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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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25/42

神だって考えるアホだ


 意識を手放してから暫く過ぎた頃。

 龍兵は再起動するかの如く目を覚ました。


 「麻酔が効いてるのか?さっきは痛かったのが痛み無い……つか、俺どんだけ寝てた?」


 ボンヤリとした頭でも状況を掴もうとする龍兵に対し、ミンは暢気にシガリロを燻らせながら告げる。


 「約12時間寝てたよ。後、ドクターストップ掛かってるから1週間は大人しく寝ていたまえ」


 「そうか……煙草あるか?」


 「療養してる間ぐらい禁煙したまえ」


 煙草はやらない。

 そう告げられると、今度は別の物を要求した。


 「なら、酒は?」


 「駄目に決まってるだろう?」


 呆れ混じりに言われた龍兵が「クソッ」と、吐き捨てれば、ミンは告げる。


 「君が気絶し、麻酔で眠ってた12時間の間で状況は動いたよ」


 「具体的には?」


 龍兵が問うと、ミンは無言のまま脇に抱えていたファイルを差し出して来た。

 そんなファイルを受け取り、開いてページを眺めた龍兵はある項目で視線が釘付けとなると、直ぐに目を擦って見間違いではないのか?確認する様にまた見る。

 その項目に記された内容が自分の見間違いではなかった。

 そう知ると、龍兵は困惑混じりに訪ねる。


 「なぁ、コレはマジなのか?」


 「驚く事に事実だ」


 「そんな訳あるか!何だよ!?アティルーナとザミルがあの後、直ぐに拘束されたって!?」


 そうミンの差し出したファイルにはアティルーナとザミルが拘束された事を報告する内容があった。

 そんな内容に龍兵は心の底から信じられない。何なら、あり得ない。

 そう言わんばかりに訝しみながら言葉を続ける。


 「コレ、罠だろ?罠だよな?俺を最も効果的に追い詰めた滅茶苦茶優秀な指揮官と追跡者を標的は拘束し、監獄へ護送?何だよ、このバカげた報告?なぁ、ミン……アンタとはそれなりに付き合いはある。だからって、偽の情報を俺に出すなよ」


 龍兵が珍しく感情的に言えば、ミンは平然と涼しい顔で返す。


 「同じ事を言うのも何だが、他に言い様が無い。だから、同じ事を敢えて言おう……驚く事に事実だ」


 それなりに付き合いの長い龍兵から見ても、嘘は言ってない。ミンの態度と声色から事実である事を察すると、龍兵は益々困惑してしまう。


 「マジで意味が解らん。どうして、こうなった?」


 龍兵が心の底から困惑し、更には混乱してるのをミンは珍しそうに眺めると共に意外そうに尋ねる。


 「君、コレを狙って真実を暴露したんじゃないのか?」


 龍兵の優れた戦略家としての面からミンはこの状況を作る為、敢えて真実を暴露した。

 そう思っていた。

 だが、当人にすれば、ソレは買い被り過ぎる言葉であった。


 「流石に無ぇわ。確かに時間稼ぎの会話の話題作りの為に暴露は選んだ。もしかしたら、この遣り取りを標的が見てるんじゃないか?そうも踏んではいた」


 「なら、狙い通りじゃないか」


 何処が問題なんだ?そう宣うミンに龍兵は語る。


 「アティルーナは良くも悪くも優秀で実直な将軍だ。そんな奴が敵である俺の言葉を鵜呑みにするなんて考えるのはバカのする事だし、アティルーナはバカじゃない」


 「ほう」


 龍兵の言葉にミンは珍しそうにしながら相槌を打つと、龍兵は言葉を続ける。


 「アティルーナみたいなタイプは任務をキッチリ完了させてから、俺の言葉が事実か?否か?を確かめる厳格な……」


 其処で言葉を留めた龍兵は思い出す。


 「どうしたんだね?」


 「ザミルだ。アイツだけは俺の言葉が真実だって知ってる様な態度だった。オマケに俺を殺せるチャンスを不意にしてた」


 「つまり?」


 「なぁ……アティルーナは俺に逃げられた後、ザミルを問い詰めてなかったか?」


 「君の言う通りだ。あの後、アティルーナはザミルを詰問した。で、その時にアティルーナとザミルは部下達の手によって拘束され、監獄に収監された」


 「表向きは失敗の責任を問われると共に、君と内通した容疑と言う形だがね」と、報告を締め括ると龍兵は合点がいった様子であった。


 「成る程。成る程……恐らくだが、ザミルはヨルダバオトが俺の救出対象……プロパテールと成り代わってた事を当時から知ってた。で、ヨルダバオトはザミルを警戒しながらも、真実を暴露する気が無いと判断し、放置していた」


