レッツカチコミ
天界に在るプロパテール住まう宮殿。否、ヨルダバオト住まう宮殿に3発の大型クルージングミサイルがブチ込まれた。
3度の爆発と共に宮殿と宮殿を取り囲む城壁の一箇所が崩れ落ちていく。
クルージングミサイルによって宮殿が蜂の巣を蹴飛ばした様な騒ぎとなると、ソイツは現れた。
対爆スーツとボディーアーマーに身を包むズングリムックリとしたソイツ……否、龍兵は崩れ落ちた城壁を悠々と通り抜け、ノシノシと歩みを進めていく。
そんな龍兵を目の当たりにすると、混乱していた天使達が困惑の色を露わにしてしまう。
すると、そんな天使達に対し、龍兵は携えていたホロサイト付きのM240Bを構え、引金を引いた。
そうして喧しい銃声と共に天使達へ7.62NATO弾のシャワーを浴びせれば、未だ息のある天使が最後の力を振り絞ってアラートを響かせる。
「敵襲ぅぅ!!」
その叫びを最後にバタッと動かなくなれば、龍兵は再びノシノシと歩みを進め始める。
アラートが響いた事で宮殿を守護する近衛であろう武装した天使達が駆け付ける様に湧いて出て来た。
そんな近衛天使達に対し、龍兵は待ってました。そう言わんばかりに引金を引く。
銃声と共に近衛である天使達が多数の7.62NATO弾によってズタズタに斬り裂かれ、バタバタと倒れて逝った。
そうしてやって来た近衛天使達を射殺すると、龍兵は再び前進。
程なくして宮殿の出入り口まで来ると、扉の脇に立った龍兵は扉をバックキックで蹴破った。
その瞬間。待ち構えていた天使達全員から魔弾が放たれる。
だが、放たれた無数の魔弾は虚空を通り過ぎるだけに終わってしまう。
そんな中で何時の間にか立っていた龍兵は脇に下げていた大きな四角いサッチェルバッグ……否、10キロのC4が詰まった梱包爆薬を取ると、点火器のピンを引っ張って点火するなりエントランスに投げ込んで倒れる様にして伏せた。
伏せてから程なくしてエントランスが10キロのC4爆薬によって吹き飛び、その場に居た天使達は強烈過ぎる衝撃波によって肉片と化して逝く。
そうしてエントランスを吹っ飛ばした龍兵は立ち上がると、M240Bを手に中へと入って行く。
エントランス内は酷い有様の一言に尽きた。
エントランス内を練り歩く龍兵は救出対象である彼女から教わったルートを頭に思い浮かべると、玉座の間へと歩みを進めていく。
そんな龍兵の戦いぶりをモニター越しにセーフハウスから眺めていた彼女は、ポツリと漏らした。
「彼は愉しんでるのに何故、的確に戦う事も出来るの?」
自分の知る狂戦士は戦いを楽しむだけで、何も考えてない。
だが、龍兵は違う。
合理に徹すると共に的確に判断を下しながらも、大いに愉しんでる。
狂戦士であるのに、冷静な判断が出来る。
そんな龍兵に彼女が困惑すれば、ミンは一言で語る。
「前も言ったが、彼は愉しむ者なのさ」
ミンの言葉に彼女は首を傾げてしまう。
そんな彼女を見ると、ミンは龍兵が天使達をM240Bで掃射するのを眺めながら語っていく。
「彼は戦場と言う狂った場で最も素早く的確な判断を下せる程に適応が進み過ぎた愉しむ人間だ。それ故、その判断を下す事や敵そのものを殺す事に対し、快楽を覚える。だからこそ彼はイカれてはいるが、最高の戦士にして最高の戦略家なのだよ」
「つまり、戦争に適応してる?」
