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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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40/42

斯くして傭兵は帰還する


 真実を打ち明けた翌日。

 龍兵はプロパテールとアティルーナ。

 そして、ザミルを伴って宮殿へ赴いた。

 宮殿内に踏み込むと、もぬけの殻であった。

 警護に当たってる天使や宮殿内で働く者達の姿は一向に見当たらない。

 それに龍兵が首を傾げると、ザミルは狩りの女神として疑問を覚えながらも告げる。


 「本当に誰も居ないわ」


 だが、プロパテールは違った。


 「ヨルダバオトは残ってる。玉座の間よ」


 そう告げられると、龍兵とアティルーナは警戒しながらも先導する様に歩みを進めていく。

 不気味な静寂に満ちた宮殿内を進み、玉座の間の扉を龍兵とアティルーナが蹴破って突入した。

 だが、迎え撃つ攻撃は何故か無かった。

 そんな状況に困惑していると、ヨルダバオトは涼しい顔と共に語り掛ける。


 「待ちくたびれたよ。宮殿の者達は既に帰らせている」


 その言葉に対し、龍兵がマグナムリボルバーを向けて警戒すると、ザミルという護衛を伴ってプロパテールは足を踏み入れる。

 そんなプロパテールに向け、ヨルダバオトは玉座から降りて本心から語り始めた。


 「姉上。私は己がした事に後悔していない。姉上を愛しながらも強く憎んだ。だからこそ、最高に愉しかった」


 その言葉にプロパテールは苛立ちと共に怒りを覚え、怒鳴りそうになる。

 しかし、ヨルダバオトは晴々とした面持ちと共に気にせずに続ける。


 「物事には始まりがあれば、終わりがある。そして、私の終わりは今なだけだ」


 本心から語った言葉が意味する事を察すると、龍兵は警戒を解く事無く尋ねる。


 「何を企んでる?」


 龍兵の経験上。

 今目の前に立つヨルダバオトの如く、晴々とした面持ちで死を受け入れるタイプは大概は死をスイッチに何かを盛大にヤラかす事が多い。

 それ故に問うが、ヨルダバオトは涼しい顔で答えた。


 「物語の終わりを締め括ろうとしている。ただ、それだけの事さ」


 その言葉にプロパテール達は困惑してしまう。

 だが、龍兵だけは察したかの様に漏らした。


 「成る程。お前は最初から決めていた訳か……」


 「どう言う事?」


 プロパテールが疑問を解消しようと問えば、龍兵は経験と仮説を交えながら答えていく。


 「稀に居るんだ。自分の破滅を最初から覚悟した上で好き放題する奴が……で、コイツの場合は恐らくだが、実の姉が何らかの形で封印から解放され、自分の前に現れる。ソレを己の生という物語の終わりとして決めていた」


