこの子は。器用だね。
ってか、アンタ一人の時だと、結構くだけた性格してんのね。
「ミヨー、私、この娘、付き人に欲しい。すっごい有能なんですけどー」
「無理に決まってるでしょ? そもそもアオイに郁ちゃんのお世話は絶対に出来ないよ?」
「そりゃそうなんですけどーコーヒー美味しいんですけどー」
まあ、ホントにコーヒー美味しいけどね。豆から入れてるらしいんだけどね。インスタントとは全然違うんだけどね。
ンで、本当に美味しいんだね。愚痴るか飲むか、どっちかにしなさいよ。アンタの中身はカンタのレベルと一緒なの?
「弟君がヤラれたっていうのは、例の、アレ?」
アオイには、多分、アレで通じそう。
「そう、そう、そうなんですけどー! あーもーアイツさえいなければ私がオラクルの大聖女になれるチャンスもあったんですけどー! コーヒー美味しすぎるんですけどー!」
大変なお怒り具合、そして大変なコーヒーの美味しさ具合。
忙しいね、君。
「あたしらも遭遇したよ。そっか、それでみーよは速攻で撤退したのね」
「うん。知ってたからね」
相手にする価値無し、というより、まともに相手したら付き人を潰されちゃうって事ね。
「後でイイんだけど、弟君に逢わせて貰えたりする?」
「えー何するつもりか聞きたいんですけどー」
けどーけどーアオイちゃん。引き籠もりに逢う理由なんて、一つしか無いじゃん。
「部屋から引きずり出す」
「乱暴はやめて欲しいんですけどー! あれでも大切な家族なんですけどー!」
ん-こっちから攻めるのは無理か。やっぱりお父さん方面から行くべきか。
「乱暴はしないよ。でも、ただでさえ人手不足、家族経営なんでしょ? 関わる人間は、一人でも多い方が良いっていうか、引き籠もりを抱えている余裕なんてあんの?」
「……それはそーなんですけどーちょっとお父さんに聞いてみるんですけど……」
お、脈はあるのね。
「郁ちゃんさ、そーやってなんでも首突っ込んでると」
「んー分かってる。でもねー関わっちゃったからね」
うん、この辺が、あたしの甘い所なのは、分かってんだけどね。
ま、引き籠もりを引きずり出すのは、以前にも何人かやってはいる。
ハイスクールの裏番長だったあたしが安全を保障しておけば、彼らも彼女たちもガッコーに来やすいじゃない?
イジめられた方が気が引けてガッコーに来れないのはオカしいでしょ?
イジめた方がコソコソとあたしの目を気にしながらガッコーに来ればイイじゃない。
いやイイんだよ? 逆らうならソレなりに対応するだけだしね。
弟君、あの紅いのにヤラれてイジケてるって事なんでしょ?
あたしがぶっ倒してあげるから、アンタはアンタのお仕事をしなさいよね。
みーよが、そんなあたしを見つめている。
うん、心のうちを読まれてるよね。
ある意味、女神ちゃんに心を読まれるより、よっぽどおっかないんですけど。
「ま、いいけどさ。お代わりいる?」
「うん」
……保留か。
で、お代わりのコーヒーの香りを楽しみながら、眠っている女性たちを眺める。
この人たちも、デンの誘いに関わらなきゃ、マクロン閣下の星落としで灰になってたんだろうね。
それを良しとみるか、悪しとみるか、意見が分かれるのも、よく分かるよ。
あたしも、出来る事と出来ないことがあるから、そこまで関わらなきゃダメなの? と迷うけどね。
でも、助けると決めたなら、やっぱり最後まで面倒を見たいじゃない?
それは、間違ってはいないと思うよ。




