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こわいところにいきたい 2

 互いにスクールチェアに座りなおし向かい合わせの状態になった。

「言いたくないならいいんだけど……なんかあったのか? 契約とはいえ土守さんのことについてききたいとか珍しいし」

きたえんどうさんとどうやったら付き合えるようになるかだけ考えておいてくれ」

 イナラが軽く息を吐く。

 なにかを言いたそうに唇を動かしかけたが結局、ウルフカットの彼はだまったままでいる。


「話をもどすけどさ……ぶっちゃけ円堂さんと付き合える確率は」

「ゼロだな」

「冗談抜きで?」

「北瀬を笑わせようとか、これまでの人生で一度も考えたことないからな」

「冗談きついぜ。一度ぐらいはあるだろう」

 せりとちがいイナラの表情は悲しそうだった。


「理由を教えてくれ」

「理由もなにも円堂さんの異性のタイプと合致してなさそうというだけの話」

「どういう異性がタイプなのか詳しくきかせてもらわないと納得できない」

 タイヨウが視線を、目の前のイナラとちがう方向に一瞬だけ動かした。


すいしん大会でれんしたこんごうミカゲより強い男の子で女顔だとさらにいい感じだと思う」

「女顔はともかく……金剛ミカゲ以上って」

「女顔に関しては、おれの推測だから絶対的な条件でもないとは」

「今から金剛ミカゲをこえるのにどれくらいかかりそうだ?」

「前向きだな」


 絶対にむりとまでは言わないが、現実的じゃないだろうとタイヨウが続ける。

「一応、円堂さんとは友達……みたいな関係なんだから紹介くらいはしてやれるし。そこから恋人関係になれる可能性も少なからずあるだろう」

「本音は?」

「どうやってなぐさめようか、今から考えておくのめんどうくさいなと思っている」

「嘘をついてくれてもいいんだぞ」

「結果は同じだからな」


 それに円堂さんの好みじゃないとしても友達から恋人になれる可能性はあると思う。

 自信なさげにタイヨウが唇を開閉させていた。

「ハートで勝てということか」

「本当に前向きだよな」

「生きている以上は前にしか動けないだろう」

「反応に困る名言を口にしないでくれ」




 給食を終え、空になった食器やトレーを片付けて自分の席にもどったところで。

「円堂さんはどう思いましたか? 北瀬のこと」

 気配を消して、すぐちかくに立っていたヒオリにタイヨウが声をかけた。


「タイヨウくんが今のところ一番気をつかってなさそうな男の子だなー、ぐらいにしか思ってないね」

「北瀬とふつうのデートをするつもりは」

「本人から誘われたら断れないかな。学校での円堂ヒオリちゃんは押しに弱いタイプだから」

「パラレルワールドの話ですか?」

「今、こうやってタイヨウくんやしーちゃんぐらいじゃないと見つけられないように気配を消してないときの話」


 タイヨウの机の上に、ヒオリが背中をくっつけてあおけに寝転がったような体勢をとる。

 黒髪の彼の顔をらんらんとした目でセミロングの黒髪の彼女は見上げていた。

「ふだんのタイヨウくんはああいうキャラなの?」

「どういうキャラクターだと思われているのか知りませんが……同性と女の子相手で接しかたは変えています」

「しーちゃんとわたしでも態度がちがうような」


 にんまりと意地悪そうな笑みをつくるヒオリ。

 タイヨウが困ってそうな顔をする。

「しーちゃんに甘えたんだよね」

「委員長からきいたんですか」

「んーん、タイヨウくんもわかっていると思うけどしーちゃんはそういう意地悪しないでしょう」

「見てたんですか?」

「まあね。今もタイヨウくんだけに見えるレベルで気配を消してあげているだけだし」


 まだ強くなるんですね、とタイヨウは口にした。

「タイヨウくんがりんせんたいせいのときはむずかしいけど弱っていたからね」

「フォローをありがとうございます」

「わたしにも甘えてみる?」

「委員長がブチギレそうなのでやめておきます」

「残念。じゃ、わたしのおねだりきいてくれる?」

「おどしの間違いでは」


 タイヨウの言葉を聞き流し。

「北瀬くんとデートしてあげるからさ……タイヨウくんも同行してくれない?」

 ヒオリが首をかしげ、甘えるような声音で言う。

「ふだんのほうのわたしは男の子が苦手、みたいな設定だからいけると思うんだよね」

「友達は裏切れませんよ。それに悪い結果で終わるとしても北瀬は円堂さんをうらんだりしません」


 だまったままで目をそらすヒオリ。

 反応がないからかタイヨウがのぞきこんでいた。

「友達だと思っていたんだけどな」

 セミロングの黒髪の彼女がつぶやく。しおらしい顔をしていて……今にも。


「えと、その……単独ではなくダブルデートというかたちで委員長もいっしょだったら」

「むりしなくていいよ。一応わたしも女の子だから男の子はこわいと思うところがあるんだけど、にちながくんだけはわりと安心できるから頼んだだけだし」

「むりしてませんよ。さすがにそこまで信頼されているとは思ってなかっただけで」

「本当?」


 タイヨウがうなずき、肯定する。

「北瀬くんに誘われたら、日永くんとしーちゃんといっしょならいいよって言うね」

「委員長も断らないとは」

「そういうやさしさが円堂さんのおもちゃにされているってわからないんだ……タイヨウは」


 声のした方向をタイヨウとヒオリが見る。

 青みがかった熱を放出しているシノハがいた。

「タイヨウくんとデートできるんだし、しーちゃんにとっても悪くない話だと思うけど?」

 けろっと……黒髪の彼や火色の髪の彼女には包み隠さず見せていた表情をした、セミロングの黒髪の彼女がささやくように言う。


「やりかたが気に入らないのよ。男の子をだましているみたいで」

「らしいけど。だまされて悪い気分だった?」

「円堂さんの本音かはさておき、異性に苦手意識があるのは理解できますから……力になれるならだまされていたとしても問題なかったかと」

「タイヨウくんは素直すぎるね」


 つまらなさそうにヒオリがつぶやいた。

 ごろごろとネコのように机の上から落ちないように器用に転がっているセミロングの黒髪の彼女。

「にしても、タイヨウくんも異性が苦手なんだ」

「あまり親しくない女の子相手の場合は言葉遣いを選んでいる感じです」

「わたしとか、しーちゃんに対しても?」

「殴り合ったり、一番はずかしいところを見られているのでご心配なく」

「そういえば、タイヨウくんにいじめられたっけ」

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