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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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38/42

I want to blame someone, but I only see my own face.


 自室にアティルーナとザミルを引っ張り込むと、龍兵は真剣な面持ちで告げる。


 「御宅等の主は酷い衝撃を受けてしまったせいで、今はちょっと心がとても辛い状態にある」


 その言葉に2人が驚きを露わにしてしまう。それから直ぐに何故?と、視線だけで問えば、龍兵は言葉を慎重に選びながらも正直に答える。


 「彼女が酷い衝撃を受けた原因は俺だ。俺はある事に関する仮説を彼女に教えた」


 龍兵が答えれば、その事が何なのか?アティルーナが問うのは当然だろう。


 「何を言ったのだ?」


 その問いに言葉を挟まなかったザミルであったが、アティルーナと同じ様に知ろうとしていた。

 しかし、龍兵がソレを答える事は無かった。


 「悪いが、ソレは教えられない」


 「何故?」


 普段のおちゃらけた雰囲気が嘘と思える真剣な様子でザミルが問えば、龍兵は内心で面倒臭く感じながらも答える。


 「コレはお前等の主であるプロパテールの問題で、俺が言い触らして良い内容じゃないからだ」


 その言葉にザミルは苛立ち混じりに問おうとする。

 だが、アティルーナはザミルを手を伸ばして制すると、ザミルに代わって問う。


 「貴様が我が主神に告げた事は偽りの主神に関する事か?」


 核心に迫る様にアティルーナが問う。

 しかし、龍兵が答える事はなかった。

 だが、代わりに真剣な面持ちで頼み込んで来た。


 「ソレも答えられない。で、此処からが御宅等を部屋に引っ張り込んだ理由なんだが……この後、御宅等で御宅等の主から目を離さないで欲しい。絶対に目を離さないでくれ」


 その要求は理解出来た。

 しかし、何故?コレが完全に語られないからこそ、ザミルは苛立ちを爆発させる様に問い詰めんとする。


 「その理由を答えなさい!貴方は何を主に言ったの!?」


 ザミルの剣幕は当然と言えるだろう。

 真の主に何を言えば、筆舌しがたい程に耐え切れぬ衝撃を与えられるのか?

 そして、そのせいで主が深く傷付いてしまったのか?

 心からプロパテールに仕え、プロパテールが自分達の産みの親でもあるからこそ、ザミルは知ろうとした。

 しかし、アティルーナは違った。


 「ザミル。ソレ以上問うな」


 「何故よ!?アティはコイツが主神に何をしたのか?知ろうとしないの!?」


 ザミルがアティルーナに矛先を変える様に怒鳴ると、アティルーナは答える。


 「この男が言ったのは恐らくだが、忌々しき叛逆の徒であるヨルダバオトがプロパテール様を裏切るに至った理由だ」


 まるで見ていたかの様にアティルーナがシレッと核心に触れると、ザミルは驚きの余り沈黙してしまう。

 そんなザミルを他所に龍兵が煙草を咥えて火を点すと、アティルーナはザミルに諭す様にして言葉を続ける。


 「この男と同じ考えで、この男の言葉に従うのは正直言って腹立たしい。だが、不愉快な事にこの男の言う通りでもある」


 「どう言う事よ?」


 「言葉通りの意味だ。我等はプロパテール様が知った裏切りの理由を軽々しく知ろうとする事は赦されん。更に言うならば、我等が出来る事はプロパテール様の御身を護ると共に乱心なされぬ様に見守る。コレだけしか出来ん」


 アティルーナは諭す様にして自分の意見も交えた上で、龍兵の頼みの理由を言い当てると、龍兵は煙草を燻らせながら肯定した。


 「すぅ……ふぅぅ……そう言う事だ」


 肯定した龍兵にザミルは理解は出来ても、納得がいかない様子であった。

 そんなザミルと納得は出来ても不快なのを露わにするアティルーナに対し、龍兵は改めて告げる様にして言葉を続けた。


 「今の状況は最悪の一言に尽きる。今、この場をヨルダバオトに襲われたら、ひとたまりも無いまま皆殺しにされちまう……だからこそ、御宅等に願うしか俺の取れる行動は無い」