 「つまり?」


 「最もバレて欲しくない存在とも言えるアティルーナにソレを打ち明けてしまい、ヨルダバオトは永い年月の間ずっと守られ続けてた秘密が露見する事を恐れ、俺の確保失敗と内通容疑を名目に拘束し、監獄へ収監して口封じをした」


 そう考察しながらも龍兵は最悪の可能性を口にする。


 「だが、この拘束と収監がアティルーナの企てた俺に油断を誘い、自分は後任に指揮を任せてザミルと二人一組になって俺を徹底的に追い回す作戦にシフトしてたってなると、目も当てられねぇ……」


 アティルーナは指揮官としても優秀ではある。

 だが、本来のスタイルは前線で暴れ回って猛威を奮う一騎当千。

 それ故、ザミルを猟犬として扱って気兼ね無く自分を追い回す作戦にシフトされてしまえば、自分の作戦の成功率は大きく低下。

 否、作戦遂行が不可能なレベルとなる。

 だからこそ、龍兵はヨルダバオトによる拘束と収監の理由を考察しながらも、アティルーナの企てと言う考えを棄てれずにいた。

 そんな龍兵にミンは他人事の様に問う。


 「敵が大きな間違いを犯してるなら、ソレで良いのではないか?」


 「あのなぁ、幾ら何でもコレは都合良過ぎる展開なんだよ。本当にアティルーナとザミルが収監され、この舞台から退場したってんなら祝杯挙げても良いさ……でもな、流石にそんな都合良過ぎる展開なんざ有り得ねぇんだわ。寧ろ、都合良過ぎて罠だろ?って警戒せざる得ねぇわ」


 冷徹な歴戦の猛者とも言える傭兵としての面と、普段の人の良い感情豊かな面。その2つを露わにしながら返せば、ミンは「君の疑いたくなる気持ちは解るし、用心深くなのるも当然だ」そう前置きすると、改めて告げる。


 「だが、本当に驚く事に君の懸念する罠じゃないんだ。私だって驚いてるし、困惑してるがね……」


 「ホントかよ。つーか、それにしても神様って奴も人間みてぇなとんでもないヤラかしつうか、失敗を平気でするんだな」


 龍兵が呆れ混じりに他人事の様にボヤくと、ミンは少しだけ笑って返す。


 「君は神という存在に高望みし過ぎだよ」


 「神だぞ?アティルーナって言う超優秀な存在目の当たりにしたら、神は人間みてぇなアホをヤラかさないって認識になるべよ?」


 龍兵がアティルーナと言う存在から神は自分初めとした人間とは比べ物にならぬ程に優秀で、人間を超越した存在。そう判断する様に言うと、ミンは益々愉快そうに笑って言う。


 「神だって感情があるし、知性があるんだ。確かにアティルーナは優秀なのは認めるし、アティルーナを目の当たりにしてそう判断するのも仕方無い事だ」


 そう返したミンは「だが……」と、前置きしてから自分という存在から見た神を龍兵に教える。


 「神や人に限らず、感情があって、知性がある存在は君の言葉を借りるなら……神だって"考えるアホ"だよ」


 その言葉から妙に強い説得力をミンから感じると、龍兵は珍しく踏み込んで尋ねた。


 「ソレはアンタって言う神様から見た言葉つうか、考えか?」


 「君はどう思う?」


 自分の問いに対し、悪戯っぽい笑みと共に敢えて質問で返すミンに龍兵は返す。


 「アンタが人間だろうが、神様だろうが、邪神だろうが俺には関係無い話だな」


 「おや、此処は詳しく聞く所だろう?」


 茶化す様にミンが問えば、龍兵はソレに同意しながらも違う意見で返した。


 「そうなんだろうな。だが、俺は生憎と物語の主人公をするタイプじゃないし、アンタは俺の知る飛び切りのクソッタレのロクデナシの大悪党で、裏社会ってピラミッドの頂点に長年君臨し続ける邪悪なる王……そんな認識で充分だ」


 「君は本当に線引きをキッチリしてるな」


 「じゃなかったら、とっくに死んでる。裏社会は知りたがりや喋りたがりが長生き出来ねぇ、人食い鮫どもの世界だし……まぁ、俺はアンタと比べたら雑魚中の雑魚だけど」


 その答えにミンは前半は同意するが、後半の言葉に呆れてしまう。


 「君だって十分、私と同様に人食い鮫だろう……ソレ以前に義体化や電脳化が当たり前のあの世界(1度目の異世界)で27年も生身の身体で戦い抜き、生き延び続けて来た君だって十分にバケモノだよ」


