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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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30/42

偶にはサプライズも悪くない


 全力疾走して伏せた後。龍兵はまたも走っていた。

 理由は簡単であった。


 アティルーナの部下達は超の付くレベルで精鋭。

 なら、階段吹っ飛ばして封鎖しても何処かしらに穴開けて突入して来ると見て良い。

 指揮官が足を引っ張ってくれると思ったが、向こうの下士官に飛び切り面倒臭い奴の扱いが上手い優秀なのがいると見て良いなコレは……


 龍兵の予想は大半は当たっていた。

 しかし、致命的な事にもう1つの点……その下士官が上手く載せてフラッギング。即ち、上官殺しを上手い具合に自分を利用し、成功させた点までは読めなかった。

 だが、それでもやる事は変わらない。


 今は時間を無駄に出来ない。

 連中が突入する前にパティと合流する。

 で、ブツを回収してとっととズラかる。

 それしか、生き残る方法は無い。


 それ故に走る。

 2度目の異世界召喚となる以前、一度目の異世界から帰還した後も傭兵時代の体力編成を続け、更には若さという強大なバフを活かして走り続ける。

 手に5キロ近いM203グレネードランチャー付きのMk18を持ち、重いバックパックを背負ったまま走り続ける。

 そうして走り続けていると、走ってくるプロパテールの姿があった。


 「パティ!何で戻って来た!?」


 合流した後、直ぐに龍兵が問えば、プロパテールは宝珠を見せながら応える。


 「宝珠を手に入れた!」


 「なら、さっさとズラかろう」


 そう返した直後。自分達の後ろで天井が崩れ、武装した戦天使達が飛び降りて来た。


 「走れ!!」


 龍兵が直ぐに叫べば、プロパテールは宝珠を手に来た道を戻る様に急いで駆け出す。

 そんなプロパテールを援護する為、龍兵は降り立った戦天使を撃つ。

 サプレッサー越しの静かな銃声と共に戦天使達が倒れると、龍兵は先に駆け出したプロパテールを追う様に走り出す。

 そんな龍兵達が自分達の開けた穴から遠ざかると、指揮官代行を務める古株の彼は部下達と共に降り立って命じる。


 「後を追え。罠の警戒も怠るな」


 その言葉と共に今の段階で降り立った戦天使達は龍兵達を追跡する為、駆け出す。

 それから他の天使達も降り立ってくれば、指揮官代行として古株の彼は命じる。


 「他の箇所にも穴を開け、兵を送れる様にしろ。戦力を増強し、此処で奴を仕留める」


 その命令に反対する者は居なかった。

 古株の彼の意思と共に他の箇所でも穴がブチ抜かれ、龍兵の居るフロアへ兵が送られ、戦力が順次増強されていく。

 そうして、古株の彼は戦力の逐次投入を進め、龍兵を狩らんとする。

 そんな天使達に対し、龍兵は遅滞戦闘を繰り広げて居た。

 手にするMk18をセミオートで断続的に撃つ。

 だが、狙うのはバイタルパートの様な急所ではなく脚であった。

 殺さない理由は博愛主義に目覚めたからではない。

 敢えて殺さず、負傷させる事に留める事で保護の為に後送の為の人員を割かせ、自分達への追求を和らげる。

 そんな冷徹な計算からであった。

 やって来る天使達の脚を撃って負傷させ、追跡を断念させる遅滞戦闘を繰り返しながら龍兵はプロパテールの後を追う。

 そうして、ファルサルまで来ると、亡霊達。否、亡霊の軍勢が姿を見せた。

 彼等は龍兵に先へ行け。プロパテールと共に逃げろ……そう命ずると、武器を手に突撃を始めた。

 そんな亡霊達に少しだけ感謝の気持ちを持つと、その意志を貫く為に全力で走り出す。

 龍兵が走り出すのを他所に突撃した亡霊達は、やって来る天使達と激しい戦いを繰り広げ始めた。

 古株の彼はソレを知ると、直ぐに天使達を退却させて戦力を整え直す事となる。

 そうしてファルサルに残る亡霊達が時間を稼ぐ中、プロパテールと合流した龍兵はミンの開いたポータルで脱出。

