表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/42

書類は偉大なり


 プロパテールが宮殿に仕掛ける10分前。

 龍兵は力の大半を取り戻したプロパテールによって一次的に天使となった状態で、監獄の事務所へ赴いていた。

 外来事務所に赴いた龍兵は人の良さそうな営業スマイルを浮かべ、身分証と主神のサインの入った命令書と許可書を差し出しながら告げる。


 「どうも、罪人アティルーナと罪人ザミルに事情聴取する為に来ました」


 軽いノリなれど、真剣な面持ちで告げる龍兵を職員達は訝しむ。

 だが、身分証初めとした書類は全て本物。

 特に命令書と許可書にある主神直筆のサインという威光は偉大であるからこそ、アッサリと天使に変装してる龍兵を中に入れた。

 看守の天使に導かれる間、龍兵は沈黙を保つと共に周辺を然りげ無く見廻していく。


 思い出すなぁ……

 あるクソバカ野郎を脱獄させろって依頼受けたのを。

 あん時はアクシデントでバレて、刑務所は蜂の巣を蹴飛ばした様な騒ぎ。

 オマケに暴動も起きた。

 アレはあれで死ぬかと思ったわ……


 仕事で刑務所に押し込み強盗をした時の事を思い出すと、龍兵は心の中で「あの仕事、報酬と釣り合わなかったな」そんな事をボヤきながらも歩みを進めていく。

 暫くの間、沈黙が支配した。

 そんな沈黙を破る様に看守は告げる。


 「此方でお待ち下さい。今、件の囚人を連れてきます」


 案内された部屋で龍兵は静かに待つ。

 煙草を吸いたくなった。

 だが、未だ紙巻き煙草が存在してない世界で吸えば、直ぐに自分の事がバレてしまう。

 それ故に吸いたいのは堪える。

 そんな喫煙欲に少しだけ苛立ちを覚えながらも、龍兵はポーカーフェイスで静かに待ち続ける。

 暫くすると、大きな板状の枷で両手と首を戒められ、両足は足錠で縛られて小さな歩幅で歩くアティルーナとザミルが見えて来た。

 2人は自分達を尋問するだろう天使の姿をする龍兵見た瞬間、憎悪と憤怒の籠もった鋭い視線を向ける。

 そんな2人を看守が龍兵の向かいに座らせると、龍兵は看守に外すように命じた。

 そうして2人に睨まれると、龍兵は漏らす。


 「察するに、俺の正体は気づいてる。そんな所か?」


 その言葉にアティルーナは沈黙。

 しかし、ザミルは違った。


 「狡猾な狼さんは何で此処に居るのかしら?」


 口調は普段と変わらぬ。

 だが、気配と面持ちは真剣そのもの。

 そんなザミルに対し、龍兵は少しだけおちゃらけた様子で問い返えす。


 「何でだと思う?」


 龍兵の問いにザミルは苛立ちと不快。それに怒りの籠もった鋭い視線をアティルーナと同様に向け、沈黙で返した。

 すると、龍兵はアティルーナとザミルに当然と言える疑問をぶつけた。


 「なぁ、1つ聞いて良いか?」


 「何かしら?」


 ザミルが返すと、龍兵はその疑問をぶつけた。


 「俺の正体に気付いてる。なのに、何で大声で看守を呼ばないんだ?」


 その問いに2人は沈黙してしまう。

 実際問題として、今目の前に龍兵と言う怨敵が居る。

 そして、大声で叫んで看守を呼べば、膨大な被害と引き換えに龍兵を殺せる。かもしれない……

 しかし、2人はそれを何故かしなかった。

 だからこそ、龍兵は気になって疑問に感じた。

 だが、疑問を覚えてはいたが、答えは薄々察している。

 それ故に龍兵は見透かす様にして言葉を続け、問うた


 「俺から真実を聞き出したい。だから、看守を呼ばない……違うか?」


 その言葉にアティルーナの表情が強張り、龍兵を睨む視線が強くなる。

 そんなアティルーナとは対照的にザミルは素直に認めた。


 「その通りよ、狼さん……それで?貴方は教えてくれるの?」


 「そうだな……俺の指示に従って脱獄してくれんなら、俺は真実を知る張本人に会わせてやる事を確約する」


 龍兵が正直に答えると、今まで沈黙を貫き続けていたアティルーナが口を開いた。


 「貴様が嘘を言ってない保証は何処にある?」


 アティルーナの目は猜疑心に満ちていた。

 己は目の前に居る男を捕まえるどころか、殺す事すら出来ずに逃がしてしまった。

