10.あー生きるって大変だね
焼け落ちた村を、とりあえず一通り廻って、生存者はいないことは確認した。
家は3件。全部焼け落ちてる。立てこもった端から火をかけて、焼きだされた村人を惨殺って感じに見える。死体の数は10人。逃げ出せた人がいればいいけど、どうかなぁ?
男たちの傷跡が結構深いので、頑張って戦ったんだろうなー
みーよの話では、オーク1匹に対して、人間5人で対抗できる感じらしい。
リーダーのオーク、隊長オークは、オーク5人分の実力があると言われている。
そーかなーアイツそんなに強かったの?
でもなんでも、オークの小隊を率いることが出来るのは、部下全員が掛かってきても倒せる実力があるからなので、だからこそ部下が従うんだとかなんとか。
あの豚頭に、そんな知性があるの?と聞いたら。
こういう野蛮で残忍なことに関しては、頭がよく回るのだそうな。
へーそーなんだ。
あたしが集めて来た、損壊が激しい死体たちに(あんまり言いたくなかったけど、女性の死体はそれはもうむごいものだった)、みーよは例のポーズをとって祈り始める。
ひどい状態だったけど、みんな、光の粒になって空に消えていった。
全部、消えていった。
「本当は、ちゃんと埋葬してあげたかったんだけど、いいよね」
「うん」
夕暮れが近い空を、あたしたちは眺めながら、互いに頷きあった。
みーよが拠点にする街までは、徒歩で3,4日かかるそうで。
ただ、来るときは村から来た馬車で送って貰えたんで、実際はそこまでかかってはいない。途中の村で1泊してきたんだそうな。
なんでこんなところに村なんて、と聞いたら、税金を払いたくなくて逃げ出してきて住み着いたのだとか。
いや、こんな魔物が出るようなところに住んじゃだめでしょ、と思ったけど。
それ以上に街の周辺は我慢して住まなければならないような状況のようね。
なかなか、世知辛いというか、さすが異世界、ということかしらん。
でも、さすがに自分たちの安全は守りたいので、冒険者ギルドに依頼したんだけど、間に合わなかった、ということみたいね。
支払える報酬をかなりケチったみたいで、とりあえず引き受けた初心者に近い冒険者パーティーに、多分タダでついてきてくれる野良聖女を加えて、村まで連れてきて貰えばそれで良かったんだけど、一泊したら、ドンピシャでオークの分隊の襲撃を受けたのだそうで。
冒険者たち、我先に逃げ出しちゃって。
立てこもっていた家を焼かれて、逃げ出した村人はそのまま捕らえられて。
みーよは、ただ見守る事しか出来なくて。
そのまま、四肢を折られて、苦しみながら、生きたまま喰われて。
目の前で、昨日までおしゃべりしていたご婦人と娘さんも、無残に殺されて。
みーよは、ただひたすら光の障壁の中で身を守っていたけど、それも時間の問題で。
はっきり、もう駄目だと、ここまでだと、そう思ったのだそうな。
え、話を作ってない?
さすがに出来すぎ、やりすぎ、調子に乗りすぎ、だと思うんだけど。
結構当たり前、普通の事、当然の事、らしいのよね。
魔物が多く潜む辺境からは結構離れているといっても。
人類の拠点って、街と、街同士を繋ぐ街道という、点と線なもので。
街の周囲の村はともかく、離れちゃうと、普通に魔物が周回している所もあるのだそうで。
国がそういうのに気を配って見回りなり巡回なりしてくれれば、まだマシだと思うけど、あんまりそういうのはやりたくないみたい。
ドカンと魔物の集団が現れてから、騎士団や兵士の集団を送りこむみたいだけど、それじゃ遅すぎると思うんだけどね。
んで、民間組織の冒険者ギルドが、地区の治安の肩代わりをしている感じらしい。
民間でも、どーしても働きたくないとか、頭が悪すぎてまともな職業につけないとか、仕事につけなくて喰いっぱぐれてるとか、そういう社会の中でまともに生活できないようなアウトローに、居場所を提供しよう、いや、はっきり言ってなんとか管理しようという意味合いがあるらしい。
割れ鍋に綴じ蓋、だっけ? ま、上手いこと廻ってるんじゃない?
でもさ、冒険者ギルドに夢見ている人たちに現実を突きつけるのは、あんまり良くないと思うのよね。でもね、それが現実なんだって、みーよが言ってた。(経験者は語る)
んで、夢見て冒険者になったけど、案の定というか、喰いっぱぐれちゃいそーな初心者のパーティーが、野良聖女を拾って、あわよくば聖女は報酬無しだよねとか夢見て、身の丈に合わない依頼を引き受けて村(ったって家3件じゃんそれじゃ村じゃなくて集落じゃん)の周辺の危険調査の依頼を受けたけど、思ってたのとは違うトンデモナイのが出てきて、命あっての物種だとばかりに逃げ散らかしたってわけね。
ん-のこのこついて行くみーよもみーよだし。
でもなーそーでもないと誰も一緒に行ってくんないのかー
村っていうか、集落の人たちも(まぁ、連中呼ばわりはさすがに可哀想か。全滅ENDだしねえ)、なんでそんな危ない所に住んだかなぁ、もうちょっとなんかないの? 自業自得っていうんだよそれ学校で習わなかった? もしかして学校って元々無いの? 無さそーだもんね、な、感じだし。
仮にも冒険者っていうなら、もうちょいさー立ち回りっていうかさー、危なそうなら引き受けないとかさーもっと強い人にお願いするとかさーこれはヤバイよ今すぐ逃げようとかさーしんがりは引き受けるからいますぐみんなにげるんだとかさーあーみーよを置き去りにして逃げれば時間稼ぎできるから自分たちだけは助かるって寸法かなるるやるじゃんって感心してる場合じゃないわ許せんわ今すぐ教育してやんないと気が済まないわとかさー
あーなんかもー色々とムカついてきた。なんか殴るもんないかな?
んな事を考えてるあたしを尻目に、みーよは村の周囲を歩きながら、魔物除けの結界石を見回っていった。もち、あたしは周囲を見張る護衛ね。
なるほど、そんなもんがあるのね。とりあえず、結界張っておけば一応安心安全セ〇ムですかアル〇ックですか、って感じなわけね?
「そこまでのものではないけど、魔物は瘴気を好む反面、浄化された空気を嫌うのよ。そういう願いを石に変えて、結界を張れば、近づきにくくなるの」
「なるほどねー」
とりあえず、結界張っておけば、多少危険なところかもしれないけど、住めないこともないらしい、ついでにイヤーな税金徴収もされなくて済みそう、って感じかな?
たくましーと思うか、むぼーだよやめなよーと思うかは、人それぞれかもね。当てになんない国に頼るよりも(しかも見つかるとハイ税金、だしね)、民間の冒険者ギルドに頼んだ方が良いと思ったのね。
あー生きるって大変だね。




