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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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39/42

だから傭兵はロクデナシなんだ


 マグナムリボルバーの試射と慣らしを再開させる為にシューティングレンジに戻ると、蹲っていたプロパテールの姿は無かった。

 アティルーナとザミルがプロパテールを運び出し、部屋に送ったのだろう。

 そう判断した龍兵はさっきまで使ってたブースへ再び戻ると、ヘッドホンタイプの耳栓をセットしてからマグナムリボルバーを構え、引金を引いた。

 耳を劈く砲声に似た銃声がレンジ内ばかりか、その外にも響き渡る。

 その銃声と共に強烈な反動を感じると、30メートル先に据えられたマンターゲットの眉間がブチ抜かれた。

 すると、龍兵はそのまま何度も引金を引いていく。

 銃声が響く度、マンターゲットの頭部が穴だらけとなる。

 そうして、シリンダーに残る全ての弾をブチ込めば、龍兵はブース脇の端末を操作してマンターゲットを自分の元へ移動させた。

 そして、マンターゲットの着弾を見詰めながら分析する。


 ダブルアクションで撃っても弾着は固まってる。

 コイツの癖は掴めたと見ても良さそうだが、未だ慣らしは終わってない。

 なので、このまま慣らしを済ませると共に精度と練度を上げていこう。

 最悪、コイツに頼る羽目になるだろうし……


 そう結論付けると、龍兵は新しいマンターゲットをセットしてから端末を操作し、再び30メートル先に据えた。

 それからシリンダーをスイングアウトさせると、シリンダーに残る空薬莢をエジェクターロッドを押して排出し、1発ずつ再装填していく。

 そうしてリロードが済めば、再び射撃を再開し、銃声と共にマンターゲットを穿ち続けた。

 そして、リロードを何回か挟みながら多数の銃弾を撃ち込んだ龍兵はマグナムリボルバーのシリンダーをスイングアウトアウトさせて排莢すると、ある事に気付いた。


 「コイツ、あんだけ撃ったのにシリンダーが熱くならねぇ……普通なら熱くて触れなくなるべよ?」


 マグナムリボルバーの特徴的な見た目をしたシリンダーは多数の銃弾を放って熱せられてると言うのに、平気で触れた。

 そんなマグナムリボルバーに龍兵は心の中で「コレ、何で出来てんだよ?」そうボヤくと、ブースから離れた。

 ブースの背後。シューティングレンジの壁際に設置された作業台へと赴くと、龍兵はマグナムリボルバーを分解し始める。

 慣れた手付きで流れる様にマグナムリボルバーを分解すると、作業台に用意されていた整備用具を手に取る。

 銃口内をガンオイルで湿らせた専用のブラシでゴシゴシと磨き、内部に溜まった火薬滓や弾頭が削られて残った細かな金属粉等を入念に落としていく。

 その後も入念に何度もブラシで磨くと、龍兵は仕上げとしてウェスの付いたクリーニングロッドで内部を拭き取った。

 そんな作業をしていると、足音が聞こえて来た。

 龍兵はその足音と気配に気付きながらも作業の手を止めず、整備を続けていく。

 すると、シューティングレンジに来た人物……ミンはシガリロを咥えると、火を点しながら尋ねて来た。


 「どうだねソレは?良い銃だろう?」


 問われた龍兵は作業を続けながら返す。


 「何処が良い銃だよ。アホみてぇな反動でジャジャ馬だわ、銃声はクソうるせぇわ、トリガーは重いわ……挙げたらキリねぇぞ」


 文句ばかりであった。

 だが、内心では普段使わぬタイプと言えるロマン溢れる拳銃を撃ってる事を愉しんでる。

 ソレを読み取れたからこそ、ミンは呆れ混じりに返す。


 「その割には投げ棄ててないじゃないか……私の知る君なら、使えない道具はさっさと投げ棄ててキチンとしたのを寄越せと催促するだろう?」


 付き合いが長いからこそ、ミンは龍兵の性格を熟知していた。

 だからこそ、内心ではマグナムリボルバーを撃つのを愉しんでいると、見透かしていた。

 しかし、ミンが来た目的は別にある。

 それ故に本題を切り出した。


