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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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26/42

後任は皮算用し、傭兵は決断する


 状況というのは常に動き続け、良くも悪くも流動し続ける。

 そして、その状況を動かすのは常に敵と味方とは限らない。

 時には敵と味方。双方とは無関係な縁もゆかりも無い、部外者の手によって動く事だってある。

 今回の件では特にそうであった。





 その冒険者達はそのダンジョンの全てのフロアを踏破し、奥深くに到達していた。

 勿論、その奥深くの宝物殿を護るドラゴンを打ち倒す事にも成功した。

 だからこそ、勝利の余韻と共に自分達の眼の前に莫大な富と財宝に目を輝かせていた。


 「スゲェ!!俺達は金持ちだ!!」


 リーダーである戦士の言葉に皆も同じテンションで最高の気分となり、莫大な財宝の極一部と言える豪奢な装飾品を身に着け、今の状況を大いに満喫してる。

 そんな中、パーティーの火力と援護担当と言える魔導師である彼女が居た。

 彼女は眼の前に広がる莫大な富と言える財宝の山に高揚とした気分になりながらも、魔導師としての自分を高められる。言うならば、レアな装備が無いか?冷静に捜していく。

 周りが片っ端から財宝を鞄等に詰め込むのを他所に探してると、ソレはあった。


 「何かしらコレ?」


 金銀財宝に混じり、埋もれながらもソレ……宝珠は存在感を露わにしていた。

 そんな宝珠を拾い上げると、魔導師は驚きを露わにしてしまう。


 「何これ?何かとんでもない力を秘めてる!?」


 「どした?って、何だよその玉っころは?」


 パーティーの前衛を担うガサツな性格ながらも仲間思いである重戦士が問うと、魔導師はソレを自分の鞄に収めながら返す。


 「何でもない。それより、これ全部持って帰るのは無理よ?」


 その言葉にリーダーが答えた。


 「なら、持てるだけ持って凱旋すりゃあ良い!でも、此処の事は内緒だ!後でまた取りに来るんだからよ!!」


 リーダーの答えに魔導師は「それもそうね」と、返せば、自分の今の取り分を得る為に財宝を片っ端から鞄に詰めていく。

 そうして鞄いっぱいの金銀財宝を確保すれば、リーダーは魔導師に命じる。


 「じゃ、転移のスクロール頼む」


 その言葉と共に魔導師が転移のスクロールを開けば、冒険者達一党は勝利の余韻と財宝の歓喜と共に悠々と帰還する。

 こんなアクシデントに天界サイド。もとい、アティルーナの後任となった猪武者と言える雰囲気を持った男は困惑しながらも部下達を叱責する。


 「何だと!?宝珠が冒険者に獲られただと!?貴様等は何していた!?」


 「面目次第も御座いません」


 部下達は頭を深々と下げ謝罪すると、その男……ヴァエトールは息を吐いて、このアクシデントをどう対処すべきか?事案しようとした所で気付いたのだろう。

 さっきまでの剣幕が何処かへやりながら、穏やかな口調で部下達に問うた。


 「この件を例の大罪人が知った可能性はあるか?」


 その問いに部下達は顔を上げると、「解りません」そう返して前置きしてから更に言葉を続ける。


 「しかし、件の大罪人も知っている。そう考えて動くべきと思います」


 部下達は元を正せば、アティルーナの腹心と言える優秀な者達であった。

 それ故、アティルーナならば大罪人もとい、龍兵が知っている。そう判断して動く。

 そう考え、意見具申した。

 そんなアティルーナと比べられる様な目や感情を感じ取ると、ヴァエトールは忌々しそうに吐き捨てる様に問う。


 「貴様等は私をあの女より劣ってる。そう見てるのか?」


 その問いに部下達は必死に否定する。


 「滅相も御座いません!!」


 「まぁ、良い。アティルーナは弱気だったばかりか、敵と内通しても居た。だが、私は違うぞ!良いか?例の奪われた宝珠はそのまま泳がせろ!連中と宝珠を餌にして、例の大罪人を待ち伏せ、狩る。良いな!?」