 そして、亡霊達を一掃してファルサルに辿り着けば、戦天使達と古株の彼は敗北をした事に歯噛みするのであった。


 「首尾は?」


 帰って来た龍兵とプロパテールにシガリロを燻らせるミンが問えば、プロパテールは明け渡された宝珠を見せる事で返答とした。

 そんなプロパテールを他所に煙草を咥えていた龍兵は火を点すと、悪戯を思い付いた子供の様に紫煙混じりにミンへ尋ねる。


 「お前の首尾は?」


 「見ての通りさ」


 その言葉と共にミンが後ろ手に隠していた宝珠を見せると、プロパテールは訳が解らずに困惑してしまう。


 「え?何で彼が宝珠を持ってるの?」


 困惑するプロパテールと悪戯を思い付いた子供の様な顔で煙草を燻らせる龍兵を見ると、ミンは呆れ混じりに言う。


 「教えてなかったのか?」


 「いやぁ、偶にはサプライズも悪くないと思ってな」


 涼しい顔で返し、煙草を吸う龍兵にプロパテールは尋ねる。


 「どういう事?」


 「すぅぅ……ふぅぅ……コレは俺も後から知ったんだが、ミンは君の為に手を打った」


 その答えにプロパテールは宝珠がもう1つある理由を掴めなかった。

 そんな彼女にミンは直接解説する。


 「宝珠は未だ冒険者達の手に有り続けた。だから、折角なんで買い取った。買った人間は私の用意したスタッフで、買い取った後はこうして私の手にある……それだけの事だよ」


 その説明で理解は出来た。

 だが、2人を何て言えば良いのか?プロパテールは解らなかった。

 感情的にも複雑な気持ちになってすらいる。

 だが、龍兵は涼しい顔で煙草を吸ってプロパテールに気にせずに告げる。


 「結果的に無能な指揮官のお陰で、2つもゲット出来たんだから気にすんな。そんで?その無能な指揮官はどんな面でキレ散らかしてる?」


 愉快そうな様子で龍兵はミンに問う。

 だが、返ってきた答えは予想から少し外れたモノであった。


 「アティルーナの後任は既に死んでるよ」


 「はい?」


 ミンの答えに龍兵が困惑気味に言葉を返すと、ミンは語る。


 「アティルーナの副官と言うか先任に当たる古株の下士官が君を利用して、フラッギングした」


 解りやすく死因を語るミンであったが、龍兵は益々困惑。何なら、混乱してしまう。


 「訳が解らん。俺、その後任殺した覚えないぞ?つうか、顔も合わせてねぇのに俺が殺した?何で?何で死んでんの?」


 傭兵として立ってる時は滅多に感情的にならぬ龍兵であったが、今は素の龍兵と言う人間として困惑し、混乱を露わにしてしまう。

 そんな龍兵をプロパテールが珍しく思ってると、ミンはフラッギングの内容を語った。


 「君、時間稼ぎの為に階段爆破したろ?」


 「した。爆破した。ついでに周りの壁も爆破したわ」


 階段の爆破を問われ、ソレを肯定した龍兵にミンは言葉を続ける。


 「その爆破に巻き込まれる形でヴァエトールは死んだ。あっという間にペチャンコに潰れて、残ったのは左手だけだ」


 「はぁ?間抜け過ぎねぇか?」


 「そうなる様にアティルーナの部下達の1人で古株の古参が仕向けた。傍から見れば、不幸な事故という形でね」


 ミンからフラッギングの真相を聞くと、煙草を燻らせてた龍兵は呆れてしまう。


 「マージか……天使とか神様にも上官殺しあるのかよ……マジで人間と変わらねぇな。しかも、傍から見たら俺の仕掛けた罠に掛かったって言う不幸な事故にしか見えない形で処理とかタチ悪過ぎて草枯れる」


 思った事をそのまま口に出してボヤく龍兵は煙草を吸うと、納得した様子でもあった。


 「だから、階段封鎖した後の動きが妙に滅茶苦茶良かったのか……てっきり、無能を上手く乗せてコントロールしてたかと思ったが、まさかのフラッギングとはなぁ……」


 でも、呆れはした。

 そんな龍兵をプロパテールが珍しそうに見ると、ミンも珍しそうにしながら言う。


 「君もフラッギングした事はあるんじゃないのかね?」


 その問いを龍兵は本心から否定した。


 「した事無いし、しねぇわ……そりゃあ、ブッ殺してぇって上官やら将校は何人も居たよ?居ましたよ。でも、大概は格闘訓練の時とか格闘のスパーでボッコボコにしたり、訓練の時に倒すって形で合法的にボッコボコにして鬱憤は晴らして気が済んでるから殺さねぇよ?」