 「パティの様子を見てきたよ。重症だなアレは……」


 他人事の様に言ってるが、龍兵を責める様にも聞こえた。

 ソレを長い付き合いから理解している龍兵は、整備の手を止める事無く他人事の様に返す。


 「だろうな」


 「当事者だからこそ真実を知りたい。そんな義務感に駈られるのは当然なんだが……他にマシな言い方は無かったのかね?」


 ミンが紫煙と共に問うと、龍兵は淡々と返す。


 「アレは聡いから変に誤魔化しても直ぐにバレる。だから、望み通りに俺の仮説を教えた」


 その言葉も他人事の様に聞こえた。

 だが、龍兵はそう言いながらもプロパテールに大きな衝撃を与えてしまった事に対し、責任を感じていた。

 ソレが解るからこそ、ミンは意外そうに感じてしまう。


 「驚いた。君が責任を感じ、自責をしてるとは……私の知る邪悪な傭兵とは思えないな」


 本心からミンが驚いてると、龍兵は作業の手を止めて振り向いて本心を口にした。


 「俺だって人間だ。時には申し訳無い気持ちになる事だってある」


 「本当かね?君、基本的に相手を気遣う事なんてしないじゃないか……寧ろ、相手が望んだ上で世知辛い真実を教えて、苦しむ様を楽しむタイプだろう?」


 一度目の異世界時代。邪悪な傭兵として生きてきた龍兵を深く知るからこそ、ミンは訝しんでしまう。

 そんなミンに龍兵が否定する事は無かった。


 「そりゃ、その頃はそう言う愉しみ方をしてたさ。実際、最高に愉しかった」


 「ならば、何故今は申し訳無い気持ちになってるんだね?」


 「そりゃ、異世界から帰ってからの退屈に満ちた一年が俺を怪物から少しだけ人間に戻してくれたからだろ」


 本心から思った事を返すと、ミンはポカンとしてしまう。

 だが、直ぐに愉快そうに嗤った。

 そうして一頻り嗤った所でミンは真剣な面持ちとなると、真剣に問う。


 「君は72時間の間にパティが立ち直れなかったら、本気でヨルダバオトを殺しに行くのかね?」


 依頼人として、友として。

 ミンが真剣に問えば、龍兵は真剣な面持ちで肯定する。


 「あぁ、分が悪かろうと俺は行く。それで死んだとしても、仕方無い。つーか、俺としては目的は果たせてるから、死んだとしても別に構わない」


 既に目的は果たせている。

 そう聞くと、ミンはソレを言い当てた。


 「君の幼馴染含めたクラスメイト達の事かね?」


 「そうだ。俺にとっての最大の懸念事項だった」


 龍兵にすれば、自分が血に染まる。何なら、死ぬのは別に構わなかった。

 だが、優と勇輝と言う幼馴染とクラスメイト達は違う。


 「アイツ等は良い奴だし、真っ当に生きる善良な存在だ。俺なんかと違ってな……だから、こんなクソみてぇな所で死ぬべきじゃねぇし、居るべきでもない」


 一切の偽りの無い本心を語ると、ミンは益々驚いてしまう。


 「驚いた。私の知る君なら、同胞であるクラスメイト達を簡単に見棄てて、自分だけ生き延びる様に立ち回ってる」


 そんなミンに龍兵は吐き捨てる様に返した。


 「よく言うぜ。俺が前金として皆を帰す様に要求した時、ほくそ笑んだろ?こりゃ、都合良く利用出来るってよ?」


 「否定はしない。実際、君は超一流だが、扱いやすいか?と、聞かれたら最悪の部類だからな……だからこそ、私は君の言い値を喜んで支払ったのさ」


 ミンがアッサリ認めると、龍兵は追及する様に問う。


 「お前、本当にクソ野郎がヤラかした勇者召喚て言うクソガチャに関わってないんだよな?俺的には、俺を利用する為に細工して仕向けた……そう考える方がシックリ来るぞ」


 その問いにミンは嘘偽り無く否定した。


 「あの召喚された者達の中に君が居たのは、私でも予想外だった。アレは本当に運命の悪戯という奴で私自身驚いたし、盛大に笑うしかなかった」


 長い付き合いから嘘偽り無く答えていたのは理解していた。

 だが、それでも龍兵は訝しんでしまう。


 「本当かよ?お前なら目的の為なら手段選ばねぇじゃん」


 「否定はしない。最悪、君を拉致して無理矢理仕事をさせるのも考えてた。だが、ヨルダバオトが君を含めた善良な少年、少女達を召喚してくれた御蔭で私は都合良く君を利用出来てる」