 その命令に対し、部下達が敬礼と共に返事をして受領して立ち去ると、ヴァエトールはほくそ笑む。


 アティルーナめ。

 忌々しい雌犬め。

 貴様のせいで俺は冷や飯食らいだった。

 だが、今では俺が戦の神だ。


 今この場に居らぬ、監獄に収監されたアティルーナに対して自分は勝った。

 そうほくそ笑むヴァエトールは未だ見ぬ大罪人に対し、侮りを見せる。


 それにしてもアティルーナめ……単なる人間に良いように翻弄されたばかりか、内通するとは落ちぶれたものだ。

 大罪人とは言え、単なる人間。殺せば死ぬ。

 ならば、貴様の首を持って俺様は戦の神として名を挙げてやろう。


 決意を決めるヴァエトールは知らない。

 その大罪人……蒼木龍兵と言う男は、確かに殺せば死ぬ。

 だが、その殺すまでの道程が果てしなく遠い詐欺師であり、厄介極まりない高度な戦術と戦略を立てる傭兵なのを。

 ヴァエトールは未だ知らない。

 そんなヴァエトールと同じ頃。

 龍兵も今回のアクシデントの件をミンから報告として聞いていた。


 「つまり、冒険者がブツを手に入れた。で、ブツは今はその冒険者達の手にある……そう言う事か?」


 ベッドに横たわり、身体を癒してる龍兵が結論付ける様に確認すれば、ミンは肯定する。


 「そうだ」


 「なら、放置で良いわ」


 アッサリとソレを狙わない事を決める龍兵に対し、プロパテールは首を傾げる。


 「何故?」


 「理由?1つは単純にアティルーナの後任がこのアクシデントを利用して、俺と言う雑魚を釣ろうとしてるからだな」


 その答えにミンは「君も十分に人喰い鮫だろう」そう呆れると、プロパテールもその言葉を内心で同意しながら問う。


 「もう1つあるの?」


 問われた龍兵は煙草を吸いたいのを我慢しながら答える。


 「2つ目は俺は各国から最重要指名手配されてる身って点だ」


 「最重要指名手配?」


 プロパテールが聞き慣れぬ言葉に首を傾げると、シガリロを燻らせるミンが龍兵の代わりに紫煙混じりに答えた。


 「彼は君の力の断片である宝珠を得る為に教皇を殺した。表向きは心臓麻痺……要は心の臓の病という形で処理されてるが、各国の上層部には本当の理由が共有されてる」


 「つまり、お尋ね者だから……と、言う事?」


 プロパテールが確認する様に言えば、龍兵は肯定する。


 「そう言う事。人気の多い街中に潜入したら最悪、俺は街中の人間と鬼ごっこする羽目になっちまう。だから、後回しにせざる得ないんだ」


 確かに龍兵は1度目の異世界で培った経験と技術から土地勘の無い街に潜入し、街の人間の一人に化けて行動は出来る。

 だが、一度バレてしまえば、逃げ道は無い中で大多数の人間と天使。その2つの勢力を相手取って戦わなければならない。

 そんな問題があるからこそ、龍兵は後回しにせざる得なかった。


 「なので、身体が癒えて、鈍った身体を戻した後に狙う次のブツは他の残りだ」


 「後回しにするのは解ったけど、何故?」


 プロパテールが問えば、龍兵は答える。


 「そりゃあ決まってる。あからさまな罠に突っ込むより、別の安全そうな所を狙う方が生き残る可能性が上がるからだ」


 「でも、それって問題の後回しに過ぎないんじゃないの?」


 プロパテールが至極当然と言える意見を挙げると、龍兵はアッサリ肯定する。


 「君の言う通りだ。問題を後回しにしてるに過ぎない」


 「ソレで私の力を取り戻せるの?」


 プロパテールが詰問する様に問うと、龍兵はプロの傭兵として返す。


 「ソレはやってみないと解らんね」


 珍しく気弱とも取れる答えが返って来ると、プロパテールは驚きと共に尋ねてしまう。


 「何故?」


 「状況がより複雑になった。オマケに懸念すべき大きな問題点がある」


 懸念するべき大きな問題点。

 ソレを聞くと、ミンは紫煙と共に責める様に告げる。


 「君は疑り深いな。アティルーナとザミルは今も監獄内に収監されてると言ったろう?」


 「仕方無いだろ?あの2人は最大の脅威で今も生きてる。死んでくれてるなら、気兼ね無く動き回れるが、生きてる以上は何時、現場復帰して俺を殺しに来るか?解ったもんじゃねぇんだから」


