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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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ファルサル


 ヴァエトールが一向に現れぬ大罪人……蒼木龍兵が姿を見せぬ日が10以上も過ぎ、完全に焦れた頃。

 冒険者達による宝珠確保と言う、アクシデントに対して動きが起きた。

 その日々までの間。宝珠は冒険者達一党の魔導師が持ち続け、ソレをヴァエトールの部下達である天使達が複数箇所で監視。

 そして、その中で起きた。

 魔導師である彼女は宝珠が何なのか?結局の所、解らなかった。

 勿論、自分よりも優れた魔導師にも見せて意見を求めもした。

 だが、宝珠が何なのか?結局解らない。

 それ故、魔導師である彼女は見慣れぬ人物からの商談に応じた。

 商談の内容は単純。宝珠を買い取りたい。

 コレだけであった。

 魔導師の彼女は仲間と相談させて欲しい。そう返し、持ち帰った。

 その後、リーダー始めとした仲間達と相談。

 そして、魔導師は売る事を承諾。莫大な大金を得た。

 そんな遣り取りを監視チームを介して知ったヴァエトールは舌打ちしながらも、宝珠への監視の継続を命じた。

 そんな中で龍兵は動きを見せた。


 「転移魔法陣の反応!!3つ!!1つは街から近いです!!」


 その報告にヴァエトールは忌々しそうに舌打ちすると、直ぐに命じる。


 「街に近いのが本命だ!直ぐに部隊を送れ!!他は無視して構わん!!」


 焦れた苛立ちをブツける様に部下達へ命じると、部下達は困惑しながらも意見具申する。


 「ヴァエトール様!僭越ながら申し上げます!反応がある転移魔法の反応は奴の陽動の可能性が高いです!どうか考え直しを!!」


 「奴は間違い無く此処を狙ってる!兎に角、急行せよ!!」


 怒鳴る様に命じられると、部下達は渋々ながらも仕方無い。そう言った様子で急行する。

 だが、龍兵の姿は何処にも無い。

 そんな報告に対し、苛立ちを露わにするヴァエトールは命じる。


 「周囲を捜索しろ!!奴は近くに居るに違いない!」


 部下達は命令であるからこそ、周囲を捜索する。

 アティルーナならば、もっと良い指揮をしてくれる。と、言うヴァエトールへの軽蔑とアティルーナへの想いを胸に抱きながら。

 だが、龍兵の姿が見付かる事は無い。

 そんな報告に不愉快さと苛立ちを露わにしながらも、ヴァエトールは自分の間違いを認めるように命じる。


 「他の反応のあった所を捜せ!!」


 「解りました!」


 部下は返事をすると、命令を遂行する為に動く。

 だが、部下は内心で分かっていた。

 どうせ、反応のあった所を捜しても見付からないと……

 そして、それは見事に的中。龍兵の姿は反応のあった所には無かった。

 ならば……肝心の龍兵は何処に居るか?

 一言で言うならば、既にファルサルに居た。


 「"後任は陽動に引っ掛かり、部下達の士気は後任の無能ぶりによって低下。今も俺が街の方に来ると勝手に思い込んでる"……マジで無能な後任なのか?」


 ダンジョンのエントランスフロアよりも奥。

 2階層目に降り立っていた龍兵はスマートフォンを手にミンのメッセージを確認すると、思わず口に出して読み上げて困惑してしまった。

 そんな龍兵は困惑しながらボヤきを漏らし続ける。


 「アティルーナなら即座に陽動って勘付くし、その後で全部隊にダンジョン捜索させて対応してる。いや、マトモな思考の持ち主なら俺の遣り口を学んでそうする。しない理由が無い……よな?」


 訳が解らなかった。

 本当に訳が解らなかった。

 後任のヴァエトールは龍兵が街にある宝珠を奪うと勝手に考えて思い込み、自分にとって都合の良いストーリーを自分独りで進め、ソレを正しいとすら考えてる。

 それ故に龍兵は益々困惑してしまう。


 「マジで訳が解らん。何で?何で、キチンと対応してねぇの?前回よりは欺瞞工作減らしてるだろ?え?何で?ガチ目に訳解らん」


 幾ら困惑してボヤいた所で答えが出る訳ではない。

 だからこそ、自分の来た道を振り返って耳を済ませると共に見詰める。


 今の所は追跡はされてない。されてないよな?

 それに仕掛けた警報(クレイモア地雷)も作動してない……筈だよな?

