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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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 ヨルダバオトへの"挨拶"と宝珠強奪の二面作戦をまんまと成功させ、陣地転換も完了させた後のセーフハウスではミンが珍しく首を傾げていた。


 「1つ聞いても良いかな?」


 ミンがシガリロを燻らせながら尋ねると、暢気に煙草を燻らせる龍兵はモニターに視線を向けたまま応じる。


 「何だ?」


 「先に言うとコレは文句ではない。だが、普段の君ならば標的を殺してるだろうシチュエーションなのに何故殺さなかった?」


 ミンが首を傾げる原因となった疑問を切り出すと、彼女……プロパテールもソレを疑問に感じていたからこそ、龍兵を見詰めて答えを聞こうとする。

 そんな2人に龍兵は紫煙を吐き出し、振り向かずに思惑とも言える理由を答えた。


 「ふぅぅ……理由は幾つかある。1つは標的サイド側の指揮。と、言うよりは戦略や戦術を崩す為だ」


 「と、言うと?」


 「奴等は地上にある5箇所の在り処を利用し、俺を待ち構える戦略を取った。ソレを考えた奴はキチンと頭が回る手合いと言って良い」


 龍兵は当然の如く語る。

 だが、その語った言葉が何を狙ったのか?具体的に捉えられなかったからだろう。

 首を傾げるプロパテールは問う。


 「ソレがどう繋がるの?」


 問われた龍兵は敢えて質問で返した。


 「そんな優秀な指揮官が自分の遣りたい様にやれない理由って何だと思う?」


 その問いで合点がいったのだろう。

 ミンは確認する様に答える。


 「つまり、君は敵の優秀な指揮官であるアティルーナ……そんな彼女の上に立つ標的であるヨルダバオトがアティルーナの指揮を完璧に出来ない様にするのが狙いだったのか?」


 その確認に龍兵は半分だけ正解と言う様に肯定すると、理由を述べていく。


 「噛み砕いて言うならそうなる。幾ら優秀な戦略家な指揮官でも上からガミガミ言われ、本来取るべき戦略を取れないってのは大きなマイナス以外の何物でもない」


 「成る程。性格が悪いな」


 ミンが納得すると、龍兵は更に続ける。


 「後は敵の戦力分散を狙ったのもあるな。標的サイドにすれば、敵である俺達には本拠地への攻撃も選択肢にある。ソレを嫌でも理解せざる得なければ、滅茶苦茶になった本拠地を守備する為にそれなりの規模の兵を割かざる得ない」


 龍兵が敢えて殺さずに敵本拠地とも言える宮殿に攻撃を仕掛け、更には確保するブツたるプロパテールの断片を奪ったのは敵に知らしめる為でもあった。

 実際問題として、敵に本拠地を滅茶苦茶にされる程の攻撃を受けてしまったら立て直しに奔走せざる得ない。

 その立て直しに用いる戦力を何処から調達するか?それはアティルーナが率いる戦天使達からに他ならない。

 それ故、アティルーナは嫌でも龍兵を倒す為に用いるべき自分の戦力を敬愛する主神たる標的の為、割かざる得ないのだ。

 ならば何故、龍兵はソレを狙ったのか?創造神とは言え、遥か先の時代の考え方や人間の悪辣さを未だ知らぬプロパテールは尋ねる。


 「何故、そうする必要があったの?」


 「そりゃ当然、地上にある残りのブツを確保の為に必要だからに決まってる」


 龍兵がアッケラカンに当然の様に答えれば、ミンは漸く全てに合点がいった。


 「つまり、地上の守備戦力を減らすと共に敵の指揮系統への妨害を狙って君は敢えて殺さずに怒らせるだけに留めたと言うわけか……」


 「そう言う事になる。まぁ、実際は全部御都合主義宜しく上手くいったらラッキー程度なんだけどな……」


 上手くいく確証なんて無い。

 だが、ヤラないよりはヤる方が良い。

 それで上手くいってくれたならば、儲け物なのだから当然だろう。

 ヤラない後悔より、ヤッた後悔の方が良い。

 そんな思惑から龍兵はヨルダバオトへ"挨拶"に行ったのであった。

 龍兵の語った理由にミンは呆れてしまう。


 「君は本当に性格が悪いな。友達居ないだろ?」


 「アンタにだけは言われたくねぇよ。それに、俺はそれなりに友達は居るぞ。元テロリストとか、元軍人とかスパイとか洗濯業者(マネーロンダラー)とか密輸屋とかだけど……」