モニター内で龍兵が部屋に手榴弾を投げ込んで爆破してるのを他所に彼女が問えば、ミンは肯定する。
「そうだ。まぁ、厳密に言うならば、適応し過ぎてると言うのが正しいかな?」
ミンはそう答えると、龍兵が各部屋を爆破して回ってるのを眺めながら「まるでボンバーマンだな」そう漏らす。
そんなミンに彼女は尋ねる。
「彼は平和な世界で生きられないの?」
「とんでもない。彼は楽しめる者だよ?平和な日々に退屈を感じてるからと言って、平和の中で楽しみを探す事を楽しめる人間だ」
意味が解らなかった。
だが、ミンの言わんとする事が何となく理解出来たのだろう。
彼女は確認する様に言う。
「退屈すらも愉しむと言う事?」
「そうだ。彼は退屈すらも愉しむための遊びの道具に変えるんだ。ホント、彼はデタラメだ」
そう答えるミンは愉しそうであった。
そんなミンを意外そうに見ると、彼女は好奇心から尋ねる。
「貴方は彼を気に入ってるの?」
「あぁ、気に入ってる。それに仕事を頼む先で彼が使えるならば、真っ先に頼みたい程に信頼もしてる」
「貴方が邪悪なる女神であるから?」
ある意味でミンの事を龍兵よりも深く知る彼女が問うと、ミンは本来の姿を露わにしながら否定する。
「そう言う訳じゃないわ。後、アレを恋愛対象として見るのは無いわね……好きな部類ではあるけど」
シレッと酷い事を言う金髪を黒い髪に戻し、ピンクメタリックのスーツを胸元だけ開けさせるミンは更に続ける。
「貴方が唯一愛した彼……エンノイアとは正反対なのも相まってね」
エンノイア。
その名を聞くと、彼女……プロパテールは沈黙してしまう。
そんな彼女にミンは何も言う事無くモニターに向くと、シガリロを燻らせながら龍兵のカチコミを眺める。
モニターの中での龍兵は、一騎当千。獅子奮迅の言葉が似合う程の戦いを魅せていた。
群がる武装した天使達を次々に孔だらけにし、時には手榴弾を投げつけて薙ぎ払う。
勿論、途中にある部屋にも手榴弾を投げ込んで無理矢理クリアリングする。
そんな龍兵のフェイスガード内にある顔は嗤っていた。
だが、嗤っているものの龍兵の内心では疑問があった。
出来るんだから気にする必要は無いし、考えなくても良いんだろうが、何だって単なる銃弾で天使が死ぬんだ?
そう。大地に生きる生命の軛に収まる存在ではない筈の天使達が、単なる銃弾と爆発物で殺せてしまう。
それに龍兵は疑問を感じていたが、直ぐにある事を思い出した。
そういや、この世界ってレベル制があったな……
そう。この世界は忘れられているだろうが、レベルアップするステータスが存在していた。
龍兵は此処に来る以前に数えるのもバカらしい数の人を、モンスターを。果てにはドラゴンを始めとしたボスクラスすらも殺して来ている。
そんなキルスコアは、当初レベル1であった龍兵を最高レベルにまでレベルアップさせるに充分過ぎた。
そして、今。多数の天使達を屠っている。
レベルアップは既に本来の限界値を超え、人間では生涯をかけても到達不可能なレベルまで到達してしまっている。
ソレはミンが手を加えた産物であった。
そんな仮説を自分の中で立てると、龍兵は呆れながらミンが何者なのか?手にしたM240Bで天使達を射殺しながら考える。
ミン……あのクソ野郎が人間じゃないのは解ってたつもりだ。
だけど、アイツって何者なんだ?
