600年ぶりに……
真の主神たる彼女……プロパテールは宮殿の前に佇んでいた。
彼女は悠然と歩みを進め、固く閉ざされた城塞の巨大な城門の前に立つと、武装した戦天使達が警戒心を露わに取り囲んでいく。
そんな戦天使達の1人が誰何した。
「止まれ!貴様は何者だ?」
誰何されたプロパテールは既に今の宮殿の主に気付かれてる事を察すると、声を張り上げ宮殿どころか天界中に轟かせる。
「我が名はプロパテール!!我こそ真の主神!!主神を偽りし叛逆の徒ヨルダバオトを打倒せんとする者である!!」
その言葉に全天使とアイコーン達が騒然としてしまう。
当然、プロパテールを取り囲む戦天使達も驚きを露わに浮き足立つ。
そんな戦天使達へ向け、プロパテールは威厳と共に命じる。
「道を開けよ!!我の道を阻むならば容赦せん!!」
プロパテールが容赦しない事を宣言する。
だが、戦天使達は玉座の主神と此処に納めた宝珠を護る為、刃向かった。
戦天使達がプロパテールを討たんと刃を振るう。
それに対し、プロパテールは腕を軽く振るうと、戦天使達は強烈な衝撃波と共に後ろへ飛ばされ、バタバタと倒れていく。
そうして自分を取り囲んだ戦天使達を殺す事なく撃退すると、プロパテールは目の前の城門へ手を翳した。
その瞬間、巨大で頑丈な城門は粉々に砕け散り、入り口が出来上がる。
そんな状況に戦天使達は直ぐに展開し、プロパテールを名乗る侵入者を撃退せんと攻撃を仕掛け始めた。
天使達から放たれた無数の魔弾はプロパテールに当たる前に消失。
その光景に戦天使達が困惑すると、他の戦天使達は刃を以てプロパテールを倒さんとする。
そんな戦天使達を先程と同様に強烈な衝撃波で撃退すると、プロパテールは涼しい顔で歩みを進めていく。
流石はアティルーナが鍛えてるだけある。
皆、真面目に職務として挑んでいる。
自分に手向かう戦天使達に対し、プロパテールは怒りは無かった。
寧ろ、職務に忠実で仕える主の為に命を賭して挑まんとする姿勢に賞賛していた。
貴方達に罪は無い。
貴方達は騙されているだけの被害者。
だから、殺さない。
本当なら簡単に消し飛ばす事も出来るけど、したくないからしない。
それ故にプロパテールは殺す気は皆無。
そして、そんなプロパテールの覚悟と決意を作戦決行前の打ち合わせで聞いた龍兵はソレを否定しなかった。
「君がヨルダバオト以外を殺したくないなら、それでも別に構わない」そう返された時は意外だったし、正直言って驚いた。
てっきり「敵なら殺せ」って言うスタンスを押し付けて来ると思ってたから、余計に。
でも、龍兵は「殺さずに済むなら、その方が良い」と、言ってた。
龍兵との遣り取りを思い出すと、プロパテールは手向かう戦天使達を蹴散らし、全ての攻撃を無力化させながら進み続ける。
戦天使達は刃が立たぬ。ソレを自覚しながらも、護る為にプロパテールに刃向かう。
自分に刃向かう戦天使達にプロパテールは言葉を一切掛けない。
ただ静かに淡々と撃退するだけで殺さず、先へと進む。
そうして戦天使達を蹴散らしながらも、時間を掛ける事無く玉座の間まで来ると、プロパテールは龍兵を真似て扉を蹴破った。
そして、玉座の間に足を踏み入れたプロパテールは玉座に座する偽りの主神たる弟……ヨルダバオトを見詰め、語り掛ける。
「久しぶりねヨル。600年ぶりかしら?」
にこやかに語り掛けるプロパテールにヨルダバオトは答えない。
だが、プロパテールは気にせずに言葉を続ける。
「あら?大好きなプロパテールお姉ちゃんに会えたのに嬉しくないの?ヨル、私の事好きだったじゃない」
にこやかに語り掛け続ける実の姉たるプロパテールに対し、ヨルダバオトは苛立ちと怒りを覚えていた。
だが、未だに沈黙を貫き続ける。
そんなヨルダバオトをプロパテールは気にする事無く問いかけた。
「どうしたのヨル?舌を無くしたのかしら?」
その問いでヨルダバオトは漸く口を開いた。
「我が姉よ、その喋り方は何だ?まるで……」
「まるで、貴方の大嫌いな龍兵みたいだって?仕方ないじゃない、私は貴方に600年も闇の中に封じられてたんだから……今の喋り方を学ぶ為、身近な相手から学ぶのは当然よね?」
悪戯っぽい笑みと共に答えれば、ヨルダバオトの苛立ちと怒りは増していく。
そんなヨルダバオトにプロパテールは本心も込めて尋ねる。
「ねぇ、ヨル……600年も好き放題してた癖に、この程度の世界しか出来ないの?」
「何だと?」
「600年もあれば、功罪は兎も角として時代は大きく歩みを進められる。それなのに人々は歩みを進めてない。それどころか、人々は絶望で立ち尽くしてるだけ……無能も此処まで来たら、逆に尊敬出来るわよ?」
ヨルダバオトの中で怒りと共に憎悪の炎が激しく滾っていく。
だが、プロパテールは気にせずに言葉を続ける。
「ねぇ、ヨル。私は正直言って、怒ってる。それはもう滅茶苦茶にバチギレしてると言って良いわね」
其処で言葉を留めたプロパテールは改めて告げる。
「貴方如きに裏切られた事。600年も私に扮して好き放題にした事。でも、一番赦せないのは私自身に対してね……」
「何だと?」
「当然でしょう?600年前の私が不甲斐なかったからこんな事になってしまったんだから……だから、アンタを八つ当たり兼ねて裁く事にしたの」
その言葉と共に不敵な笑みを浮かべ、見様見真似で龍兵のファイティングポーズを取ったプロパテール。
そんなプロパテールに対し、ヨルダバオトは玉座から立ち上がると、別れの言葉と共に放つ。
「ならば、永遠の眠りにつけ」
その言葉と共にプロパテールの居た所が辺り一面ごと消し飛んだ。
プロパテールの姿は一片たりとも無い。
だが、プロパテールは死んでなかった。
「でも、今じゃないの。首を洗って待っててね♡次は必ず殺すから」
そんな言葉と共にプロパテールは姿を消していた。
アッサリと逃げたのだ。
そんなプロパテールに対し、ヨルダバオトは怒りや憎悪。それに強い苛立ちと言った複雑な想いを抱きながらも疑問を覚える。
何故、こんな簡単に退いた。
俺の知る姉上ならば、此処で私を殺そうとし……
其処で思い出した。
自分が最も嫌い、殺したいリストのトップに未だに残り続ける男を……
「まさか!?」
その言葉と共に急いで転移する。
プロパテールの力の断片を封印してる場所へ……
一瞬の内に転移し、其処へ移動を果たすと、其処には2つの宝珠を胸元にやってるプロパテールの姿があった。
「見てヨル……おっパイ」
その悪巫山戯にヨルダバオトはブチギレ、感情のままに消し飛ばす。
だが、プロパテールは既に消えていた。
怒りで震えるヨルダバオトに対し、プロパテールは姿を見せぬまま言葉を残す。
「酷いわね。でも、お陰で貴方を殺すのに躊躇う理由が無くなったから、首を洗って待っててね♡また、来るから」
その言葉にヨルダバオトは強烈な敗北感を覚え、立ち尽くしてしまうのであった。