 シレッと龍兵を拉致して無理矢理仕事をさせる事を考えていた事をミンが告げれば、龍兵はゲンナリとしてしまう。


 「マジかよ。つーか、俺よりも腕の良い奴、沢山居るべよ?」


 ゲンナリとしながら返すと、ミンは益々呆れてしまう。


 「生憎だが、私は君より優秀な傭兵を知らない。君は自分を低く見てる。だが、義体や電脳化が当たり前のあの世界で電脳化も義体化も一切せず、生身で30年近くを戦い抜き、生き延びて来た奴はハッキリ言って、バケモノのカテゴリーに含まれる」


 ミンが本心からそう評すると、龍兵は不愉快そうに返す。


 「俺は死なないように立ち回って来ただけだ。特別な事なんてしてねぇし、バケモノって言われるのは流石に心外だぞ?」


 「君は自分を雑魚と言う。だが、周りから見れば、君は恐ろしい人喰い鮫。何なら、手の付けられないドラゴンやリヴァイアサンと言っても過言じゃない」


 そう評するミンに龍兵は心外と言わんばかりに返す。


 「人喰い鮫とか、ドラゴンとか、リヴァイアサンは寧ろお前だろ?」


 「君の欠点は自覚が足りてない事だ。と、話が大きく逸れてしまったな……君はパティが立ち直れなかったら、ヨルダバオトを殺しに行く。ソレを変える気はないかね?」


 改めて問われると、龍兵は斬り捨てる。


 「くどい」


 「その頑固な所は変わらないな。ならば、私はコレ以上は言わないし、止めない」


 ミンが依頼人として、友として龍兵を止めない。

 そう断言すると、龍兵は要求する。


 「なら、頼みがある」


 「何だね?」


 「俺がくたばったら死体は日本に送ってくれ」


 龍兵にすれば、両親に黙って異世界に残り、傭兵稼業をしている。

 両親に対し、最悪な形の決着として死体で帰還する。

 そうする事で申し訳無いが、両親には踏ん切りを着けて貰いたい。

 そんな身勝手と言える一区切りを龍兵が要求すると、ミンは承諾した。


 「良いだろう。君が万が一死んだら死体を君の両親に送ってやる」


 「頼むわ」


 まるで簡単な仕事を頼む様な態度の龍兵にミンは友として要求する。


 「君は最低最悪な男だ。だが、私にとっては大事な友でもある。だから、生きて帰ってこい」


 「約束は出来ねぇな」


 龍兵はシニカルに笑って返すと、ミンは用は済んだ。

 そんな態度と共にシガリロを燻らせながらシューティングレンジを後にした。

 そして、龍兵が一人残される。

 龍兵が慣らしを再開しようとすると、今度は目を真っ赤にしたプロパテールがアティルーナとザミルを伴ってやって来た。

 そんな彼女達に対し、龍兵は何も言う事無くブースに赴くと、プロパテールは問う。


 「貴方が語ってくれた真実。アレには続きがあるんでしょう?」


 最も問われたくない事を問われてしまう。

 だが、龍兵はプロパテールの声と言葉から察した上で返した。


 「その様子だと、お前は気付いてるんじゃないか?なら、俺が答える事じゃない」


 「だとしても教えて。貴方の口から聞きたい」


 真剣な言葉をぶつけられると、龍兵はマグナムリボルバーをブースに置いた。

 そんな龍兵を見ると、アティルーナとザミルは察してシューティングレンジから去った。

 アティルーナとザミルが退室して席を外してくれた事に龍兵は「良い連中だな」そう漏らすと、プロパテールの望みを叶える様に告げる。


 「コレは俺の仮説で私見でしかない。それでも良いんだな?」


 「構わない」


 プロパテールがその言葉と共に要求すれば、龍兵は真実の続きを語る。


 「ヨルダバオトが君を地上に封じた。その後、地上を地獄に変えて600年も続けたのは君への当てつけ……その一言に尽きる」


