104.結構な人数だけど、なんか固まって相談しちゃってるよ
建物の広さや敷地の造りは、うちらの教会とほぼ一緒。
ただ、青い三角屋根、という造りが割と特殊。
それ以外は、教会本体と住居部分、倉庫、手前に広場、周囲を石の塀で囲っている所まで、同じだね。
ついでに、外観も所々壊れている事まで、全く一緒だね。
近づくと、何人か外でたむろしている。揃いも揃って人相の悪そうなのばっかりだ。
ま、この区画は、そういう連中と、繋がれた奴隷の2種類しかいないね。
一応、警戒レベルを一つ、上げておく。
「なんだお前ら、今取り込み中だ。帰れ」
空きっぱなしの門を塞ぐように寄りかかっている20代後半位の男が、こっちを睨みつけてくる。
「チンピラに用なんかないよ。お前が失せろ」
胸倉を掴んで、壁に押し当ててやる。
「なにしやが……」
抵抗したんで、そのまま地面に引き倒した。
何か文句を言い出したんで、男の身体の上に体重を乗せて屈み込む。
頬を1発、軽く叩いてやる。
「なんか言った?」
抵抗するんで、今度は強めにもう一発。
「い、いや……」
よおし。
立ち上がって、ついでに男の胸倉を掴んだまま引きずり上げる。
向こうからワラワラとお仲間がやってくるので、そのまま男を押し付けてやった。
「躾がなってないね」
「なんだと!」
「い、いや、待て、コイツの恰好……」
お、あたしが分かる奴がいるのかな?
「オーク・クイーンじゃねえのか?」
そっちかー! その呼び名はやーめーてー!
「なんだそれ? あー確かにな」
確かに、じゃないわよー!
ちゃんとオーク・キラーで呼んでよ!
「お前ら何者か知らないけど、あたしら、ここに用があるの。邪魔しないで」
そのまま建物に入ろうとすると、行く手を拒まれる。
「俺たちの要件が先だ。すっこんでろ」
だってさ。どうする?
「君たちは、奴隷商人の関係者だろう。青の教会の承認がない限りは、買取は出来ないはずだが?」
事情に詳しいらしいマイアミが、正論で突破を試み始めた。
「へ、どうせ何も分からないまま、葬還されるだけだろ? だったら俺たちが高値で買い取ってやるのが、お互い親切ってもんだろうが」
「お前の所だけで独占なんかさせねえぞ。このキツネどもが」
「野良犬風情が首を突っ込むんじゃねえよ」
「なにおぉ!」
「やんのか!」
ん-奴隷商人が、2グループいるのね?
「いずれにしても、我々には関係ない話だ。通してもらおう」
マイアミがこじ開けようとすると。
「いやちょっと待て」
「待てよ、こっちの邪魔すんな」
協力して前を塞いできた。仲がいいのか悪いのか。
「こじ開ける?」
「ちょっと待って」
みーよが、さっきあたしが引っぱたいた男に近づいて、手をかざす。
「ヒール」
ふわっと手が光り、男の顔の腫れが引いて行く。
「わたしの付き人がごめんなさいね。でも態度が悪いのはお互い様だから、これで許して頂けるかしら?」
えーあたしはいい子だよ?
悪いのは、偉そうな口を叩いてきたその男だよ?
「そ、そうはいかねえ。ここは通さねえんだ」
癒して貰いながら、なんたる態度だろう。
みーよ、もういい? 暴れたいんだけど。
「騒々しいですよ。患者たちが安静に出来ないではありませんか」
教会の扉が開いて、中から中年から初老の牧師? 神父? が出てきた。
屋根の色と同じ、濃い目の青いローブの上に、同色の、縁に刺繡が施されたケープを被っている。頭にはちょこんと丸い帽子。当然青い。
髭はない。顔つきがややシャープだけど、目元の彫りが深いね。何系だろう? ゲルマン系の、チュートン出身ぽいんだけど、ちょっと分かんないね。
「お、やっと出てきやがったか」
「選別は終わったのか? とっとと出せや」
奴隷商人たちが、待ってましたとばかりに詰め寄っていく。
「昨日の今日で終わる話ではありません。然るべき処置もまだ完全には行えていないのです。今日の所は、お引き取り下さい」
「そうはいかねえんだ」
「はいそうですか、で帰れねえんだよ」
うるさいなー、2組いるから、倍うるさいね。
「もういいから、中に入れろ」
「こっちで引きずり出すから、黙ってみてろ」
牧師? を押しのけて建物に入り込もうとする男たち。
もういいんでしょ? あたしの出番でいいんだよね?
みーよを見ると、あーもー分かったよ好きにしていいよ、という顔をされた。
うん、そういう顔をしてる、事にする。
「アンタら、帰れって言われてるでしょ。帰んなよ」
中に入り込もうとする男たちの首根っこをとっ捕まえて、片っ端から後ろに放り投げる。
「な、何しやがる!」
「てめえ!」
お、色めきだってきたね。
ライバル関係の2グループでも、共通の敵に会うと協力するのかな?
いいねえ。そういうのも好きよ。残さず食べれるからね。
「マイアミ、みーよをヨロシク。仕事してよね」
「はぁ、全くそなたは……」
「はぁ、やり過ぎないでね」
みーよのため息は、聞こえなかったことにしようか。
でも、筋だけは通しておこうかな。
「ここの家主が帰れって言ってるんだから、帰んなよ。逆らうならあたしが相手になるよ。こんな理屈も分かんないの?」
大きな声で宣言すると、連中はビビり始める。
「マジでオーク・クイーンなのか?」
「聞いたことあるぞ、冒険者ギルドを壊滅させたって」
「オーク・アグフの討伐者だとか言われてるぞ」
「だって女だぞ」
「しかもあんな恰好で何ができると?」
「いや、凄い力だったぞ」
「そんな奴が、なんでこんな所に来るんだよ……」
結構な人数だけど、なんか固まって相談しちゃってるよ。
なによぉ、歯向かってくんないと、お肉食べられないじゃないのさー
「とりあえず引くか……お前ら抜け駆けすんなよ」
「そっちこそ」
相談がまとまったみたいで、潮が引くように連中は2グループに分かれて帰って行った。