 感情的に素の自分を見せる龍兵の言葉にプロパテールは心の底から驚くと、ミンはある事を触れた。


 「外人部隊時代。君が伍長の頃は?」


 過去の事件を触れられてしまうと、龍兵は正直に事件の事を語る。


 「アレは初めての派兵だった。で、俺は伍長に成り立てで、その死んだ将校も初めての派兵だった」


 「それで?」


 「その将校は毎度喧しいんだ。特に敬礼は必ずしろしろ五月蝿かった。そんで、俺は報告する事があったから敬礼した」


 其処で言葉を切って煙草を燻らせ、一息付いた龍兵は語る。


 「そしたら、そのバカが目の前で脳味噌ブチ撒けて死んだ。敵のスナイパーによる狙撃って形でな……コレが初めて目の当たりにした他人の死だったよ」


 遠い目をして昔話をしてくれた龍兵にプロパテールは何と言うべきか?解らなかった。

 だが、ミンは愉快そうに尋ねる。


 「本当の所はどうなんだね?狙ったんじゃないのか?フラッギングを……」


 本当の事を言え。

 そう問うミンに龍兵は正直に答えた。


 「コレさ、当時も色んな奴に言ったけどフラッギング狙ってねぇのよ。マジで狙ってないし、そんな意思も意図も無い。ただ、面倒臭いバカ将校を喧しくさせたくねぇから敬礼したってだけなんだよ……」


 龍兵は本当にフラッギングを狙ってなかった。

 そんな真相を知ると、ミンはつまらなさそうにする。


 「何だ、君の事だから狙ったと思ったんだが、違うのか……」


 「あのさぁ、狙わねぇよ。つーか、下士官ならキチンと将校の補佐して然るべきだし、指導やら何やら必要ならキッチリ指導して改善点を挙げる。それに間違えた指揮とかに関しても意見具申をしたり、コッソリ現場に根回ししてリカバリー図れる様にするも下士官の仕事」


 其処で一息入れると、龍兵はハッキリと告げる。


 「だからこそ、フラッギングは絶対に許されない。ソレ以前に仲間を平然と殺せる神経を疑うぞ……確かに殺したいくらいムカつく気持ちはあるし、その感情は否定しないけど。実際に行動に移すのは以ての外だし、論外だ」


 そんな答えを本心から出す。

 龍兵の意外と言える高潔な一面にプロパテールは信頼を覚えると、ミンはからかう。


 「アティルーナが聞いたら感動のあまり涙を流してくれそうだな」


 「そのアティルーナだが、今も監獄に居るんだな?」


 龍兵が思い出した様に問えば、ミンは肯定する。


 「今も収監されてる。ザミルも同様だ」


 「なら、次はアティルーナとザミルを脱獄させる。予定通りにな……」


 龍兵が今後の予定として告げると、ミンは突如、自分のスマートフォンを確認し始めた。

 確認しながらミンは情報を共有する為に告げる。


 「残り2つの宝珠が回収された。ヴァエトール死後の代行を務める古株の彼の命で……その際、私に買い取られたブツが消えたのもバレてる」


 そんな報告を聞くと、龍兵は当然の様に漏らす。


 「そりゃ、そうなるわな……」


 「何故?」


 プロパテールが問うと、龍兵は煙草を燻らせながら語る。


 「結果的に俺に半分以上盗まれてる。コレ以上の強奪を阻止する為、回収。で、全てを自分達の手元で管理すると共に俺達を全力で迎え撃つ……要するに本腰を入れて、俺達を殺そうって考えにシフトしたってだけの話だ」


 「対応策はあるの?」


 プロパテールが当然の疑問をぶつければ、龍兵は当然の様に答える。


 「ある。先ずは君。次にアティルーナとザミル……この3つが俺の手元に揃えば、面白い具合に展開が進む」


 その答えにプロパテールは覚悟を決めた面持ちで返した。


 「貴方が何を企ててるのか?私は解らない。でも、その策謀がヨルを、ヨルダバオトを討つ為に必要な布石だと言うなら私を利用する事も含めて構わない。その代わり、私も貴方を利用する」


 そんなプロパテールに龍兵は「覚悟を決めた女はおっかないんだよな」そう漏らすと、口元に笑みを浮かべる。

 龍兵とプロパテールを見たミンは満面の笑みと共に言う。


 「互いに互いを利用する。実に素晴らしい健全な関係だな」


 他人事の如く賞賛するミンに対し、龍兵は成功報酬に触れた上で要求する。


 「お前は俺が依頼を果たしたらキッチリ報酬払え。日本に帰還させるのにプラスして、俺に付与されてるチートの類は全て取り除けよ……ソレが俺への報酬だ」


 「良いだろう。君がキッチリ成功させてくれたら、私は喜んで報酬を支払おう……予定よりも早く進んでるのも加味したボーナスも込みでね」


 口約束とは言えど、ミンが報酬の支払いを快諾。

 そんなミンに龍兵は「その言葉忘れんなよ」そう釘を刺すと、静かに煙草を燻らせるのであった。



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