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どろまみれな純恋衣とフィスト  作者: 色飴 遥火
異界からの案内人
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20/41

この世で一番 5

「どうして、あなたはそこまで」

「友人のためだから……ミカゲくんならそう言うと思うよ」

 ギペンテが顔を動かす。

 えんどうヒオリが立っていた。

 着ている黒のセーラー服に、っている灰色のパーカーがところどころ焼けげていて。


「友人というか男同士の友情かな? 腹黒ペンギンちゃんのほうがよくわかるんじゃない」

「ぼくの名前はギペンテです」

「わたしは円堂ヒオリ……知っていたっけ? ニセモノ変身できる、ニセの委員長から」

「おや、気づいていましたか」

 足をふらつかせつつヒオリのいる方向にギペンテがからの正面を。


ふんちがうし。なにがあったか知らないけど、ギペンテちゃんもアップデートしたみたいだね」

「詳しく教えましょうか?」

「興味ないし。お互いに体力も限界だと思うし……さっさと終わらせようよ」

 ちかづいてくるヒオリをギペンテが見つめる。

 互いのい。

 一撃で、確実に相手をしとめることができる距離までせっきんしてきたところで。


つちもりシノハさんに手こずっていたようで」

 ギペンテが唇を動かした。

「そこまでわかるんだ、その目玉。ギペンテちゃんが負けたら記念にもらってあげる」

「勝敗は?」

「しーちゃんの勝ち逃げかな。わたしが勝つつもりがなくて」

うそが下手ですね。ミカゲが殺されるかもしれないとこちらを優先させたんでしょう」


 大きく息を吐き、ヒオリは右手だけで自分の黒髪をポニーテールにする。

「なんのことか、さっぱりわからないな」

「女性をいじめる趣味はありませんのでこれくらいにしておきましょうか。それともにちながタイヨウさんがここにいないことが気に」

「はやくやろうよ」


 ヒオリが話を強引に打ち切った。

「もうひとつだけ質問させてください。なぜポニーテールに? 気合を入れるためとか、ルーティーンというやつでしょうか?」

「いい目玉をもっているのにわからないんだ。人間の女はきまぐれでポニーテールにしたくなるのさ」

 左腕を垂らした状態のヒオリが……立ったままで気絶しているミカゲを横目で確認した。


「髪の短い女性はどうするんですか」

「ギペンテちゃん、女の子にモテなさそう。冗談にまともな質問しちゃうなんて」

「性分でしてね。ついででもないですが場所を変えましょうか……ぼくは全力の円堂ヒオリさんと」

「べつにいいよ。すぐ終わるし、合図はほしいけどね。小銭とかもってない?」

「残念ながら。ですがマジックが得意なので花束はいつでも用意できます」


 ぽぽん……という音とともに白い煙の中から人間のいる世界では見たことのない種類の花束をひとつギペンテが出現させる。

「ブーケトスやってよ。もらってあげる」

「円堂ヒオリさんも嫌味がお上手なようで」

 ギペンテが花束を高く……頭上に投げた。

 のと同時にヒオリが骨の折れた左腕で、拳をねじこもうとするもギペンテに避けられる。


「あなたたち人間、武術家たちの勝利の執念と呼ぶものは嫌というほど」

 ヒオリが強引に動きをとめて、拳をねじこもうとしたのとは反対方向に身体をむりやりにねじるように右の蹴りを。

「やはり、そうきますか」

 骨がくだけているのかヒオリの身体から気味の悪い音が響く。


 ポニーテールにした彼女の右の蹴りをギペンテがかんぺきにガードできる体勢をとった。

 ミカゲの蹴りの威力にはほどとおいと確信したからかギペンテが唇を三日月のかたちに。

「ミカゲくんに言われなかった? 命をけた真剣勝負の最中に笑うなって」

 フェイント。

 右の蹴りを自らの意思でからぶらせて、ヒオリが全身を右回転させる。


かいてんきゃくと呼ばれる技でしたね。ミカゲがもっとも得意としていたそれは」

 頭上にふりおろされるようなヒオリの回転脚を、ギペンテが両腕をクロスさせるようなかたちで。

 地面をひろがるようにれつが入る。


「見事な蹴りですが。ミカゲには」

 ギペンテの両腕から鈍い音が。

 さらに地面の亀裂のひろがりが大きく。

「ミカゲくんにトラウマをねじこまれたところ悪いんだけど……ギペンテちゃんがやりあっているのはわたしだってことと」

 ガードをしていた両腕もろとも強引に蹴りぬき、ギペンテの顔面を地面にめりこまさんばかりに叩きこむ。


 ふらつきながらも、なんとか着地をしたヒオリが落下してきた花束を右手でキャッチする。

「イカれた女なのを忘れないでほしいな。目がよくても、ガードが完璧でも……強引に突破すれば問題ないんだし」

 折れ曲がった自分の右足をひややかな目つきで、ヒオリは見下ろす。

 意識を失ったギペンテがびくびくと身体を小刻みにふるわせていた。




「目玉をえぐるはずでは……殺し合いも好きだったかと」

 意識を取り戻したギペンテをいちべつするも興味はないようで。

 ヒオリは気絶をしたままのミカゲの腹をパーカーで右手と口をつかいしばっていた。


「もうすぐ死ぬんだから殺さなくてもいいと思っただけ。見えない目だけもらってもしかたないしさ」

「すべてお見通しですか」

「どういう原理かわかんないけど、魔術とかで見ているんでしょう」

 ギペンテがたからかに笑い声をあげた。


「目の見えないものを相手にしても動揺しないとはようしゃないですね」

「腕が折れた女の子を殺そうとしなかったんだから当然のむくい」

 目が見えない代わりに丈夫な肉体をもらったんだから……ヒオリがしりもちをつく。


「さすがに限界か。しーちゃん、再戦してくれればいいんだけど」

「ぼくが殺そうとしなかったことに不満などはないんですか?」

 座りこんでいるポニーテールにしたままの彼女があおけ状態のギペンテを見る。


「ミカゲくんに負けたのに生きているから、殺されたかったとかじゃないの」

「すみません」

「本気でガードしていたから今回だけは特別にゆるしてあげる。おかげでわたしも新しい」

 ヒオリが首をかたむける。


「つぎはあの世でやろうね。ギペンテちゃん」

 どこかすっきりとした顔つきで、動かなくなったギペンテにヒオリは言う。

 どこかから飛んできた大量の鳥たちがギペンテの冷たくなっていく身体を。

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