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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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22/42

斯くして傭兵は戦争の女神と相対す


 3層目の半分まで到達した龍兵は本能と勘が警鐘を鳴らすと、直ぐにその場に立ち止まり、その場に伏せた。

 それから直ぐに地面に耳を押し付け、地面を通じて伝わる微かながらも慌ただしい足音を聞き取った瞬間。即座に予定を変更する。


 思ったより早く来やがった。

 敵は度胸がある命知らずだな……


 突入して来た敵部隊が罠の可能性と言う恐怖をモノともせずに来た事に対し、度胸がある命知らず。そう認めた龍兵は立ち上がると、直ぐに迎え撃つ支度を整え始める。


 敵は今は少数。恐らく先遣隊。

 だが、俺が此処に居る事を後方……アティルーナに報告した時点で総出でカチコミ掛けて来る。

 なので、敢えて迎え撃って敵の数を可能な限り減らす事にシフトする。


 そう考えながら龍兵は今居る部屋にAGS30と呼ばれる専用の三脚に据えられたロシア製のオートグレネードを召喚能力すると、地面にセットして自身もその場に座る。

 それから手早くベルトリンクで連なる30ミリの長い榴弾をセットすれば、龍兵は暗闇の中でインカムを介してミンへかねてより決めていた対応策を発動させる様に通達する。


 「無線封鎖解除。押し込み強盗からロクデナシへ。プランB実行」


 「ロクデナシ了解」


 互いに名前で呼ばずにコールサインで遣り取りすると、龍兵の背後数メートルの所でポータルが開いた。

 ポータルが開いて中からサプレッサー付きのアサルトカービンや軽機関銃等で武装した1個分隊規模の顔をバラクラバで覆い隠し、目元には暗視ゴーグルを嵌めた兵士の一団が現れる。

 そんな彼等は龍兵に一切の接触をする事無く、ダンジョンの奥へと駆け出していく。

 そうして独り残されれば、龍兵は4つ数えてから深く息を吸った。


 「すぅぅ……」


 それからまた4つ数えると、深く息を吐いて軽く息を吸う。


 「ふぅぅぅ……すぅ……」


 すると、闇の向こうで銃声がするのを他所に29発の専用榴弾が詰まったドラムマガジンを幾つも召喚しながら待ち続ける。

 暫くすると、通路の奥から微かながらも慌ただしい足音が近づいて来るのが聞こえて来た。

 そんな足音が段々と大きくなり、暗視ゴーグル越しの視線の先に先頭を駆ける天使の姿

が露わになった瞬間。龍兵は引金を引いた。

 瞬時に響いた三度の砲声と共に30ミリ榴弾が放たれ、飛んで行く。

 それから程なくして先頭を駆ける天使とその後ろに居た天使達が爆発によって蹂躙され、飛び散る無数の殺傷用の鉄片によってズタズタに斬り裂かれる。

 そうして先遣隊であろう天使達を難なく殺せば、龍兵は薩摩の捨てがまりの如くその場に居座ったまま次の敵が来るのを待ち続ける。


 俺が捨てがまりとして此処で食い止め続けてる間、別働隊が回収してくれれば今回のゲームは俺の勝ち。


 最初からそう決めていた龍兵は新たに来た天使達へ的確に30ミリ榴弾を3点射で叩き込む。

 だが、天使達は他にも居た。

 しかし、龍兵は気にする事無く引金を引いて断続的に30ミリ榴弾を淡々と浴びせる。

 断続的に3点射を続け、敵の攻勢が止んだら引金を引かない。

 たった、それだけの行動を淡々と続ける作業と言える酷い塩対応を続けて敵を食い止め、時間を稼いでいる龍兵である。

 しかし、だからといってコレで勝てるとは思ってもいない。


 このまま済めば良いけど、ソレで終わるほど世の中つうか現実は甘くねぇ……


 予備のドラムマガジンと空になったドラムマガジンを交換し、ベルトリンクで連なる30ミリ榴弾を引っ張り出して再装填する作業を素早く済ませながら、龍兵はこの後の展開を考える。


 恐らくだが、何らかの形で敵は状況を打破しようとしてくる。

 どんな形で打破するか?

 流石に其処までは読めない。

 だが、敵。と、言うかアティルーナは何らかの形で俺に最悪な状況を叩き付けて来る。

 コレだけは確実に言える。


 龍兵はアティルーナに対し、高い評価を下していた。

 アティルーナは確かに龍兵に裏を掛かれ、出し抜かれてしまった。

 だが、アティルーナは今こうして指揮官としてリカバリーを図る事に成功し、犠牲と引き換えにしながらも龍兵に追い付き、釘付けも出来ている。

 だからこそ、アティルーナを侮れる理由は見当たらない。

 それどころか、何らかの形で自分を出し抜き、最悪の展開に引っ張り込む。

 そんな予感を覚えていた。

 それ故に龍兵は3点射を断続的に続けて通路を封鎖しながら考える。


 戦争の神様はどんな手を打つ?

 その一手次第で俺の状況は最悪に変わる。


 「アガるな」


 戦の神が次にどんな手を打って出るのか?