 龍兵の言う通りであった。

 ヨルダバオトに対抗出来る唯一の存在と言えるプロパテールは、龍兵の告げた真実に心を完全に引き裂かれ、罪悪感と自責。この2つから強烈に苛まれてしまっている。

 それ故に精神的に不安定な状態となり、現時点に於いて戦力として利用する事は不可能。そう断じざる得なかった。

 ソレは同時に組み上げた作戦を延期にせざる得ないと、龍兵は仕方無しに決断する結果にもなった。

 そうした状況を戦を司る女神としてアティルーナは理解すると、腹立たしい気持ちを覚えながらも未だ納得のいかぬザミルを連れ、退室しようとする。

 だが、退室する間際。立ち止まったアティルーナは振り返り、龍兵を睨むように見詰めながら告げる。


 「今後、貴様の生命は穫る事はしない。だが、貴様のした事や貴様への怒りは決して忘れん」


 そう告げると、アティルーナはザミルと共に今度こそ退室した。

 そうして自室に残された龍兵は煙草を燻らせながらベッドに座ると、紫煙と共にボヤいてしまう。


 「なーんで、教えちまったんだろ……」


 心の底から嘆く様にボヤいた龍兵は煙草を燻らせながら、心中で吐露する。


 俺が真実に対する仮説を言えば、パティが壊れるのは目に見えていた。

 本当ならば、完全にすっとボケ続けて何にも知らないと徹するべき所だった。

 だが、俺は喋っちまった。


 「割とガチで余計な事をしたなぁ……」


 心の底から自分にウンザリした様に龍兵は漏らすと、気持ちを切り替える様に今後の事を考え始めた。


 一先ず、パティが立ち直るのを待つしか無い。

 だが、何時迄も待てる訳じゃない。

 ヨルダバオトは此処に気付いて、自らの手で今回の一連の騒動を無理矢理落着させに来る可能性が濃厚。

 ソレが何時になるか?未だ解らない。

 今直ぐかもしれんし、暫く来ないでくれるかもしれない。

 だが、悠長に過ごしては居られない。


 戦略家として思考を巡らせると、龍兵は紫煙混じりに大きな溜息を漏らし、ゲンナリとした様子でボヤいてしまう。


 「ハァぁぁぁ……マージでにっちもさっちも行かなくなった。今仕掛けられたら、マジで死ぬぞ」


 ヨルダバオトは脅威の一言に尽きる。

 何せ、置土産に与えた梱包爆薬が直撃してもピンピンしているのだ。

 恐らく、自分の召喚する銃器では殺せない。

 そう判断した龍兵はミンから提供されたマグナムリボルバーを手に取り、不安そうに見詰めてしまう。


 「こんな豆鉄砲で本当に神様殺れんのかよ?あー……俺がラノベとかアニメみてぇなチート主人公だったらなぁ……」


 本心から創作の主人公みたいな強大な力が欲しい。そう願うと、龍兵は自身に呆れてしまう。


 「って、無いもの強請りしてる時点で負け犬じゃねぇか……だけど、勝ち目は正直言って薄いのもマジなんだよなぁ」


 誰に語り掛ける訳でもなくボヤくと、龍兵は自らが招いてしまった最悪の現状に項垂れてしまう。


 「畜生。誰かを責めたくても俺の顔しか浮かばねぇ……」


 そんなボヤキを漏らすと、スマートフォンが電子音を響かせた。

 龍兵は「出たくねぇなぁ」そうボヤキながらもスマートフォンを手に取ると、電話に出た。


 「何だよ?」


 ぶっきら棒に電話に出ると、ミンは責めるように疑問をぶつけてきた。


 「君らしくないぞ。何故、余計な事を言った?」


 自分の知る傭兵としての龍兵ならば、プロパテールに決して真実を告げる様な事はしなかった。

 だからこそ、ミンは心の底から疑問を覚え、その理由を問うた。

