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こわいところにいきたい 3

 思い出したように言っているヒオリをタイヨウがばつが悪そうに見ていた。

「女の子が苦手なのに、いじめるのは好きなんだ」

「あのときは……えんどうさんが委員長を殺すかもしれないと思っていたので」

「じっさい、殺されかけたのはわたしのほうだけどね。腕も折れていたし……しーちゃんはブチギレて我を忘れていたから」


 どうやってとめたんですか? タイヨウが質問をすると。

「タイヨウはきかなくていいの」

 シノハが話を変えようとしてか口を挟む。

「気になるよね。じつは」

「ダブルデートするからだまってて」

「契約成立」

 しーちゃんも素直だよね。

 ヒオリが意地悪そうな笑みをつくっていた。




「ダブルデートの件よろしくね」

 念を押すように言い、ヒオリは姿を消した。

 タイヨウとシノハが互いの顔を見つめる。

きたにはおれから伝えるよ。円堂さんがいく予定の心霊スポットに同行するかたちだけど……みたいな感じで」

 さっきの打ち合わせの内容を確認するように黒髪の彼が言う。

 火色の髪の彼女の表情を見てか。


「そんなに嫌だったら、おれから」

「またそうやって気をつかう。友達なんだから……もっと北瀬くんと話しているときみたいにフランクにしてほしいんだけど」

「親しいとはいえ女の子だし」

「自分の彼女でもない女の子に抱きついてきたのはだれだっけ?」

「ゆるしてくれたはずでは」

「さっき円堂さんが言いかけた件でおどしてほしいとおねだりしたつもりなんだけど」


 友達とは思っているけど、女の子を困らせるようなことは基本的にできない。

 きっぱりとタイヨウが言い切った。

 シノハがむすっとした表情をしていたが、すぐにしかたないな……とでも言いたそうな顔に。


「ところで、シノハって北瀬のこと嫌いなのか」

「なんで? ふつうぐらいだと思うけど」

「ニックネームで呼んだら、にらまれたとか」

「友達でもない男の子からとつぜん、ニックネームで呼ばれたら戸惑ったりしてにらまない?」

「委員長と呼ばないほうが」


 しゃがみこんだシノハがじろりとタイヨウの顔を見上げる。

 圧迫感のようなものがあるからか黒髪の彼が口を閉じてしまった。

「わたしの大好きな友達だからタイヨウはいいの」

「了解しました。ありがとうございます」


 感謝の言葉だけ? と不満そうな様子のシノハ。

「話をもどすけど……タイヨウは恋人とか彼女とかほしくないの」

「そんな話はしてなかったような」

「いつぞやのデートのときにしていたでしょう」

 へりくつをきいてかタイヨウが困った顔をした。


「わたしの気持ちはわかっているよね?」

「うれしいんだけどさ、個人的にはシノハの勘違いだと。ほれられる理由がないし」

「武術が得意だから強くて、見た目が女の子みたいなのにかっこよくて……自分のことをないがしろにしてでも大好きだった人のためにがんばる男の子にほれないほうが変じゃない?」


 あと、精神的には弱いからついつい甘やかしたくなるもあったな。

 シノハがはずかしげもなく続けている。

「今はまだ」

「わかっているつもり。わたしの一方的なわがままだってことも理解をしているつもりだけど……こうやって気持ちを伝えておかないとタイヨウはひとりになろうとするでしょう」


 そのほうが楽だから。

 ふだんよりも低い声で響いた。

「甘えることを覚えられたんだから、もっと他人に迷惑をかけられるはずだよ」

「迷惑をかけるのはだろう」

「タイヨウの場合は迷惑をかけると思っているハードルが低すぎるの。そのへんだけは北瀬くんを参考にするべき」


 どんな女の子にものうてんに話しかけるのはどうかしているけど……シノハがつぶやく。

「お言葉に甘えて、さっそく迷惑をかけてみる」

「前置きしなくていいのに」

「デートのときってどんな服を着たらいいんだ?」

 くすっと、火色の髪の彼女がほのかに笑う。

「わたしにわかるわけないじゃん。この前のデートがはじめてだったんだから」




「ごめんね。デートのときってどんな服装にしたらいいのかわからなかったから」

「ぜんぜん! むしろ心霊スポットにいくんだから放課後にいくほうがぴったりだと思う」

「よかった。北瀬くんがやさしい男の子で」


 ネコをかぶっているからか、ヒオリがタイヨウの学ランの袖をひっぱりつつ。

 黒髪の彼を盾に夕日のオレンジ色の光から逃げるようにして歩いていた。

 そんなふたりの密着するように歩く姿を後ろからシノハがにらむように見ている。


「あの……円堂さん。歩きづらいんですけど」

「ごめんね。でも、ほら……これから心霊スポットにいくからさ」

「気持ちはわかりますけど。この状態だと北瀬とも会話をしづらいかと」

「おれは平気だぜ」

「いつからお前は円堂さんになったんだ?」


 まったく遠慮なくつっこんだのであろうタイヨウが面白かったのかヒオリがどこか別の国のお嬢さまのようにくすくすと笑う。

「こわくて、だれかにくっつきたいのなら委員長のほうが」

にちながくんに迷惑をかけたかったの……?」


 どこでそういう甘えかたを覚えるんですか。

 イナラにはきこえないほどの音量で、タイヨウがヒオリにささやく。

「女の子のデフォルメ装備。それに北瀬くん本人も現状に満足をしているんだから、わたしがタイヨウくんにべったり甘えてもいいでしょう」


 それとも、日永くんに唇を奪われたんだから責任とってほしいな……とか甘えるほうが好み?

 ヒオリの返事にタイヨウが青ざめる。

「迷惑だったらいいよ。日永くんがわたしの」

「彼氏でもないやつに、あまりひっつかないほうがいいと思っただけで。円堂さんが問題ないと判断をしたのであれば」


 セミロングの黒髪の彼女がゆっくりとまばたきをくりかえしながら黒髪の彼の顔を見上げた。

「日永くん、やっさしー。好きになっちゃいそう」

「からかわないでくれませんか」

「そんな反応されるとからかいたくなる!」


 はしゃいでいるヒオリの姿を見てか、ぼうぜんとした様子のイナラ。

 我に返ったのか、ふだんの表情にもどったウルフカットの彼がちらりとシノハを横目で見る。

 いつもとそれほど変化がなさそうだが、火色の髪の彼女から見えない圧のようなものを感じてか。


つちもりさんもこわかったら、おれに甘えてくれてもいいんだぜ」

 イナラがおどける。

 シノハと目が合いウルフカットの彼がびくつく。

「そういうのやめたほうがいいよ」

 火色の髪の彼女のアドバイスなのであろう言葉にイナラは首をかしげていた。

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