 アティルーナとザミルが追い掛けてくるなら、仕掛けたクレイモアに気付かない訳が無いだろうから……


 「何も無いのが逆にマジ恐いわ。つーか、敵の無能な采配を素直に喜べねぇし、滅茶苦茶もにょる。これで罠だった方が逆に納得と安心出来るわ」


 龍兵にすれば、本当に訳が解らない状況と言えた。

 しかし、現実と言うのは時にはこうした良過ぎる程の御都合的主義が働く。

 コレもそんな現実が稀に齎す一面。そう言えるだろう。

 そんな現実の中で戦々恐々としながらも龍兵はM203グレネードランチャーを取り付けたMk18 MOD1。そう呼ばれるBREN2から新調したアサルトライフルを手に歩みを進めて行く。

 此処も他のダンジョンと変わらず、真っ暗闇に覆い尽くされていた。 

 だが、F-PANOと呼ばれる暗視ゴーグルと、Mk18に取り付けられたIRフラッシュライトによって闇の中であっても昼間の様に見透す事が出来てる。

 そんな闇の中を進んでる間。龍兵はある事に気付いた。


 何でモンスターが居ない?

 それに罠が仕掛けられてる気配も無い?


 「マジでどうなってる?」


 首を傾げると共に疑問をボヤくと、スマートフォンが静かに振動する。

 龍兵がスマートフォンを取ると、先程の様なメッセージではなく電話であった。


 「どうした?」


 「急遽ですまないが、其処から先は彼女を連れて進んで欲しい」


 ミンから告げると共にポータルが開き、脇にプロパテールが大地に降り立った。

 程なくしてポータルが完全に閉じ、動きやすい服装と靴を履いたプロパテールが龍兵の前に残される。

 すると、龍兵はミンに問うた。


 「予定と違う」


 責める様に言うと、ミンは平然と返す。


 「彼女の頼みなんだ。後、標的に知られる心配は無い筈だし、そっちの問題は此方で手を打っておく」


 「俺はベビーシッターじゃねぇ」


 そう返すと、電話は一方的に切られてしまった。

 龍兵は面倒臭そうにスマートフォンをしまうと、プロパテールの方を向いて尋ねる。


 「暗闇の中だが見通せるか?」


 「一応は見える」


 プロパテールが正直に答えると、龍兵は暗視ゴーグルのスイッチを切って持ち上げる。

 そうして暗視ゴーグルを目から外すと、龍兵はMk18の側面に取り付けられたフラッシュライトを点灯して先を照らしていく。


 「コレで見えるか?」


 「見えるわ」


 プロパテールの返事を聞くと、龍兵は「離れるな」そう命じてから再び歩みを進める。

 龍兵の後を追う様に歩みを進めるプロパテールの足取りは重かった。


 「私は……」


 その呟きを龍兵は聞いても何も言わない。

 ただ、静かに用心深く警戒しながら歩みを進めるだけであった。

 そうして歩みを進めてる中。龍兵は立ち止まって告げる。


 「休憩しよう」


 その言葉にプロパテールが頷くと、龍兵はその場にしゃがんだ。

 プロパテールが自分と同様に地べたに座って休憩を取ろうとすると、龍兵は言い当てるかの様に言う。


 「パティ。君の顔は見たくないけど、見なければならない。そんな表情をしてる……」


 その言葉は図星だった。

 今のファルサルを見れば、自分は認めたくない事実を自ら認めるしかない。

 そんなプロパテールは打ち明ける様に答える。


 「ファルサルは人と魔族が()()()()()街だったの」


 この世界の今を生きる者が信じられない。そう叫ぶだろうプロパテールの言葉に対し、龍兵が驚く事は無かった。

 寧ろ……


 「そりゃあるだろうな……共生してた頃ってのは」


 当たり前の様に思っていた。

 そんな龍兵に向け、プロパテールは言葉を続ける。


 「ファルサルだけじゃない。他の土地や国でも人と魔族は共生してた所はあった。でも、大概はキチンと住み分けがされてた」


 この今の世界から見て、600年以上前の事を語るプロパテールに龍兵は何も言わず、ただ静かに耳を傾ける。


 「ファルサルに王が居た。彼は人でありながら魔族の血も引いてた……そんな彼の築いたファルサルでは種族差による問題や課題もあった。だけど、差別は無かった」


