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どろまみれな純恋衣とフィスト  作者: 色飴 遥火
異界からの案内人
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17/41

この世で一番 2

 目の前にいたはずのシノハが炎のゆらめきとともに消えてしまい、タイヨウとヒオリがほとんど同時におどろく。

「今のはきょうじゃない?」

 声のした方向をタイヨウとヒオリが見る。

 高速で移動したわけではないのを理解してか黒髪の彼は困ったような顔を。


 セミロングの黒髪の彼女は全身をふるわせ、ぶらさがった食事を我慢するような表情を。

「相手の油断やすきや弱点をつくのは当然。タイヨウくんは甘いよ、やさしく気絶させようとしたし」

「手加減したってこと?」


 ヒオリの言葉にシノハが眉毛をぴくつかせる。

「読みが甘かっただけだ。今のシノハは本気でたたかわないと勝てない相手なのにな」

「わたしも今ので決着だと思った。ごめんね、しーちゃん」

「べつにいい。ここから」

 またシノハが炎のゆらめきとともに消える。


 そこにいたはずの火色の髪の彼女の、みぞおちを攻撃したタイヨウの拳の風圧の影響もあってか。

 シノハのまぼろしが消えるスピードはさきほどよりもはやかった。

「今のが本気だったのはわたしでもわかる」

 姿の見えないシノハのうれしそうな声がどこからかきこえてくる。


「大丈夫だと思いますが、こんごうさんの加勢にいっておいてもらえますか」

 右手で骨の折れた左腕を固定するようにつかんだ状態のままヒオリがまぶたを閉じた。

えんどうさん? きこえて」

「このままミカゲくんのところにいったらタイヨウくんとしーちゃん、イチャイチャしそうだしな」


 まぶたを開いたヒオリがつぶやき。

 シノハの声がきこえた方向に一瞬、目を動かす。

「しーちゃんを殺す気でやってないよね?」

「友達ですから」

「そのままの状態だと決着がつかないのはわかっているよね。うやむやにしたいのかもしれないけど」


 今日のしーちゃんは納得してくれないと思うな。

 というヒオリの言葉をきき。

 要点を理解できてなさそうな顔をするタイヨウ。

「しーちゃんもはっきり伝えないとなことは」

「それ以上しゃべるな」

 とつぜん自分の後ろに現れたシノハにおどろいた様子もなくヒオリがふりむく。


「お手本を見せてあげようか、しーちゃん」

 たたかいを中断させられて警戒心がやわらいでいるであろうタイヨウのほうへ。

 意地悪そうな笑みを浮かべたヒオリがスキップをするようにちかづく。

「邪魔をしないと言っていたような」

「先送りのほうが面白そうだから我慢してあげようと思っただけだよ」

「我慢できなくなったんですか?」


 落ち着いた口調とは裏腹に……タイヨウの殺気のこもった目を見つつ、ヒオリが首を横にふる。

「さらにカンフル剤をあげようと思って」

 なにかを言いかけたタイヨウの言葉をさえぎり。

「話は変わるけどさ。しーちゃんとたたかっていていいの? つきみやちゃんはまだ見つかってないのに」


 ふっと……タイヨウがゆらいだような表情を。

 その一瞬の隙を見逃すことなく。

 ヒオリは左腕の骨が折れているのもおかまいなしに黒髪の彼に抱きつき唇を奪った。

 びっくりしているのであろう、タイヨウをあざわらうかのようにヒオリはにやつき。


 ぼうぜんと自分たちのキスシーンを見るシノハにセミロングの黒髪の彼女が勝ち誇ったような。

「まじで死ねよ、メス害虫」

 表情を変えずシノハはたんたんと言い。

 火色の髪の彼女の殺意のほこさきを察知してか、タイヨウがヒオリを抱きよせる。

「やあん、もっとあじわいたかったのに」


 キスを中断させられて……黒髪の彼の胸板に顔をうずめたセミロングの黒髪の彼女が残念そうにやわらかな唇を動かす。

 さっきまで自分が立っていた場所が燃えさかり、えぐれているのを見てかヒオリが短く口笛を吹く。

「死にたいんですか。シノハが怒るのも」

「しーちゃんの恋心はわかっていたんだね。意外とプレイボーイくん?」


 反省した様子もなくヒオリは会話を続ける。

「プレイボーイかわかりませんけどシノハの勘違いだと、ほれられる理由もないので」

 自分の本心であろう言葉を並べるタイヨウを……セミロングの黒髪の彼女が信じがたいと言いたそうな顔で見つめる。


「自己肯定感が低いなー。さんぴーもできるのに」

どもえ? なんで今」

にちながくんに変なこと教えんな!」

 ふだんと比べものにならないほどゆがみ、怒りの感情をあらわにしたシノハを中心に……熱が。


「しーちゃんとやってもいいよね?」

 完全にヒオリを標的にさだめている火色の髪の彼女の鋭い目つきをタイヨウが確認した。

「間違っても殺したりしないでくださいよ」

「しーちゃんを殺してほしいっておねだり? それとも、わたしへのアイラブユー?」


 タイヨウに見下すように、殺気に満ちた目でにらまれるもヒオリは平然としている様子。

「三つ巴したいならやってあげるけど」

 黒髪の彼が深呼吸をするように大きく息を吐く。


「おれは金剛さんの加勢にいきます。根本さえ叩きつぶせば、クモラの安全も保証されるようなもののはず」

「しーちゃん殺害後タイヨウくんと殺し合いデート計画は叩きつぶさなくていいの?」

「今のシノハ相手だと片腕が折れた円堂さんのほうが殺されそうなので」

「たすけてくれないの……タイヨウくんは」

「自業自得でしょう。成仏してください」


 タイヨウくんにもマゾヒストと見抜かれるなんてそんなにわかりやすいのかな?

 ヒオリがへらへら笑いながら、つぶやく。

 準備運動をしつつシノハを観察するセミロングの黒髪の彼女が、タイヨウの視線に気づき。


「はやくいきなよ……ほとんどしろうとのしーちゃんでこのレベルなんだから、腹黒ペンギンの強さも想像できるよね」

 本当に殺されちゃうよ、ミカゲくん。

 真剣そうな顔つきでヒオリが口にする。


「金剛さんに興味がなかったのでは?」

「将来有望なおもちゃをへらしたくないだけだよ」

「円堂さんが加勢すればいいのでは」

 だな、とでも言いたそうな表情のヒオリ。


「かばったりされそうだし。できるだけかっこ悪いのは見ないようにしてあげたいって感じ」

「だったら、金剛さんが死なないように加勢をするのでシノハを殺さないでくれますか?」

 爽やかそうな笑顔をつくったタイヨウからの交換条件をきいてかヒオリが嫌そうに顔をゆがめる。

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