102.君ら、すっかり三下扱いに慣れちゃったねぇ
逸らした話が、予想してた以上に転がっちゃったのはホントにしょーもないんだけど。
とりあえず、革ジャンわんこの言う、敵対組織とやらに話を付けに行く。
ま、一理はあるのよね。あたしらが留守の間に、教会を襲われるのはちょっと困る。
この辺を仕切っている革ジャンわんこの背後に、あたしがいるんだと理解して貰わんと、おちおち稼ぎに行けないからね。
で、先に、コイツの本拠地に寄って欲しいと言われて、ノコノコと付いて行く。
でもさ、ノコノコの中にみーよがいるのは当然だけど、マイアミは関係なくない?
「そなたが暴れている間、誰が彼女を守護するのだ」
「光の障壁があるから平気でしょ?」
今までも、そうしてきたし。
「あの障壁は、脆い」
いや、アンタよりはマシだと思うよ?
「それに、私も付き人とはどのようなものなのか、興味があるのだ」
それ、いまさら言う?
そっか、コイツ大人だなあと思ってたけど、実はそうでもないのかもしんないね。あんまり過信しないでおこう。
「ま、いーけどー」
どうせ、この件が片付いたあとは、マム院長に言われてるって言うか、あたしも気になる青の教会で、オークの捕虜だった女性たちの事を見に行くしね。
デン関係で、その辺はアンタも気になるんでしょ?
助けに行こうと言い出したのはデンで、アンタは、はっきり後押しした。責任は自分が取る、なんてカッコつけてたしね。
革ジャンわんこの本拠地に着くと、部下たちが出迎えてくれた。
総勢20名程いたと思ってたけど、あれま、みんな、なんか怪我人だらけだね。
それに何人か、姿が見えない。
少なくとも、あたしらの教会を襲ってきたあのザコ共の内の何人かと、そんときのリーダーの姿が見えない。
「手ひどくやられたようですね」
少し冷たい口調で、みーよが革ジャンわんこに言う。
あーさっきのセクハラ、結構お怒りのようですね。
革ジャンさ、ちゃんと謝っとかないと、後から大変だよ?
みーよは普段怒らないけど、一遍怒り出すと大変なんだよ?
「あ、ああ。今日中に出ていかないと、また襲いに来るって言われたらしい」
みーよは軽くため息をついて。
コイツは嫌いだけど、部下は関係ないしなぁ、とか思ってるだろうね。
聖女も、中々大変だね。
「重傷者は建物の中ですか? 皆さん全員を一か所に集められますか?」
「あ、ああ。おい、聖女様が癒してくださるぞ。中の奴らも連れてこい!」
一応、ボスらしい張りのある声で、部下たちに命令すると、彼らもテキパキと動き始めた。
まもなく、簡単な担架で、中から4人の男たちが運ばれてきた。
全員、あたしたちの教会を襲撃してきた連中だった。
あの時も、あたしが適当に遊んだ後で、みーよがマルチ・ヒールしたんだっけ。
「あ、聖女様……」
「ありがたい……」
「恵みを、下さるのですか……」
泣いてる奴までいるよ。中身は酷い連中のクセにねぇ。
「これで全員ですね。では……」
みーよが祈りの姿勢を取り、杖を高く掲げる。
杖が光りだし、周囲をまぶしく照らす。
「光の女神アーリューシャイン様、どうかその慈愛を加護を、この者たちにお与えください。マルチ・ヒール!」
彼女の可愛い高い声が響くと同時に、光が一層強まり、やがて消えていく。
「おお、傷が……」
「痛くない、痛くないぞ!」
「ああ、ありがとうございます……」
部下たちが、大層喜んでいる。
あたしとしても、ここは余計な事は言わないでおく。これで逆らうようなら、本格的にヤキを入れるだけだし。
「すまねえ、感謝する」
革ジャンわんこが、深々と頭を下げる。
「いいのですよ。でも、もしありがたく思って下さるのでしたら……」
みーよが、頭を下げたままの大型犬に、強い口調で言う。
「女性の尊厳を辱めるような言い方は、どうぞお控え下さい、ね」
「ん?」
思わず顔をあげて、そんなこと、俺言ったっけ? みたいな顔。
言ってたよ、うん、言ってた。
ま、この世界では当たり前なんだろーけどね。
ん-だめだね、全然分かってないわコイツ。
ドースル?
ダメだろね。ま、適当にヤキ入れるわ。
ン、よろしく。
みーよとアイコンタクトした。
ウフ、センセーの許可は下りたね。
たっぷりしごいてあげるから、覚悟するんだネ。
重傷者には、みーよがさらに個別にヒールを掛けて。
連中の方から、特にあたしらの教会を襲撃してきたチームからは、念入りに謝罪と感謝をされて。
ま、水入りにしてあげると言うと、心底ほっとされた。
カネがある所は襲撃というか、ショバ代を払えという言い分は分からなくもないんだけど、あたしを相手にするんじゃ割に合わないどころか、命があっただけ儲けもの、だしねぇ。
んで、そういうことが分からん敵対組織に、話を付けに行ってくるというと、ペコペコと頭を下げられてしまった。
君ら、すっかり三下扱いに慣れちゃったねぇ。




