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わたしの考えた最高の幸せ 7

 当然かな……にーくん以上に我慢をしていた感じだったからな、しーちゃん。

 とはいえ大胆すぎでしょう。

 気持ちはわかるけどさ。

 のことを教えてあげたほうがまだ。


 あれ、もう……服装を変えてあげたらかんぜんかんぺきに女の子モードの完成でしょう。

 うれしそうな、かわいい顔しちゃって。

 にーくん……しばらくはしーちゃんのおもちゃにされるの確定。


 さっそく連れていかれて。なんで手を洗っているんだろう?

 やっぱりしーちゃんも納得して。

 あんなにがっちり、手を握られていたら逃げられないな。というか洗うのは片手だけでいいのかよ。


 にーくんがなんか言って。

 今日はザコちゃんにされる日みたいだな。完全にさっきの連続キスでしーちゃんのペースだろうし。

 にーくん、しーちゃんの顔を見れてないし。

 そんなあからさまに顔をそらしていたらさ、しーちゃんがまた意地悪したく。


 何度目だっけ? 片手では数えられないぐらいの回数だったとは思うけど。

 にーくん今日、のうぐちゃぐちゃだろうな。

 下手なバトルなんかよりも刺激多めでって。

 こっちにはあいさつするのね、本当にりちだな。


「ようやくというか……にちながが煮え切らなくてつちもりが我慢できなくなったって感じか」

 なにも悪いことをしてないはずなのに、申しわけなさそうにしているタイヨウと。

 満面の笑顔のシノハがそれぞれ手をふっている。

 イナラも手をふりつつ、隣に立つヒオリを。


「こっちももう少し時間をつぶしてから東ルートのほうから」

「ごめんね。用事を思い出したからひとりでお先に帰らせてもらうね、西ルートから」

 ウルフカットの彼がなにかを言いかけるも、きくつもりはないのかセミロングの黒髪の彼女は離れていく。


「なかなかおいしそうなものを発見……極上だ」




 暗闇。

 

 女の子。

 ひとり。

 泣く。


 疑問。

 意味不明。

 にーくん。しーちゃん。

 くっつく。成就。カップル。念願。成功。

 幸福。


 間。

 侵入。意味不明。

 エラー。気の迷い。混乱。

 自分。女の子。ひとり。泣く。

 理由? 思考停止。


「やっと追いついた。えんどうさん、はやすぎだって」

 苦しそうに呼吸をくりかえすイナラがヒオリの腕をつかんだ。

「なに……用事があるって言ったはずだけど」

「だとしても女の子をこんな暗い場所に入っていくのをほおっといておけるわけないだろう」


 セミロングの黒髪の彼女が舌打ちをする。

「あんたみたいなやつが一番むかつく」

 ヒオリのひょうへんぶりを見てか、ウルフカットの彼がおどろいた表情を。

「いいやつのつもり? そうやっていい子みたいなふりをしていても本音はちがうし。下心でしょう」


 にーくんだけは本当だったけど。

「これでわかったよね。さっきまでは演技していたの……今日は疲れたからさ、放っといて」

「たしかにおれの原動力? 下心だよな」

「ひらきなおっても信じたりなんか」

「おれを信じてくれなくていいからさ。これからの未来がぜんぶ台無しみたいな考えかただけはやめてくれないか」


 イナラがヒオリの腕を解放したが。

 セミロングの黒髪の彼女はじっとしたままウルフカットの彼をまっすぐに見ている。

「どういう意味?」

「だってそうだろう。日永もだけどさ、たぶんいろいろとあったんだし辛かったとは思うけど」


 ここから先もそのまま……ずっと辛いままなんてことが確定しているわけじゃない。

 いいことばかりが続かないように。

 辛いことだって、時間が経ったら。

 イナラの言葉を……だれかが拍手をしつつ見下すように笑う。


「立派だ。さすが幸せ環境でのうが軽い人間さまの口は正論のようなものを並べたがる」

「だれ……あんた?」

「これは失礼。わたくしは」

 白く輝くマネキンのような存在が、なにかしらの言語を口にしたが。

 ヒオリとイナラは理解できなかったようで、首をかしげている。


 ウルフカットの彼が移動し、セミロングの黒髪の彼女の盾になるように。

「なんかこいつやばそうだから、はやく」

「ふるえることしかできない安物の盾が邪魔を」

 白いマネキンのような存在がイナラの顔面を。


「同類だと思っていたのですが……なぜそんな安物をかばうようなことを?」

 ウルフカットの彼の首から上をちぎらんばかりに放った拳が当たらないように、移動させたヒオリに白いマネキンのような存在が不思議そうにきく。


「待ってください。もしかすると後味が悪いというやつでしょうか? 理解をできますよ……今の攻撃では見殺しにできないと判断したわけですね」

「一瞬で終わると思うけど。さがっといて」

 きたイナラくん。


 しりもちをつき、動けないでいるイナラにやさしく、安心をさせるような声でヒオリは呼んだ。

 白いマネキンのような存在が首を一回転させる。

「なにを……怒っているんでしょうか?」

「理由わかんないの、頭悪いな」


 血管が切れたような音が暗闇の中に響いていく。

「けど、たったひとつだけ頭の悪いあんたにも使い道があるよ。よかったね」

「頭が……悪い?」

「図星だったようだね。気持ち悪い、頭のいい人間みたいなしゃべりかたして本当はあんた」

 がんばって見下している人間になりたいだけの。


 棒立ちのようにすきだらけに見える体勢のヒオリに白いマネキンのような存在が襲い。

「おっそ」

 白いマネキンのような存在の頭部であろうものをヒオリがちぎりとり、わしづかみにしていた。


 セミロングの黒髪の彼女と目が合い。

 白いマネキンのような存在の頭部であろうものがふるえる。

「土下座……知っているよね? 人間の世界でこれ以上ないぐらい反省してます、って気持ちを伝える行為」


 白いマネキンのような存在の頭部であろうものが肯定の返事を。

「やれ……とか命令するまでもなく頭がなくなってそんな体勢になっているね、あんたの胴体」

「どうか、ゆるして」

「見下していた人間さまに簡単に謝るなよ……まだわたしは怒っているんだからさ」


 本番はこれからでしょう。頭がちぎられたぐらいで死なないんだから。

「おれはもう大丈夫だし。気にしてないから、円堂さんがそこまでしてくれなくても」

 と背後からイナラに肩をつかまれたからか。


「わたしの友達の寛大さに感謝しろよ」

 白いマネキンのような存在の頭部であろうものをはなし落下させ……ヒオリが蹴りとばすと胴体もろともにあとかたもなくなった。

「邪魔者もいなくなったし。説教の続きやってよ」

 からっとした笑顔をつくったヒオリが、イナラにねだっている。

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