 ファルサルを知るプロパテールが懐かしそうに語ると、龍兵は周囲を警戒しながらも耳を傾ける。


 「私は王である彼が好きになってしまった。でも、神として赦されない事だし、彼には愛する妻が居た。だから、私は見守る事を選んだ……でも、一夜だけ私は過ちを犯した」


 「つまり、我慢できなくて"一発"ヤッた訳ね」


 身も蓋も無い事実を言えば、プロパテールは恥ずかしそうに顔を赤く染めてしまう。

 そんなプロパテールは気を取り直す様に話を話を続ける。


 「私はヨルがした事をこの目で確かめたい。何故、今まで共生してた人魔が600年もの間、憎しみを滾らせ合い続けてるのか?それを知りたい」


 その言葉に対し、龍兵は口を開いた。


 「ヨルつうか標的がした事が何か?何故、そうしたのか?ソレは俺には解らん。だが、共生していた人と魔族が600年も憎しみ合い続ける事に関してはそうだな……偉大な野球選手の言葉を借りるなら、コレに尽きる」


 その言葉にプロパテールが首を傾げると、龍兵はソレを教える。


 「憎悪と憤怒。それに怨嗟は永久に不滅ですってな……要するに人も魔族も根っこは一緒で、抱いていた怨みと憎しみ。それに怒りとかの負の感情は永久に不滅だし、お互いにそう言う負の感情を晴らす為、復讐なり報復なりをする……愛する者を奪われた仇を討つって大義名分と共にな」


 其処で言葉を切り、一息入れた龍兵は沈痛な面持ちを浮かべるプロパテールを気にせずに淡々と言葉を続ける。


 「だから、人と魔族は互いに憎悪や怨嗟に憤怒って言う感情入り乱れた炎に薪を焚べ続ける。例え、その炎が収まり、薪を焚べ続ける事を辞めれたとしても、炎は消えずに燻ぶり続ける」


 その言葉を聞くと、プロパテールは真剣な面持ちで尋ねてしまう。


 「ソレを無くす方法はあるんですか?」


 「あ?無ぇよ、そんなもん」


 酷い答えがあったモノだ。

 しかし、ソレが実際の現実と言えるだろう。

 地球にだって、この世界の600年が可愛く見える憎悪と憤怒。それに怨嗟が未だに渦巻き、ソレが理由で燃え盛っている。

 そんな正直とも言える龍兵の言葉にプロパテールが絶望の色と共に重い沈黙を見せると、龍兵は捕捉する様に言う。


 「だが、ソレを止めれるのも人間だ。この世界なら魔族もだな……」


 「え?」


 「まぁ、滅多に上手く行く訳じゃねぇし、寧ろ失敗したり、更に盛大に燃えたりはする。それでも、この激しく燃え盛る憎悪と憤怒に怨嗟と言う炎を消す事が出来るのは唯一、人間と魔族。要は当事者達だけなのが事実というのは言っておく」


 その言葉に信じられないと言った様子であったプロパテールに龍兵は締め括る様に言う。


 「まぁ、傭兵なんて言うこの手の憎悪や怨嗟に憤怒の炎滾る戦場で飯を食ってるロクデナシではあるけどさ……俺だって一応人間なのよ。だからさ、信じたいんだ」


 「信じたい?何を?」


 「決まってる。人の善性って奴をさ……」


 少しだけ小っ恥ずかしそうに返すと、龍兵はプロパテールに向けて疑問をぶつけた。


 「パティ……君はどうするつもりだ?」


 「どうする……とは?」


 「俺は君を元通りにする。で、その後で標的であるヨルダバオトつうか、君の弟を殺す訳だ。君はその後、どうするつもりだ?」


 問われたプロパテールは正直に答える。


 「解りません」


 そんなプロパテールに龍兵は何も言わなかった。


 「もう少し休憩したら進む。水はいるか?」


 その問いにプロパテールが首を小さく振ると、龍兵は水筒の水を一口飲む。

 そんな龍兵に向け、ミンからの報告がスマートフォンに来た。

 バイブレーションと共に振動したスマートフォンを手に取り、画面を見てメッセージを確認した龍兵は口元に笑みを浮かべる。


 「あの?何か?」


 プロパテールが心配そうに見ると、龍兵はスマートフォンをしまいながら笑顔で返した。


 「いや、問題無い。単なる事後報告さ」


 そう返して休憩を切り上げた龍兵は、プロパテールを連れて再び奥へと歩みを進めるのであった。



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