 そんな答えにミンは益々呆れてしまう。


 「その内の何人かは君のことを嫌ってるのは知ってるかい?」


 「知ってる。お、来た来た」


 そんな遣り取りをしてる内にモニター内に剣や槍で武装した天使達が映りだした。

 モニター内で天使達は血走った目で捜索をしている。

 狙いは勿論、神の敵となった大罪人である龍兵だ。

 そんな肝心の本人はモニターを眺めながらリモコンを手に取ると、トグルスイッチをカチッと鳴らしてからボタンを押す。

 その瞬間。モニターの向こう側で3トンの航空爆弾(FAB3000)を用いたIEDが起爆し、モニターは無機質に青く染まると共にノーシグナルとテロップを出した。

 用が済んだモニターを眺めると、龍兵は煙草を燻らせながら笑顔と共にのたまう。


 「うーん!此処まで上手くいくと俺の読みも捨てたもんじゃないな」


 龍兵は挨拶の後に標的サイドが踏み込んで来ると読んでいた。

 寧ろ、敵の本拠地に仕掛けて報復に来ない訳が無いすらある。

 それ故に龍兵は"挨拶"に行く前に今まで使ってたセーフハウスにFAB3000と呼ばれるロシア製の3トン航空爆弾をIEDに変え、置き土産とした。

 そして、それはまんまと成功した。

 そんな龍兵にプロパテールは尋ねる。


 「貴方は何処まで見通してるの?」


 プロパテールの問いに龍兵は当然の如く答える。


 「こんなの、ちょっと考えれば誰でも思いつく」


 シレッと言ってのける龍兵にプロパテールは困惑してしまう。

 そんなプロパテールにミンは言う。


 「言ったろう?彼は戦略家でもあると……彼にすれば、神等の要素が足されただけでやってる事はやり慣れた仕事でしかないのだよ」


 「貴方は戦士なのに軍師でもあるの?」


 プロパテールが思った事をそのまま口にする様に問うと、龍兵はゲンナリとしてしまう。


 「軍師が参謀の事を指してるなら止してくれ。マジの参謀と比べたら、俺の戦術や戦略なんてハナクソ以下だよ。それに……」


 「それに?」


 「あの人等は常日頃から勝利の為に過労死チキンレースをしてる勤勉な有能な皆様だ。俺みたいな怠け者の無能と一緒にするのは、烏滸がましいにも程がある」


 龍兵が本心から答えると、プロパテールは訳が解らないと言った様子であった。

 だが、ミンは違った。


 「君ね、上級曹長と言う下士官のトップとして将校の補佐してた存在が言うと嫌味にしか聞こえないよ」


 過ぎた謙遜は嫌味になる。そう言う様にミンが言えば、龍兵は切り捨てる様に返す。


 「俺は事実を言ったまでの事だ。さて、此処からだが状況は成功に近付くにつれて難易度が上がる」


 「ほう?」


 「当たり前の話さ。俺がブツを回収する度に標的サイドは余剰の戦力を守備に回せるんだからな」


 その通りであった。

 龍兵が地上にある残りの宝珠を1つ奪う度、敵の戦力規模は増す。

 何せ、防衛目標が失う度に標的サイドは戦力がプールされる。

 そして、その余剰戦力を敵は好きに使える。

 それ故に龍兵は自分の作戦が終わりに向かうに連れ、難易度が上がる。そう見ていた。


 「だが、君の事だから何とか出来るだろう?」


 「バカ言え。俺は独り。向こうは世界丸々1つを戦力に使えるんだ。どう見ても負けるわ」


 龍兵が呆れ混じりにミンへ返すと、プロパテールは尋ねる。


 「それなのに貴方は成功する確信に満ちてる。何故?」


 「そりゃ、気の所為だ。だが、成功させてコイツから報酬を巻き上げる為に努力は惜しむ気も諦める気も無い」


 そう言って除ければ、龍兵は告げる。


 「身体も休めた事だし、今の内にブツの回収に行く」


 「それは構わないが、具体的にどうするつもりだね?」


 「今の連中は俺の"挨拶"で浮き足立ち、どう言う戦術を取るべきか?迷ってると見て良い。だから、その隙を突く」


 龍兵が答えると、ミンは指摘する様に言う。


 「答えになってない」


 「簡単な話だ。俺にブン殴られてふらついてる隙に押し込み強盗をするだけの事だ」


 そう告げると、龍兵は煙草を灰皿に押し付けてから立ち上がる。

 それから支度を始めた。

 用意したのは酸素ボンベとスカイダイビング用のスーツ。それにパラシュートであった。

 そんな用意した品を見ると、ミンは尋ねる。


 「空から侵入するのかね?」


 「あぁ、深夜に闇に紛れてな」


 「そうか……因みに何処へ降下するのだね?」


 ソレを問われると、龍兵はモニター前に灰皿と共にあった資料の1枚を取り、ミンに差し出しながら告げる。


 「このファルサルって言う遺跡化した古代の街のダンジョンだ」


 「ファルサル……」


 ファルサル。その地名を聞くと、プロパテールは懐かしさや哀しさの混じった感情を露わに漏らす。

 そんな彼女を他所に龍兵は支度を進めてると、彼女……プロパテールは要求する。


 「私も連れて行って」


 その言葉に作業の手を止めた龍兵はプロパテールに振り向き、即座に斬り捨てる。


 「却下だボケ」


 「お願い」


 切り捨てられたプロパテールが引き下がらずに居ると、ミンが助け舟を出す様に強権を発動させた。


 「依頼人として命じる。彼女を連れて行け。その分のボーナスも払う事を確約する」


 依頼人としてミンが命じると、龍兵は少し考える。

 それから程なくして龍兵はプロパテールに尋ねる。


 「付いていきたい理由を言え」


 その問いにプロパテールが答える事は無かった。

 そんな彼女に龍兵は別の事を尋ねる。


 「ファルサルの地形は知ってるか?」


 「遺跡となる前のなら知ってる」


 「…………良いだろう。だが、俺の指示には従え。ソレが嫌なら、お断りだ」


 神への敬いが皆無な要求をプロパテールは呑んだ。


 「貴方に従う」


 「決まりだ」


 そう言う事になれば、龍兵は面倒な荷物が出来た。と、言わんばかりにゲンナリとしながら支度を進めていくのであった。





 

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