 龍兵が語った仮説をヨルダバオトはアッサリ肯定した。


 「その通りだ。貴様はやはり頭が回るのだな」


 感心した様に肯定すると、プロパテールはハッキリと告げる。


 「ヨル。いいえ、ヨルダバオト……私は貴方の裏切りに対しては赦す。でも、600年もの間ずっと大地を焼き続けた事は赦さない」


 ヨルダバオトの裏切りを赦す。

 だが、その後の大地を600年も戦火で焼き続けた事は決して赦さない。

 そう告げられると、ヨルダバオトは悪怯れる事なくハッキリ返した。


 「最初から赦して貰おうとは思ってない。そして、私の物語の終わりに誰の手も借りる気も無い」


 その言葉と共にヨルダバオトは右手を徐ろに上げると、勢い良く自らの胸を貫いた。


 「グッ!?」


 苦痛に満ちた呻き声と共に血を吐き、胸を鮮血で染めるヨルダバオトは貫いた右手で自らの心臓を抉り出した。

 そして、不敵な笑みを浮かべながらその場に倒れ、動かなくなった。

 ソレはまごうことなき自殺であった。

 そんな結果を目の当たりにしたプロパテールとアティルーナ。それにザミルは今の感情をどう処理すべきなのか?解らず、困惑するてしまう。

 だが、龍兵は平然と慣れた様子でマグナムリボルバーを腰のホルスターに収めると、スマートフォンを取り出した。

 そして、ミンに電話して問う。


 「見てたんだろ?俺の仕事はこれで終わりで良いのか?」


 その問いをミンは認めた。


 「あぁ、確認した」


 「なら、俺の仕事はコレで完了。そう認識しても良いんだな?」


 龍兵が傭兵として問えば、ミンは肯定する。


 「あぁ、君は結果的に契約を果たした」


 「なら、今度はお前が契約を果たす番だよな?」


 ソレは支払い要求であった。

 支払い要求を呑む意思を見せるかの様にし、龍兵の前にポータルが開いた 。

 龍兵が躊躇いなくポータルに入ると、視線の先で今まで見た事無い極上の女が優雅に椅子に座り、一杯やっていた。

 背後でポータルが閉じる気配を感じると、龍兵は彼女の元へ赴いて向かいにある椅子に座り、改めて要求する。


 「契約を果たせ」


 要求された彼女はすっとぼける様に返した。


 「契約?私はミンじゃないわよ」


 そんな彼女に若干の苛立ちを覚えながらも、龍兵は断言する様に再度要求する。


 「お前のつまらんジョークに付き合う気は無いぞ、ミン」


 その言葉に彼女はつまらなさそうにすると、不満を露わにしながら返す。


 「相変わらずつまらない男ね。少しは驚きなさいよ」


 ミンは本来の姿を見せてるにも関わらず、龍兵は平然とした様子で看破して来たのだ。

 つまらないと言わんばかりに不満を露わにしたくなるのも当然だろう。

 そんな彼女の事など知った事か。

 そう言わんばかりの龍兵はホルスターからマグナムリボルバーを抜くと、シリンダーをスイングアウトさせて抜弾してから彼女の目の前に置いて言う。


 「その前にコイツは返す」


 「ホント、空気を読まないわね」


 益々不満を覚えながらも、彼女は少しだけ真剣な面持ちとなって告げる。


 「契約は果たすわ。でも、貴方が帰った後、貴方は私と絶縁するんでしょ?なら、絶縁前に少し話しても良いんじゃない?」


 その言葉と共にテーブルにもう1つあったグラスへ透明な酒を注いだ彼女が差し出すと、龍兵は煙草の箱を取り出す。

 妙な軽さに嫌な予感を覚えながら開けると、中は空っぽであった。

 そんな龍兵に彼女はシガリロを差し出すと、受け取った龍兵はソレを咥えて火を点す。

 龍兵が紫煙を吐き出せば、彼女はグラスを傾けて語りかける。


 「貴方は本当に元の退屈な生活に戻るの?」


 「あぁ、戻る」


 龍兵がハッキリと肯定すると、彼女は勿体なさそうに言う。


 「貴方の能力は下手なチート持ちよりも優れてる。傭兵としてばかりか、スパイとしても超一流の腕と技術を誇る。そんな逸材を平和なんてつまらない世界で腐らせるのは世界の損失よ……」