 その失敗を理由に、仕えていた主神からは敵と内通したと言う嫌疑を掛けられ、こうして獄に繋がれている。

 そして、失敗と嫌疑。その2つの理由が獄に繋がれる理由ではない事も勘づいてるからこそ、アティルーナは何を信じて良いのか?解らずにいた。

 そんなアティルーナに龍兵は当然の様に言う。


 「人間生きてたら、裏切られたり、切り捨てられるなんて良くあるぜ?で、アンタも同じ様に切り捨てられちまった……不用意に秘密を知っちまったから」


 「貴様!」


 アティルーナが声を張り上げると、警棒を持った看守達が駆け込んで来る。

 そんな看守達を慣れた様子で制し、戻る様に促した龍兵は怒りと苛立ちに苛まされるアティルーナを気にする事無く、話を続ける。


 「前置きが長くなったな……俺の目的は1つ。お前等を脱獄させる事に尽きる」


 「何だと?」


 アティルーナが訝しんで返すと、ザミルは問う。


 「私達を脱獄させる?何を企んでるの?」


 「それは後のお楽しみって奴だ。さて、改めて問うぞ……脱獄したいか?それとも残るか?俺としてはどっちでも良いぞ」


 龍兵が問うと、ザミルは即断した。


 「貴方の誘いを受けるわ。アティ、貴女は?」


 その言葉にアティルーナは迷い、悩む。

 すると、ザミルは手を差し伸べる様に誘う。


 「アティ、貴女も一緒に来て」


 「何故だ?」


 「コイツは多分、私達は知らない。でも、私達が知らなきゃいけない事を沢山知ってる筈……だから、貴女も来て」


 ザミルの誘いにアティルーナは決断出来なかった。

 そんなアティルーナに対し、龍兵は冗談交じりに言う。


 「もしも来てくれるんなら、俺を殺せるチャンスが出来るかもな」


 その言葉にアティルーナは耳を疑ってしまう。勿論、ザミルも正気を問うような目を龍兵に向けていた。

 しかし、龍兵は気にする事無く平然と続ける。


 「俺の誘いに乗って、俺が嘘を吐いたと判断したら、俺を殺して今まで死んだ連中の鎮魂に当てれば良いだけの話だろ?」


 「なら、そうじゃなかったらどうするの?」


 ザミルがアティルーナの代わりに問えば、龍兵は同じ様に平然と他人事の様に答えた。


 「その時は勝手にしろ。俺が口出しする事じゃねぇ……」


 龍兵の言葉にザミルは怪訝な面持ちを浮かべてしまう。

 だが、アティルーナは違った。


 「良かろう。貴様の甘言に乗ってやる。だが、貴様の言葉が偽りならば、その首を以て喪った者達への鎮魂とする」


 覚悟を決めた面持ちで告げられれば、龍兵は愉悦と悪戯に満ちた。それこそ、特攻野郎Aチームのリーダーの如き満面の笑みを浮かべた。


 「良い答えだ。じゃ、早速だけど出るか」


 2人に向けて言うと、龍兵は看守を自ら呼んだ。

 看守が警戒心を露わにやって来ると、龍兵は用意していた偽造書類を差し出し、命じる。


 「この二人を宮殿へ移送します」


 柔らかな丁寧語と、丁寧な振る舞い。それに士官の厳格さを以て看守に命令書付きで要請すれば、その後はスムーズに進んでいく。

 2人が厳重に戒められたまま頑丈そうな護送車に乗ると、龍兵も責任者として同乗。

 それから直ぐに護送車が走り出した。

 暫くの間、走ってると護送車は止まる。

 程なくして銃声が響いた。


 「貴様の。否、貴様の協力者の仕業か?」


 アティルーナが問う。

 だが、龍兵は呑気に煙草を燻らせるだけで何も答えない。

 すると、護送車の扉が開いた。

 護送車を開けたのは、バラクラバで顔を覆い隠す特殊部隊の如き出で立ちをした兵士達であった。

 仲間が自動小銃を手に周囲を警戒する中。彼等は慣れた様子でアティルーナとザミルを戒める足錠をエンジンカッターで切断していく。

 そんな様子にアティルーナとザミルはコレを創り上げた龍兵に驚きの視線を向けると、龍兵は煙草を呑気に燻らせながら紫煙混じりのボヤきを漏らした。


 「ふぅぅ……やっぱ、書類ってのは偉大だな。こうして簡単に事が運べるんだから」


 諜報機関へ出向し、スパイとして活動してた頃を思い出す様に漏らした龍兵は足の戒めを解かれた二人を連れ、兵士達と共に悠々と脱出するのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