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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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閑話:言葉が齎した結果


 意識を失った龍兵ではあるが、息はしていた。

 そんな龍兵をミンの部下達ベッドに寝かせてプレートキャリアを始めとした各種装具を除装させ、戦闘服を切り裂いて負傷箇所を露わにすれば、医療の専門家達は処置を始める

 そんな光景を眺めると、ミンは呆れ混じりに漏らす。


 「君は完璧に今回の作戦を成功させたと言うのに、敗北を覚えるとは君らしいと言うか?強欲と言うべきか?迷ってしまうよ」


 そんな呆れ混じりの言葉にプロパテールは尋ねる。


 「彼は何故、私の真実を2人に教えたの?」


 「私は正解を知ってる。だが、教える気は無い」


 意外とも言える答えが返って来ると、プロパテールは首を傾げてしまう。


 「何故?」


 「彼が言ったろう?後で答えると……だから、彼の口から聞くのが筋だ。違うかな?」


 ミンがそう言えば、プロパテールは納得する。それから直ぐに龍兵の傍らに赴き、手を翳し始める。

 プロパテールの陶磁の如く白く小さな手から仄かな光が迸ると、龍兵の体内で変化が起きた。

 折れた3本の肋骨が元通りにくっつき、更には折れた肋骨によって傷付いた箇所も治癒され、終いにはアティルーナの一撃で損傷を受けた各臓器が治癒されていく。

 そんなプロパテールの力の片鱗を眺めながらミンは同意を求める様に言う。


 「君には申し訳無いが、彼を暫く休ませたい。良いかな?」


 「私は構わない」


 そうして同意を求める事に成功すると、ミンはプロパテールに今後の予定を語る。


 「当面の間は状況の推移を見守るだけになる。今回の作戦で彼がヤラかした件はどんな形であれ、状況を変化させるには十分過ぎるんでね……」


 龍兵がヤラかした事。

 ソレが自分の力を半分近く取り戻す事に成功した、3つ目の宝珠確保の事。そう考えたプロパテールは、確認する様に問う。


 「私が力を半分取り戻したから?」


 「それもある。だが、最も大きな要素は彼自身がした事に尽きる」


 その言葉でプロパテールは自分が疑問に思っている件だと察し、龍兵が真実をアティルーナとザミルに暴露した件が其処まで影響を及ぼすのか?と、首を傾げてしまう。


 「其処まで影響するの?私の事を教えただけで?」


 その問いにミンが答える事は無かった。


 「詳しい事は彼に聞きたまえ。と、言うよりは君の弟がどう動くか?ソレ次第だから詳しくは言えないのが本音でね」


 「ヨル次第?」


 「そう。君の弟がどう動くか?流石に其処までは読めないのでね……実際にどう動くか?ソレを見た上でしか、次の行動は起こせないし、そうなった時に彼の意見も聞く必要がある。だから、今は答えられないのさ」


 ミンが詳しく説明出来ない理由を告げれば、プロパテールはコレ以上の事を詳しく聞く事は無かった。

 そんなプロパテールを他所にミンはシガリロを燻らせると、プロパテールを連れて別室に移動する。

 そんな龍兵達がセーフハウスに居る頃。

 龍兵を逃がしてしまったアティルーナはその場に残ると、部下達には待機を命じて人払いを完全に済ませてからザミルに詰問を始めた。


 「さて、ザミル……私が聞きたい事は解ってるな?」


 その問いに対し、ザミルは何時ものおちゃらけた雰囲気を棄てた様に真剣な面持ちで答える。


 「あの狼の言葉に嘘が無かった」


 普段と打って変わって真面目で真剣な声色でザミルが答えると、アティルーナは声を荒げたいのを堪えて問う。


 「どう言う事だ?」


 「あの狼の言った通りよ。今、玉座に居られる主神はプロパテール様ではないの」


 ザミルの口からとんでもない爆弾発言が放たれると、アティルーナは真剣な声色で尋ねる。


 「何だと?それはどう言う事だ?」


 「そのままの意味よ。あの時……ヨルダバオトがプロパテール様に謀反を起こし、プロパテール様がソレを解決した時、貴女はその場に居なかったわね」


 「あぁ、私は外なる邪神とその軍勢の対処に当たっていて、居合わせてはなかった」


 だから、詳しい事は知らない。

 アティルーナがそう返すと、ザミルは語る。


 「プロパテール様が解決し、ヨルダバオトを封印する為に7つの宝珠と言う形で力を分割させ、その7つを取り除いた器たる肉体を厳重に拘束して封じた。その時に私は気付いたの……今のプロパテール様の真の正体はヨルダバオトで、封じられたヨルダバオトがプロパテール様だとね」


 語られた内容はアティルーナを驚かせるには十分過ぎた。

 だが、内容が内容であるが故にアティルーナは今でも信じられずに居た。


 「嘘だろう?流石に貴様の作り話だろう?」


 「残念だけど、嘘じゃないの。全て真実よ」


 ザミルがコレが嘘だったら良かったのに。

 そんな感情を込めて事実だと言うと、アティルーナは疑問をぶつける。


 「何故、ソレを今まで黙っていた?何故、600年もの間、黙り続けていた?」


 当然とも言える疑問をぶつけると、ザミルは声を荒げた。


 「コレを誰に言えば良いのよ!?誰に打ち明ければ良かったの!?貴女は外なる世界の邪神と戦わざるを得なかった状況!私も貴女の支援に回らざる得なかった!どうすれば良かったのよ!!」


 普段なら決して吐かぬ弱音をブチ撒けたザミルの姿にアティルーナは真実である。そう判断すると共にどうすべきか?考えようとする。

 その時だ。慌ただしい多数の足音と共に武装した戦天使達がやって来た。

 戦天使達はアティルーナの部下であるが故に信じられない、何故こんな?そんな困惑にも満ちた申し訳無さの混じる面持ちで告げる。


 「アティルーナ様。ザミル様。我が主神の命で貴女達を拘束させて戴きます……どうか、抵抗はなされぬ様にお願い申し上げます」


 主神の命で自分達が拘束される。

 そう告げられると、アティルーナは部下達に問う。


 「理由を聞かせろ」


 「我々も主神の意志としか言われておりませぬ。どうか、抵抗はなされぬ様に拘束に応じて戴きたい」


 命じられた職務を遂行する戦天使達の真面目な雰囲気の中には、何故?

 アティルーナを拘束するのはどうして?

 アティルーナでなければ、龍兵を拘束するのは無理だ。

 そんな感情が入り混じっていた。

 だからなのか、アティルーナは自ら武装を解除し、更には鎧兜を眼の前で脱いでいく。

 そんなアティルーナの姿にザミルも諦めに満ちた表情を浮かべると、弓と矢筒をその場に置いて跪いて拘束を受け入れる姿勢を見せた。

 そうして2柱の女神が拘束されると、素直に連行されて行く。

 この件を未だ龍兵は知らない。

 だが、それを知った時。龍兵が盛大に驚き、呆れてしまうのは言うまでもなかった。



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