 ワクワクしながら漏らしてしまう。

 相手は戦を司る戦争の神であるからこそ龍兵は愉しみ、その一手に期待を向けていた。

 そして、そんなアティルーナはダンジョンの外でザミルと共に部下達の報告を受けていた。


 「申し訳御座いません!敵の攻撃が激しく被害は甚大!」


 部下が自分たちの被害が甚大であると共に状況を好転させられないでいる事に謝罪すると、アティルーナは指揮官として確認するかの如く問う。


 「間違いなく奴なのだな?」


 「はい!何とか生き延びていた者を救出し、話を聞いた所では間違いなく奴であると……」


 部下がハキハキと答えれると、アティルーナは首を傾げる。


 どう言う事だ?

 奴は何故残ってる?

 一頻り攻撃をし、我々がどう対処するか?策を練る間に先へ進むべき所を進まずに居る……

 何故だ?


 其処まで思考を巡らせた所でアティルーナは気付いた。


 「そう言う事か」


 「どう言う事?」


 ザミルが問うと、アティルーナは読み取れた龍兵の思惑を答える。


 「奴は殿として残り、時間を稼いでる」


 「つ、つまり奴は別の者達を利用して宝珠を強奪させ、自分は囮を兼ねた殿として残って我々を相手に独りで戦ってると言う事ですか?」


 部下が伺いを立てる様に問えば、アティルーナは肯定する。


 「そうだ。奴は前回の宮殿襲撃の際に同じ事をした。ソレを奴はやってる」


 自分の部下がバカではない事にホッとしながらもアティルーナが肯定すると、今度はザミルが愉快そうに言う。


 「本当に面白い獲物ね。それで?貴女はどう手を打つの?」


 「決まってる。奴への御礼も兼ねて反撃する。奴は3階層目に居るのだな?」


 「はい!奴は今も3階層で攻撃を続け、我々を阻んでおります!」


 アティルーナの確認に部下が肯定する報告をすれば、ザミルに「貴様も来い」そう告げて同行させてダンジョンの中をしっかりとした足取りで早足に進んでいく。

 ダンジョン内は多数の負傷者で満ちていた。

 彼等は龍兵の"塩対応"によってズタズタに斬り裂かれながらも、味方に後送された名誉の負傷を負った戦天使達であった。

 そんな戦天使達を治癒させているメディックの立場にある天使を呼ぶと、アティルーナは命じる。


 「この者たちを全員外へ後送させろ。外に居る者達にも私の命であると言って、手伝わせても構わん」


 「了解!」


 返事と共に直ぐに命令を実施しようと背を向けた時、アティルーナは思い出した様に問う。


 「待て。2階層にも負傷者は居るか?」


 「いえ、2階層には攻撃部隊がおります」


 メディックが報告すると、アティルーナは命じる。


 「その者達にも伝令。直ぐに2階層から撤退する様に私が命じたと伝えよ」


 「了解しました!」


 そのメディックが追加された命令を実施する為に同僚にも命令共有するのを見ると、ザミルは感心した様に言う。


 「貴女の部下達は優秀ね」


 「貴様がキチンとしてないだけだ」


 素っ気なく返したアティルーナが早足に歩き出すと、ソレを追うようにザミルも早足で歩き出す。

 そうしてダンジョン内を悠々と進んでいると、アティルーナの命で撤退する一団と遭遇した。

 その一団の先頭に立ってた者がアティルーナの姿を認めると、直ぐに報告する。


 「2階層目からの撤退完了しました!」


 「よろしい。では、貴様等は一回層に居る負傷者達の後送を支援せよ。支援が完了後は包囲部隊に合流し、包囲を継続しろ」


 「了解!」


 その一団が命令を受けた後、直ぐに駆け足で移動し、命令の実施に当たる。

 そんな部下達とは反対方向へ向かうアティルーナとザミルは歩みを進め、2階層目に辿り着いた。


 「ザミル。貴様なら地面に耳を当てれば、下の階の音も聞き取れるだろう?ソレで奴の真上となる位置を割り出せ」


 戦を司る女神として要求し、命じるとザミルは「そんなの簡単よ」そう返しながら命令を実施する。

 それから程なくしてザミルはアティルーナの要求を果たした。


 「此処よ。此処が奴の真上になるわ」


 地面を耳に何度も付けて下の音を聞き取り、龍兵の居る具体的な位置を割り出したザミルを信頼する様にザミルが指し示した場所へ歩みを進めた。

 そして、愛槍でもある無骨なハルバードとシールドを召喚したアティルーナはハルバードの矛先を地面に向ける形で持ち上げると、ザミルに問う。


 「貴様も来るのか?」


 「当然。貴女を翻弄し続けた獲物にして狩人がどんな面構えしてるか?見てみたいわ……勿論、貴女の邪魔はしないわ」


 「勝手にしろ」


 吐き捨てる様にして返すと、アティルーナはハルバードを地面に叩き付けて地面を粉砕。

 そうして、そのフロアの床が砕けて下の階への崩落が起きると、そのまま落下して着地。

 そして、そんな崩落を既の所で躱していた蒼木龍兵と言う敵を見詰め、言う。


 「漸く会えたな」


 その言葉に対し、龍兵は腰溜めにBREN2を構えながら余裕の混じった困った笑みと共に返した。


 「俺は会いたくなかったよ」


 こうして、戦を司る女神と傭兵は相対したのであった。



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