 そんなミンに対し、龍兵は敢えて質問で返した。


 「俺の仮説は正解なのか?」


 「あぁ、残念な事に正解だ。満点をやりたいくらいだ」


 皮肉タップリに肯定すると、ミンは呆れ混じりに言う。


 「何も知らない部外者である男が何処をどうすれば、真相に辿り着く事が出来るんだ?」


 そう問われると、龍兵は素っ気ないながらも正直に答えた。


 「消去法みたいなものだ」


 「何だと?」


 ミンが驚く様に問い返すと、龍兵は淡々と語る。


 「パティにも言ったが、パティ自身を殺してない点が1つ。次に地上を民族と宗教の対立戦争と言う形で600年間ずっと滅茶苦茶にし続けてる疑問点。そして、その地上にパティとパティの断片を封印するという謎……そう言う要素を踏まえた上で考えたら、自然と導き出された」


 語られた内容にミンは驚きの余り言葉を失ってしまった。

 だが、龍兵は気にする事無く続ける。


 「で、本人の口から聞けた事でソレは確信に近付いちまった。その結果が今の有様だ」


 そう締め括ると、ミンは頭と胃に強い痛みを覚えながらも依頼人として傭兵である龍兵に問う。


 「君はこの後はどうするつもりだね?」


 嘘偽りは無しと、言葉から察した龍兵は傭兵として答える。


 「暫く待って、プロパテールが立ち直るのを待つ」


 「何時まで経っても立ち直れなかったら?」


 当然と言える可能性をミンが挙げれば、龍兵はさも当然の様に告げる。


 「だから、俺の中で期限を設ける。そうだな……今から72時間(3日間)だ」


 「何?」


 「今から72時間以内にパティが立ち直れなかったら、俺は強硬手段としてヨルダバオトを直接殺しに行く」


 その答えにミンは本心から尋ねる。


 「正気かね?」


 「正気か?って質問に対して、俺は毎度正気じゃないって答えてるんだが……何でどいつもこいつも同じ事を聞くんだ?」


 龍兵が呆れ混じりにそう返すと、ミンは益々呆れながらも龍兵の判断を受け入れた。


 「ならば、その前に彼女が立ち直る事を祈っておくんだな」


 「俺、神様に祈るって好きじゃないんだよな……まぁ、正月に初詣に行ったりしてるけどさ」


 その言葉に「君らしいな」と、電話の向こうでミンが苦笑いしてしまう。

 そんなミンを他所に龍兵は、ふと気付いた事を思い出す様にして独り言る。


 「そういや……地球の神話でも神様達の近親相姦ってありふれてるな。後、権力の簒奪とかも」


 ミンに言う訳でもなく、そう漏らした龍兵は呆れてしまう。


 「異世界でも神様のする事って変わらねぇのかよ……おい、ミン。お前の言う通りだな」


 「何がだね?」


 「"神様も考えるアホ"だって点だよ……その御蔭で俺はこんなクソ仕事する羽目になってる」


 ウンザリとした様に龍兵が愚痴ると、ミンは淡々と返した。


 「君は私から前金を受け取った。ならば、キチンと契約を果たせ」


 「果たしてやるから、標的を殺れるマトモな道具寄越せ……あのアホみてぇなリボルバーじゃない、ちゃんとした奴を寄越せ」


 そう言い返せば、ミンは何も言わずに電話を切った。

 そうして電話が終わると、龍兵はフィルター近くまで燃えていた煙草を灰皿に押し付けて消す。

 そして、ベッドに倒れる様にして横たわると、ウンザリとした様子で天井を眺めるのであった。



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