 「俺は必死に戦って、生き延びて来ただけだ。バケモノって言われるのはマジで心外なんだが?」


 本心から返すと、ミンは益々呆れながらも愉快そうに言う。


 「相変わらず君は謙虚だな。さて、その記録の続きを読んだ君はどう反応するか?見ものだな」


 そんな含みのある言葉と共に報告書の続きを読む様に促されると、龍兵はファイルの続きに目を通していく。

 ファイルに記された報告を読み進め、一頻り読んだ龍兵は顔を挙げて困惑した様に言う。


 「やっぱ、コレ罠だろ?なぁ、罠だって言えよ……何なら、アンタが俺を笑い殺す為に仕立てたファイルって言ってくれ。信じるから」


 「何度も同じ事を言うのも不愉快なんだが?」


 その言葉からファイルに記された内容が事実であると知らされると、龍兵はボヤく様に漏らす。


 「アティルーナとザミルの後任がこの記録通りって有り得ねぇだろ?」


 またも訝しむ龍兵にミンはピシャリと言い放つ。


 「だが、事実だ」


 「罠だろ?」


 「しつこいぞ、ロン。温厚な私でも流石に怒るぞ?」


 少しだけムッとした態度でミンが罠ではない。そう告げると、龍兵は心の底から困惑してしまう。


 「ねぇわ。流石にこのコレは無いわ……何だよ、記録通りならアティルーナとザミルから見たら無能も良い所じゃねぇか!こんな奴を後任にするって、標的はバカなのか?だとしても、バカ過ぎるだろ!?」


 ミンの提供した記録が正しいならば、アティルーナとザミルの後任となる者達は一言で言うならば、無能と断じても過言ではなかった。

 だからこそ、龍兵は困惑。否、混乱して感情的に言葉をブチ撒けてしまう。

 そんな龍兵をミンが愉快そうに見てると、龍兵はボヤく。


 「そりゃあさ、歴史上でも優秀な忠臣を粛清して、その後に無能を据える人事はよくあった。俺も1度目の異世界でドンパチしてる中で実際に見て来ましたよ?優秀な忠臣を粛清して、後任に無能を据えて悲惨な結末を迎えるってのをさ?」


 長々とボヤく龍兵の言葉にミンが耳を傾けると、ボヤキは更に続く。


 「だからってさぁ、神様が人間と同じヤラかしをするって何だよ?訳が解らねぇわ」


 感情的に心の底から思った事をボヤくと、ミンは改めて言う。


 「さっきも言ったろう?神も人間と変わらぬ"考えるアホ"だと……だから、能力を度外視して、忠誠心しか無い無能を据える」


 「何か納得いかねぇし、もにょる……だが、人間と同じって考えるなら、納得出来る点はあるんだよ」


 納得出来ない。そう言いながらも、人間と同様に考えるならば、納得出来る。

 そんな矛盾する言葉を放った龍兵にミンは興味津々に耳を傾け、沈黙と共に続きを促す。


 「奴は600年もの間、露見したら身の破滅を齎す秘密を守り続けていた。ソレは合ってるか?」


 「合ってる。ヨルダバオトは600年前に姉で、君の救出対象であるプロパテールを叛逆したヨルダバオトと言う事にして封じ、自身はプロパテールと言う事に主神に成り代わった」


 ミンが補足説明をすれば、龍兵の中で行われる考察に肉付けがされた。


 「600年前に何で、そう至ったのか?其処は知らねぇし、興味も無い。だが、その600年の間ずっと保ち続けてた秘密が今になって、露見して破滅を誘う危険を持ってしまった。俺って言うクソ野郎によってな……」


 「つまり?」


 「要するにだ。初めて秘密が明るみに出る可能性が大きく浮上した事に対し、ヨルダバオトは過敏かつ過剰に反応して本来打つべき手を誤り、盛大に自爆した。人間ならよくある、感情的な要因による失敗でしかない」


 「見事な推理だ。相変わらず、君は相手の感情を読むのが上手い」


 ミンが小さな拍手と共にその考察を認めると、龍兵はつまらなさそうに漏らす。


 「この程度、誰だって察せられる。専門家なら、更に詳しく分析してくれるだろうが、俺は専門家じゃないんで此処で終わりだ」


 「君は下手な専門家より分析能力高いんだから、ソレを誇り給え」


 「やなこった。それより、今後の展開をどうするか?コレに関してはアティルーナとザミルって言う最悪のジョーカーが息を潜め、俺を待ち構えてるって前提は最悪を想定し、崩さない」


 「それは当然だな。相手が無能だからといって、手を抜く理由は無い」


 「それもある。だが、もう1つはヨルダバオト本人が俺の口を塞ぐ為に直接出張ってくる可能性も否めないってのもある」


 「成る程。それは確かにそうだ」


 「なので、どっちにしろ俺は手を抜けないし、入念に作戦を練って本気で挑まないとならない点は変わらない。寧ろ、今まで以上に性根を据えて挑まないと死ぬ可能性が増してるすらある」


 そう結論付けた龍兵にミンは言う。


 「今は兎に角、休み給え……戦場は逃げん」


 「なら、そうさせて貰う」


 そう返すと、龍兵はファイルを適当にほっぽり、そのまま眠りに付いたのであった。




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