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どろまみれな純恋衣とフィスト  作者: 色飴 遥火
異界からの案内人
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18/41

この世で一番 3

「それとこれとは話が」

「マゾヒストならこれくらいの意地悪は受け入れてくれないと」

「いじめられるのは好きだけど、意地悪は嫌いなんだよね。あと」


 とつぜん現れたシノハの拳による攻撃を、右手でヒオリが受けとめる。

「怒っていてもしーちゃんは真面目だね。会話中に殴りかかってくれるなんて」

 受けとめたシノハの拳を握りつぶすと同時に火色の髪の彼女が炎のゆらめきとともに消える。


「タイヨウくんに首輪をつけられたと考えれば悪くないか。確認なんだけど半殺しは」

「絶対にです。骨を折ったり、もさせないでください」

 不満そうにヒオリがうなり声をあげ、しゃがむ。

 セミロングの黒髪の彼女の顔を狙っていたシノハの蹴りが空を切る。


「条件が多いし、タイヨウくんからのプレゼント的なものはないの?」

「専用のムチで叩いたり」

「ちがうちがう。真面目なプレゼントちょうだい」

 と言いつつ地面を燃やし、えぐるほどのシノハの垂直にふりおろしたパンチをヒオリが避ける。


「円堂さんはなにがほしいんですか?」

つきみやちゃんに執着する理由を教えてほしいね」

 ぴくりとシノハが反応をした。

「プレゼントとかではないような」

「かたちがあるものとはかぎらないでしょう。プレゼントは相手がよろこぶのが前提だし」

「そんなことでよろこんでくれるんですか?」

「わたしをよろこばせてくれるつもりだったのか」


 調子が狂うな……ヒオリがつぶやく。

「今から教えましょうか」

「あとでいいよ。こっちも我慢できなくなってきたからさ」

「シノハを殺したら本当に殺しますよ」

「愛の告白じゃん」


 にゃひひひ……奇妙な笑い声をあげて、ヒオリが本物のシノハに抱きつき。

「あっちでやろうか、プンスコしーちゃん」

 タイヨウに邪魔をされないようにか、セミロングの黒髪の彼女が火色の髪の彼女をつかまえたままでその場からはなれていく。

 取り残された黒髪の彼が辺りを見回す。

「燃えていたビルは」




「なんだ、その気持ち悪いしゃべりかたは」

 ミカゲに蹴りとばされた、ペンギンの男が意識を取り戻したようでまばたきをくりかえす。

 ずいぶん昔のことを思い出させられましたね。

 意識をとばされるなんて、いつぶり。


 自分を追いかけてきている、ミカゲの気配を感じ取ってかどうだにせずペンギンの男が目を向けた。

「やりあうつもりはないと……こんごうミカゲさんには伝えそこねていたんでしたっけ」

 

 月宮クモラさんの安全が確認できない以上は同じように蹴りとばされ……ペンギンの男がつぶやく。

 金剛ミカゲさんの件はさておき、ここは。

 即席のビジネスパートナーのわりには仕事がていねいでたすかりますが。

 あなたはどこにもいないんですね、スズツキ。


 ペンギンの男が悲しそうな顔をつくった。

 もう……声もきくことはできませんか。

 仮にわたしに声をきかせられるとしても、あなたは話しかけてくれないでしょうね。

 仕事が終わったあとのたのしみであるばんしゃくは。

 だれにも邪魔をされないところで静かにやるのがあなたのりゅう


 一度ぐらいは、いっしょにカリカリに焼いた食べものとうまい酒を。

「いいやつのふりをするなよ、下手くそのうそつき」

「本当に……あなたはおやさしい」

 遠慮なく残りの時間を自分のためだけにたのしませてもらいましょうか。


 スズツキ。

 あなたが死ぬ前に見たかった、かつてのわたし。

 かつてのぼくとまったく同じとは言えませんが。

 それでも満足していただけることでしょう。

 酒のさかなとして充分なぐらいには。

「ぼくも、やっとこさ本気でたたかえるおもちゃを見つけられたかもしれません」


 地面をえぐりながら強引に着地をしたギペンテを見てか追いかけてきていたミカゲが動きをとめる。

ふんが変わったか?」

「こちらが本来です。めんどうくさいものはすべてなくなってくれたので……本気でたたかえるようになりました」

「よくわからないが。ずいぶんと」


 とっさにかんぺきにガードをしたはずのミカゲを強引に蹴りとばした。

 屈強な彼はなんとか地面に着地し、しびれているのであろう……ふるえる自分の両腕を見る。

「今ので半分ぐらいです。手加減しましょうか?」

「さっさと全力でかかってこい。しゅがえしするヒマがあるならな」

「できるだけ、たのしみたいんですが。まだ少なくともおもちゃがふたつも残っていますからね」


 右足を軸にから全体を回転させて、ミカゲがたつまきりをはなつための準備を。

「なんとも心地よいそよ風を提供してくれてありがたい」

 仁王立ち状態のギペンテのある種のあおり文句には反応せず。

 ミカゲが無数のレーザービームのごとき竜巻蹴りの風圧をすべていっちょくせんびせかける。


 一歩も動くことなく、ふりそそぐレーザービームの雨をギペンテは避けていく。

「威力もたしかめておきましょうか」

 手のひらでギペンテが受けとめた。

 派手な音が響くも右手がしびれたていどのようでぶらつかせる。


「スズツキやトサカ頭が歯が立たなかったのも納得の威力ですね」

「わかりやすい皮肉だな」

 着地をしたミカゲが落ち着いた口調で言う。

「間違っていたら失礼ですが……金剛ミカゲさん。あなた、手加減をしていますよね?」

 おそらくは右足の蹴りのほうが威力が高いはず、なのに左足で竜巻蹴りを放っていました。

 なにかポリシーのようなものでも?

 ギペンテがミカゲにきいている。


「ただのトラウマだ」

「手短であれば当時の話をきいてあげても」

「克服済みだ。面白くもなく、対戦相手を病院送りにして未だに治る見込みがないというだけの単純な話だからな」

「死にたいほど、つらいんでしょうか?」

「おれが死んで解決するものでもないだろう。対戦相手も武術家である以上は……覚悟していたはず」

「覚悟ですか。便利な言葉ですよね、それ」

 ギペンテが鼻で笑うように言う。


「笑えるような話はしてないつもりだが」

「失礼。単純にその入院された方と金剛ミカゲさんの覚悟というものにはうんでいがあるかと」

 同じ言葉でもまるで別物、とてもじゃないですが比べることさえ。

 ギペンテが口を閉じる。

 地雷を踏んでしまったようですね。

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