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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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閑話:査問


 古株の彼は主神の前に立たされ、後任のヴァエトールの死に対して詰問していた。


 「貴様の言い分を聞かせよ」


 そう問われると、古株の彼は涼しい顔で答える。


 「ヴァエトール様は我等を率いて逃げる滞在人アオキリュウヘイを追跡し、妥当する為に先陣を切られた所を卑怯かつ卑劣にも罠が作動し、目の前で成すすべも無いまま討ち死になされました」


 嘘は言わず、事情だけを淡々と答えると、今度は別の事を問うた。


 「では、貴様とヴァエトールが何度も口論してたのはどうか?」


 その問いに対しても、古株の彼は正直に答える。


 「確かに口論となりました。私は再三に渡って意見具申を繰り返し、ヴァエトール様はソレを拒絶する。そんな形になります。その時の遣り取りは書記官が記録してる筈であります……御確認を」


 淡々と事実を述べ、主神に対して嘘偽りを申すつもりは無い。

 そんな態度を貫く彼に主神は問う。


 「では、此度の大失態をどう弁明する?」


 「我等が大罪人を逃したのは事実。ソレが理由で裁きを下されるならば、甘んじて受けましょう……ですが、申し開きが赦されるならば、討ち死になされたヴァエトール様には大変申し訳ないことでありますが、ヴァエトール様の無能と言わざる采配によって足が引っ張られたと言わせて戴きたい」


 その答えに主神が「ほう」と、興味を持って話を続ける様に促せば、彼は語る。


 「ヴァエトール様は冒険者達によって回収された断片を餌に大罪人を待ち構える作戦に拘泥しておりました。私や皆は大罪人が過去にしてきた事を元に手口を愚考し、それは成功する見込みが限りなく低い事を意見具申しました」


 其処で言葉を切った彼は一息いれると、更に言葉を続けていく。


 「ですが、先程も伝えました通り、ヴァエトール様は頑なにソレを拒絶なされました。無論、その意見具申には大罪人が動きを見せてない間に全ての宝珠を回収し、天界へ移送するべきという事も含まれておりました」


 「それをヴァエトールは全て拒絶した。そういうのか?」


 主神が鋭い視線と共に問えば、彼は肯定する。


 「その通りで御座います。その時の遣り取りも書記官が記録してる筈で御座います」


 その時の記録に目を通し、確認する為に主神は恐怖の色を浮かべる書記官から記録を受け取る。

 記録を受け取った主神が目を通してる間、古株の彼は直立不動の姿勢を保ったまま沈黙を貫いていく。

 暫くして記録に目を通し、嘘偽りが無い事を確認し終えた主神は告げる。


 「貴様の言葉に嘘偽りが無い事は解った。それ故に命ずる……貴様が新たな後任となり、大罪人を討ち取れとは」


 その命令を受領すると、彼は意見具申する。


 「拝命は承ります。しかしながら、申し上げます」


 「何だ?」


 不服か?そう言わんばかりの問いに彼は忌憚のない意見を申し上げる。


 「アティルーナ様ならば、確実に大罪人を見事に討ち取れます。あの御方は同じ轍を踏む愚者では御座いません……それ故にお願い申し上げます。どうか、アティルーナ様を解放し、我等の主として復権して戴けないでしょうか?」


 本心からアティルーナの復権を望み、更にはアティルーナならば確実に大罪人アオキリュウヘイを討ち取れる。

 そんな彼の乞い願う言葉を主神は斬り捨てた。


 「それはならん」


 そう斬り捨てると、主神は問われる前に理由を語る。


 「アティルーナには未だあの忌々しき大罪人と内通した嫌疑が晴れておらぬ。貴様の言葉通りならば、アティルーナは失敗しない……それなのに失敗したと言うのは、奴と内通している根拠として充分であろう」


 その言葉に反論したかった。

 何なら、怒鳴り返しもしたかった。

 しかし、それをすれば自分ばかりか共にアティルーナという主の下で戦場を駆け抜けて来た戦友達の立場が危うくなるばかりか、危険が及ぶ。

 そう判断したが故に彼は沈黙せざる得なかった。

 そんな彼に主神は告げる。


 「だが、忌々しき大罪人と叛逆した我が弟を見事討ち取り、アティルーナの身の潔白を晴らす事が出来れば、我はアティルーナを解放する。そして、再び貴様と貴様の戦友達の主として復権させる事を確約する。勿論、名誉も回復させよう」


 その言葉を言質として取ると、彼は握り拳に血を滲ませながら改めて後任の命を受領した。


 「必ずや!必ずや偉大なる主神の望みを果たしてみせます!!」


 その言葉に主神は笑みを浮かべると、彼は書記官を伴って退室した。

 そんな彼の姿が無くなると、主神を偽る彼……ヨルダバオトは忌々しいと言いたげに舌打ちする。


 戦バカめ。

 だが、ヴァエトールの無能ぶりと比べれば、有能と言っていい。

 ヴァエトールを見事に罠に嵌め、傍から見れば不幸な死を演出出来るだけの手腕を踏まえるならば……


 ヨルダバオトは古株の彼が目論見通りにヴァエトールを暗殺した事に気付いていた。

 だが、敢えてソレには触れなかった。

 自分がまた下手な後任を据えて非業の死を迎えるくらいならば、あの古株の彼に全てを任せた方が効率的と考えたが故に。

 しかし、それでも問題が無い訳ではない。


 奴があの忌々しい男と我を裏切りし姉を討ち取る。

 それは、我の600年守り続けた秘密が白日に晒される事を意味する。


 「ならば、我が直々にこの手で全てを無に帰せば済む話だ」


 決断する様に漏らすと、偽りの主神たるヨルダバオトは静かに大罪人と姉が来るのを待つのであった。




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