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どろまみれな純恋衣とフィスト  作者: 色飴 遥火
異界からの案内人
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この世で一番 6

 不治の病というやつです。

 神の目とも呼ばれ、あらゆるものを見抜き見通す魔術をもっていたギペンテ本人が皮肉にもだれよりも自分がたすからないことを理解できてしまった。


 狭い世界でありながら頂点を極めたつもりでいたギペンテが別の世界にくる理由としてはとうなものでしょう。

 死が目前にせまってきていれば、なおさら。


 可視化された死に直面した生きもの特有の一種のバクなようなものか、一族の復興などと現実逃避。

 ある意味で自分の遺伝子のようなものを残そうとしたからなのかはわかりませんが。

 悪くない死にかただったかと。


 誤算があったとすれば、友人のような関係であるスズツキもギペンテと同じ不治の病にかかっていたことでしょうか。

 じっさいは不治の病ではなく呪いの一種なのですが、にちながタイヨウさんには関係のない話でしたね。


 と唇を動かすギペンテの姿をした何者かがつんいのような体勢で血塗れのタイヨウを見下ろす。

 黒髪の彼はすでに限界をこえて悲鳴をあげるからで立ちあがろうとしていた。


「どうして……今、そんな話を?」

「本物のギペンテさんが死んだからです。わたし、ぼくはニセモノではありますが。オリジナルが消滅したのなら本物を名乗ってもよいかと思いまして」

「こちらの質問に、こたえてないような」


 ごきりと、ギペンテの姿をした何者か首を左右に動かし音を鳴らす。

「失礼。ギペンテさんに変身しているときは調子が悪く、むしろ絶好調ですが。オリジナルのギペンテさんのパワーが強すぎて不具合が生じるのですよ」

「さっきの本物のギペンテさんの話も不具合によるものだと」

「おそらくは」


 立ちあがったタイヨウを観察するような目つきでギペンテの姿をした何者かが見る。

「諦めては……ぼくは不治の病におかされてない状態のギペンテさんのコピーに成功し、目的は達成されました」

 つきみやクモラさんのところへ案内しましょうか?

 ギペンテの姿をした何者かが提案する。


「クモラは関係ありません。単純にどっちが強いか知りたい。だからこそ、たたかいを仕掛けてきたのでは?」

「ギペンテさんの性能をたしかめたかっただけなのですが……そこまで言うのであれば」

 ギペンテの姿をした何者かがりんせんたいせいをとった。


「日永タイヨウさんが全力をだせるように、ぼくもお手伝いさせてもらいましょう」

 かろうじて立っているタイヨウが、すぐちかくにあるビルがぐにゃりと曲がるのを横目で。

「ぼくも生命体ですが、おそらく死ぬことはありません。どこにでもいられるし数もぼうだい。どんなものにも変身できる」

「妖怪とか、なんですか?」


 返事をせず、ギペンテの姿をした何者かがにたりと笑う。

「数が膨大だからビルにもなれるし、島にも街にもなれる。このフィールドはすべてぼくなので、よく観察できました」

 えんどうヒオリもこんごうミカゲもつちもりシノハもギペンテスズツキトサカ頭……月宮クモラに日永タイヨウ。

 頭の中もコピーできるのできみたちの知っているだれかにもなれる。


「金剛ミカゲだけはあとで殺さないと。ぼくは死なないけど、ぼくをひゃっかいは痛めつけたんだから当然の」

「その前に、おれを殺してからだろうが」

 目つきが変わり、殺気のこもった全力のタイヨウの拳を……ギペンテの姿をした何者かが片手で受けとめる。

 びくともせず黒髪の彼が目を見開く。


「奥の手だったようで。ぼくでなければ反撃のいとぐちになったことでしょう」

 全盛期のギペンテ以外であれば勝てていたと思いますよ。

 ギペンテの姿をした何者かが。

 衝撃音とともにタイヨウが空中に浮かぶ。


 攻撃を受けたはずの黒髪の彼もなにが起こったのかわかってないのか。

 急速に落下し……地面にめりこまんばかりにタイヨウが叩きつけられる。

 着地したギペンテの姿をした何者かがうつぶせで倒れたままで動かない黒髪の彼を。


「まだ生きていますか?」

 顔だけを動かし、タイヨウがギペンテの姿をした何者かをにらみつける。

「かなり強めだったのに頑丈ですね。アドレナリンで痛みをとばしているだけかもしれませんが」

 ギペンテの姿をした何者かがしゃがみこむ。


さきほどの奥の手……殺意によるパワーアップ。円堂ヒオリさんとの死闘でとくしたものだと思いますがそのままではさいてきかいにたどりつけないかと」

「最適解? なんの話だ」

「日永タイヨウさんが肉体のスペックをあますことなくフルパワーでつかえる方法についてです」

「敵に塩を送るのかよ」

「金剛ミカゲさん以外は敵と思っていません。このギペンテのスペックがどれほどか、たしかめたいのもありますが」


 ぼくはあなたに興味があります。

 それほどの過去をもちながら封印して忘れているんですから。

 ギペンテの姿をした何者かが続ける。

「頭でも打ったのか」

「ぼくは日永タイヨウさん……あなたにもなれるんですよ。知っていて当然のこと、その痛みも充分に理解してあげられます」

「女の子だったらよろこんで」

「じっとしていてください」


 ギペンテの姿をした何者かの右手がタイヨウの頭を軽く地面に押しつけた。

「辛かったでしょう」

「しゃべ……るな」

「あなたは悪くないのに。おやさしい性格のためにそうなってしまった」

「おい、だからしゃべるなって」

 強引に起きあがろうとしてか、タイヨウの周辺の地面に亀裂が入っていく。


「現在のあなたが心の底から好意をいだく土守シノハさんで語ってあげたいですが……全盛期のギペンテ以外では今のあなたの動きをとめられそうに」

「しゃべるなって! 言ってん」

「過去に月宮クモラさんが死んだのはあなたのせいではありませんよ。あなたはなにも悪くない」

 糸の切れたあやつり人形のようにタイヨウは動かなくなった。

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