 龍兵が結論を告げると、プロパテールは沈黙と共に続きを促し、龍兵は望み通りに続ける。


 「ヨルダバオトは君を深く愛していた。だからこそ、その分だけ憎しみが強くなった。それ故に君を君が愛したであろう地上に封じ、その地上を滅茶苦茶にする事で愛憎やら何やらをぶつけ続けた。ソレが今まで続く600年の戦争の真相……ってのが、俺の仮説で私見だ」


 噛み砕いて語れば、プロパテールは沈痛な面持ちになりながらも口を開いた。


 「なら、ソレを食い止める方法は?」


 その問いに対し、龍兵は本心から他人事の様に答える。


 「そこまでは知らねぇし、傭兵の仕事じゃねぇな」


 「なら、ヨルダバオトを殺せば食い止められるの?」


 プロパテールが実の弟を殺すべき対象と見るかの様に愛称で呼ばずに問えば、龍兵はソレをアッサリ否定した。半分だけ……


 「ヨルダバオトの死はスタート地点に立ったに過ぎない。其処からが果てしなく長く、苦行の始まりだな」


 「なら、やる事は変わらない」


 プロパテールが改めて覚悟を決めたかの様に返せば、龍兵は老婆心を見せる様に言う。


 「地上の魔族含めた人間は全員が被害者であり、加害者だ。だからこそ、互いに自らの足で歩み寄って乗り越えるべきだ」


 「介入するな。そう言うの?」


 「君が介入したら、ヨルダバオトとやってる事は変わらないし、余計な歪みが出来ちまう。だからこそ、時間と共に互いが自らの足で歩み寄るのが結果的には確実……ってのが、俺の意見だが、選ぶのは君だ」


 「え?」


 神妙な意見具申が一転するかの様に、唐突に丸投げする様な事を言われたプロパテールが困惑すると、龍兵は気にする事無くさも当然の様に続ける。


 「俺は雇われただけの傭兵だぞ?依頼として君を救出し、ヨルダバオトを殺すのが仕事であって、君の世界を平和にする事は給料に含まれてない。つーか、俺は完全な部外者で赤の他人だから君の世界の問題は君や君の世界の者達で当たるのが筋だろ?」


 龍兵の言葉は正論以外の何者でもない。

 だからこそ、その言葉にプロパテールは言い返せなかった。

 そんなプロパテールに龍兵は告げる。


 「俺は仕事を終えたら日本に帰る。後、君が俺を雇いたいとか抜かしても俺は即拒否する……コレが最後の仕事と決めてるんでな」


 その言葉にプロパテールは本心から言う。


 「貴方、最低ね。好き放題に暴れてシッチャカメッチャカにしたのに、仕事を終えたから帰るって……責任取る気は無いの?」


 「ソレが傭兵ってロクデナシだ」


 龍兵はシニカルに返すと、仕事として問う。


 「答えは予想付いてる。だが、それでも確認はしたい……君はヨルダバオトを殺せるか?」


 龍兵の問いに対し、プロパテールは覚悟を決めた面持ちで告げる。


 「私のせいで600年が失われた。なら、私の手で決着を着けるのが筋……だから、例え弟でも殺す。そして、この馬鹿げた愛憎劇に終止符を打つ」


 「最高の答えだな。じゃ、ヨルダバオトを殺すのは君に任せる」


 「え?」


 またもプロパテールが間抜けな声を上げてしまうと、龍兵は当然の如く答える。


 「俺としてはヨルダバオトの死を見届けられればソレで良いし……つーか、人の獲物を穫る趣味も無いしね」


 「貴方、本当に碌でもないわね」


 「だから、傭兵稼業を続けられたんだ」


 龍兵が涼しい顔で答えれば、プロパテールは呆れる事しか出来なかった。



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