 本心から称賛する様に彼女は言うと、彼女は提案して来た。

 返って来るだろう答えを察した上で……


 「私の元で働かない?貴方の言い値を払うし、貴方が退屈する暇も無いくらい愉しい仕事も用意出来るわよ?」


 その提案を龍兵は躊躇いなく蹴飛ばした。


 「同じ事を言わせるな。コレが最後の仕事だ」


 彼女は龍兵の答えを察していた。

 それ故に引き下がる。

 しかし、それでも繋がりは残したいが故にある物を差し出す。


 「コレは?」


 「私の連絡先。気が変わったり、私にお願いがある時に電話して♡」


 笑顔と共に告げられると、龍兵は連絡先の記された名刺を手に取り、ソレを目の前でビリビリに破いて見せた。

 しかし、彼女が怒る事は無かった。

 寧ろ、やっぱりか……と、言った様子であった。


 「相変わらず頑固ね」


 そんな彼女に対し、龍兵は睨むように見詰めながら問う。


 「それで?何時になったら、お前は契約を果たすんだ?」


 「せっかちね。少しは付き合いなさいよ」


 「俺はさっさと帰りてぇんだわ。退屈だけど悪くない生活によ……」


 ウンザリとした様子で龍兵が言うと、彼女は改めて問う。


 「本当に?1年ぶりの依頼を楽しそうに進めてたのに?本当に傭兵辞めるの?」


 その問いに龍兵は本心と共に答える。


 「愉しんでたのは否定しねぇよ。実際、愉しかったし……だが、俺の戦争はあの時に終わってる」


 その答えを聞くと、彼女は別の事を問うた。


 「なら、今の貴方を創り上げた一度目の異世界からどうやって戻れたのか?それはもう気にならない?」


 大概の者ならば、聞こうとするだろう。

 だが、龍兵は違った。


 「どうでも良い。例え、ソレがお前の仕業だとしても関係無い。だが、お前の仕業だってんなら、一応は礼を言っとく……ありがとう」


 「心の籠もってない感謝ありがとう」


 そう返すと、彼女は目の前に置かれたマグナムリボルバーを龍兵に差し出して来た。


 「コレはあげるわ。記念に飾ったら?」


 「要らねぇよ。つーか、こんなもん持ってたら逮捕されるだろうがクソボケ」


 ハッキリ拒絶されてしまった。

 だが、彼女は気にしなかった。

 すると、そんな彼女に龍兵はある事を思い出すと、確認する様に問う。


 「お前が一度目の異世界で俺を帰還させたってんなら、生命の恩人でもある訳だよな?」


 「まぁ、そうなるわね」


 彼女が肯定すると、龍兵は告げる。


 「ティナーティス墓地。墓の名前はクルーディス・ジェンセン」


 「誰の墓よ?」


 彼女が首を傾げながら問うと、龍兵は答える。


 「赤の他人。で、ソイツの棺にある物を隠してある……ソレ、お前にやるわ」


 「ある物って何よ?」


 当然の疑問を彼女がぶつけると、龍兵はニンマリ笑って返した。


 「それは見てのお楽しみって奴さ。あ、棺を開ける時は気を付けろよ?罠を仕掛けてあるから」


 罰当たりにも程がある事をシレッと告げると、彼女は呆れながらも受け入れた。


 「なら、ありがたく貰っておくわ」


 彼女がそう返すと、気配がした。

 気配の元を見ると、其処にはプロパテールの姿があった。

 プロパテールは龍兵へ呆れ混じりに言う。


 「別れの挨拶もしないって無礼にも程があるんじゃないの?」


 「俺が無礼者なのは今更だし、別れの挨拶とか要らねぇだろ?」


 龍兵が悪怯れる事なく返すと、プロパテールは益々呆れてしまう。

 だが、それでも本心から感謝した。


 「貴方のお陰で私は戻れた。ありがとう」


 「礼なんぞ要らねぇ。俺は仕事しただけだ」


 龍兵は素っ気ない態度で吐き捨てると、ふとある事に気付いた。


 「なぁ、俺がヤラかした事って神話とかにならないよな?」


 問いにも似た龍兵の言葉にプロパテールはキョトンとすると、彼女は呆れ混じりに答える。


 「貴方のヤラかした事って神話レベルのヤラかしよ?残らない方がおかしいわよ?」


 呆れ混じりに肯定されると、龍兵はゲンナリとした様子で言う。


 「冗談じゃねぇ……神話になるとか勘弁しろよ。つーか、そんな神話になる様な事してねぇべよ?」


 その言葉に彼女は心の底から呆れながら述べていく。


 「封印されてた真の主神解放。戦の女神と狩りの女神を翻弄したばかりか、出し抜いて真の主神の断片を集めた。更に結果的に偽りの主神を死に至らせ、真の主神を玉座に舞い戻させた……神話にならない方がどうかしてるわよ?」


 その言葉にプロパテールが同意する様に頷くと、龍兵は益々ゲンナリしてしまう。


 「マジで勘弁してくれ。俺は俺の都合で仕事しただけで、英雄になりてぇわけじゃねぇし、ブラックオプスが記録に残るとか傭兵として最悪の失敗じゃねぇか……」


 傭兵を辞めるとは言え、傭兵としてのプライドが未だ残っていた龍兵にすれば、神話と言う記録にデカデカと残るのは大恥も良い所であった。

 それ故に龍兵はプロパテールに頼み込む。


 「パティ。頼むから、この件を神話とか記録に残すな。恥ずかし過ぎて死ねる」


 その頼みをプロパテールは笑顔で拒否した。


 「嫌よ。貴方が其処まで嫌がるなら神話として残してやる方が私もスッキリするし、貴方が悶絶するのを楽しめるから」


 「ふざけんなよ……なら、せめて名前は記さないでくれ。マジで頼むから」


 龍兵が諦めと共に譲歩すると、彼女は愉快そうに笑う。


 「貴方が本気で困る姿を久し振りに見れて良かったわ」


 「うるせぇクソアマ」


 龍兵がウンザリとした様子で返すと、彼女は改めて告げる。


 「貴方の事は決して忘れないわ」


 「さっさと忘れてくれ。で、絶縁してくれ」


 龍兵はそう返すと、立ち上がった。

 そんな龍兵の前にポータルを出すと、彼女は最後の別れの挨拶を告げた。


 「さようなら。最高のロクデナシの友」


 「じゃあな、最高のクソったれの友よ」


 そうして別れの言葉を残せば、龍兵はポータルを潜るのであった。



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~幾年後~ 吟遊詩人「・・・おお~その名はドラゴンソルジャー 真なる女神に侍りて偽りの神を追い詰める~」 ??「次はドラゴンソルジャー(龍兵)狩りの女神の七つの獲物とか戦女神の恋泥棒とかがいいかしら…
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