 そんな龍兵の答えを聞くと、ミンは冗談交じりに返す。


 「そんなに気になるなら、直接見に行くかい?私は止めない」


 ミンの冗談交じりの言葉を聞くと、龍兵はコンピュータがフリーズしたかの様にピタリと止まった。

 だが、直ぐに戻って真顔で返す。


 「それだ!」


 「それだ?って、まさか私の冗談を真に受けたんじゃないだろうな?」


 ミンが龍兵の妙案が浮かんだという真顔に対し、窘める様に返すと、龍兵は気にする事無く続ける。


 「アティルーナは今まで仕えてた主神が偽者だと知り、自分が拘束された事で確信を持ったと言って良い。勿論、当時から知ってたザミルは言うまでもない」


 「ソレは解ってる。だが、君の浮かんだ凄く嫌な予感がする妙案と、どう関係する?」


 ミンが珍しく話が見えない。と、言った様子で問えば、龍兵は確信と共にプロパテールを見ながら答える。


 「簡単な話だ。アティルーナにとって真に仕えるべき存在は俺の目の前に居て、ソイツは当事者だからこそ、全てを知ってる」


 その答えが意味する事を察すると、ミンは真顔になった。


 「君は戦争を引き起こすつもりか?」


 真剣な面持ちと共に問われると、龍兵は涼しい顔で返す。


 「ソレはコイツとアティルーナ。それにザミルが決める事であって、俺が決める事じゃない」


 「その割には本気に聞こえるのは気のせいかね?」


 「実際問題として、良い大義名分だ。偽りの神を打倒する真なる神と忠臣たる戦の神による誅伐ってのはな……ほら、大義名分が無かったら勝てる戦争だって勝てないし?」


 その言葉にプロパテールは複雑な面持ちを浮かべてしまう。

 そんなプロパテールに気を使ってか、ミンは優しく告げる。


 「この邪悪な友の言葉に耳を傾ける必要は無い」


 しかし、プロパテールは決断した。


 「ソレを決める前に私をファルサルに連れて行って欲しい」


 ファルサル。

 龍兵が陽動として利用し、行く事が無かった土地に強い拘りを露わにするプロパテールの言葉に迷いは無かった。

 だからこそ、龍兵は傭兵としての職分を珍しく超える。


 「ファルサルに何があるんだ?」


 「え?」


 「アンタはファルサルと言う土地に対し、強い拘りを持ってる。その拘りってのは何だ?」


 「それは……」


 プロパテールは答えるべきか?悩んでしまう。

 そんな彼女に対し、龍兵は譲歩した。


 「なら、次の狙いはファルサルだ」


 「え?」


 「アンタはファルサルに行きたい。俺はファルサルにあるブツを回収したい。つまり、一挙両得と言う訳だ」


 そんな龍兵の譲歩をミンは心の底から珍しそうに感じたのだろう。

 その理由を敢えて問うた。


 「何故、君は譲歩したのだね?」


 その問いに龍兵は悪戯っぽい笑みと共に答えた。


 「気まぐれって奴さ。後、普段なら気にしない依頼人の背景って奴が気になった」


 「君らしくないな」


 「奇遇だな。俺も同じ事を思った」


 龍兵は正直に思った事をそのまま返すと、モノのついで。そう言わんばかりにミンに尋ねる。


 「ミン。お前の使ってる内通者ってのは、何処までやれる?」


 「彼はトコトンやってくれる。例え、ソレが理由で自分の命が奪われたとしてもね」


 ミンが内通者の事を正直に答えると、龍兵は考える。

 直ぐに考えが纏った。

 それ故に直ぐに要求する。


 「なら、面会でも標的か後任の直接命令で事情聴取する為の命令書でも何でも良い。兎に角、アティルーナとザミルの居る監獄へ堂々と入れる書類を揃えろ……」


 その要求はミンはスンナリ呑んだ。


 「手配させよう。他に必要なモノは?」


 ミンの確認に龍兵は答えず、プロパテールの方を見てプロパテール本人に問う。


 「パティ……君は今の段階で俺を天使に化けさせる事は可能か?」


 「え?」


 「もう一度言う。君の力で俺を天使に偽装させる事は可能か?」


 「今は未だ難しい。でも、もう断片がもう1つ戻れば出来るかもしれない」


 プロパテールがおどおどしながらもハッキリ答えれば、龍兵は改めて決断する。


 「なら、決まりだ。ファルサルで4つ目のブツを確保する。次に監獄へ赴いてアティルーナとザミルを脱獄させ、神の脚本にチョイと中指を突き立ててやる」


 不適な笑みと共に決断すると、ミンはまたも呆れてしまう。


 「君はとっくに神の脚本にチョイとどころか、徹底的に中指突き立て続けてるだろうが……」


 「気にすんな。兎に角だ。俺はその線で依頼を継続するが、文句は?」


 「無いよ。色々と厄介な事になりそうだとは思うが、私は君の腕と知略を信じる」


 そう言う事になれば、龍兵はニンマリと笑って次の作戦の為に身体を休めるのであった。



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