龍兵の知るミンは、裏社会と言うピラミッドの頂点に長年君臨し続ける武器商人であり、表裏問わず無数の情報を扱える情報ハブとも言える王と言えた。
そんなミンが人間じゃない事実は軽く受け流していたつもりであったが、実際の所は大きな気がかりと言える疑問であった。
だからこそ、龍兵は珍しく気になっていた。
しかし、同時にどうでも良い事でもあった。
アイツがネトフリのトゥームレイダーのアニメに居た様な人間界を謳歌してる神だろうが、悪魔だろうが知ったこっちゃない。
俺は俺の仕事をするだけだ。
其処で考えるのを辞めた龍兵はM240Bを脇に抱えて練り歩き続ける。
途中で天使を見れば容赦無く7.62NATO弾のシャワーを浴びせていく。
例え、戦闘の意思が挫けて助けを求めようが関係無い。
此処は龍兵の決めたフリーファイアゾーンなのだから……
そうして次々に天使を殺し、各部屋を爆破しながら奥へ進み、階上を昇って行けば玉座の間の前へと辿り着いた。
M240Bから伸びる金属製のフィーダーを介し、繋がる弾薬箱代りのバックパックに残る弾は少ない。
それ故に龍兵はM240Bの最後の役目と言わんばかりに腰溜めに構えると、扉と壁目掛けて乱射した。
喧しい銃声が絶え間なく響き、壁と重厚な扉が孔だらけとなると共に貫通して向こう側に弾幕が作られていく。
それから程なくして沈黙が訪れて弾切れとなれば、龍兵はバックパックとM240Bをその場に捨てた。
そして、7.62NATO仕様で自分好みのカスタマイズがされたBREN2を召喚すると、龍兵は歩き出す。
反対側の穴だらけになった壁まで歩みを進めた龍兵は壁にシート状にした爆薬を貼り付け、爆破。それから間髪入れずに突入するや、目に付く天使達を射殺した。
数秒も掛からずに残っていた天使達が皆殺しにされ、部屋に居る生きた者が龍兵と玉座に座する標的だけとなれば、龍兵は銃口を標的に向けたまま語り掛ける。
「よう!偽りの神様!俺に会いたかったか?」
そんな龍兵に対し、怒りを覚えながらも標的であるプロパテールを偽りし神……ヨルダバオトは口を開いた。
「貴様。どうやって此処へ来た?」
「歩いて来た」
軽いノリでそう返すと、龍兵は構えを解いた。それから自分の頭をスッポリと囲むフェイスガード付きの重厚な耐爆ヘルメットを脱ぎ捨て、気持ち良さそうに言う。
「あー暑かったぁ!コレでスッキリだ」
心の底から気持ち良さそうに漏らした龍兵は手にしていたBREN2を肩にかけて脇に提げると、アーマー上部にある小さなパウチから煙草とライターを取り出した。
「1本吸わせて貰うぜ」
そう宣ってから煙草を咥えて火を点せば、龍兵は気軽な雰囲気と共に尋ねる。
「なぁ、どんな気分だ?俺みてぇなカスな存在に自分の組み立てた作品を台無しにされた上に、こうして目の前に立たれる気分は?」
その言葉にヨルダバオトは極めて不愉快な様子を露わにする。
だが、何も言わない。
そんなヨルダバオトに対し、龍兵は言葉を続ける。
「何だよ?ダンマリか?舌無くしたか?」
挑発する様に。否、完全な挑発をしてもヨルダバオトは心底不愉快そうにしながらも余裕を崩す事は無かった。
「言い残す事はそれだけか?イレギュラー?」
「バカ言え、言いたい事は他にもある」
「ほう。興が乗った……好きなだけ囀ってみろ道化」
ヨルダバオトの赦しが出ると、龍兵は「なら御言葉に甘えて」そう前置きしてから述べる。
「一つ教えてくれないか?。アンタは大方、召還した勇者達に英雄譚をさせた後に護るべき人々から殺される悲劇を考えてたんだろ?」
その問いにヨルダバオトが何かを言おうとして沈黙すると、龍兵は「図星かよ」そう漏らしてから更に言う。
「なら、アンタの物語つうか脚本はゴミだな。物語ってのはハッピーエンドの方が観客に受けるんだぜ?とは言っても、アンタの物語に観客って居るのか?怪しいもんだがな……」
その言葉にヨルダバオトは怒りを露わにしながらも堪えると、龍兵は気にする事無くもう1つ脇にあった梱包爆薬を手に取りながら笑みと共に問う。
「さて、話は変わるけど……アンタはコレを読めてたか?」
そう問うたと同時。龍兵は点火したばかりの梱包爆薬をヨルダバオトに投げた。
ヨルダバオトがソレをサイコキネシスの要領で止めると共に結界を張ると、玉座の間が吹き飛んだ。それはもう見事に。
何事も無かった様にヨルダバオトが手を払うと、部屋中に立ち込める粉塵を払われていく。
そんな払われた粉塵の向こう側に龍兵の姿は無かった。
周りを見廻しても居ない。
それにヨルダバオトが首を傾げると、一人の天使が慌てた様子で駆け込んで来た。
「申し上げます!!」
「何だ?」
「地下に封じていたヨルダバオトの断片が何者かに奪われました!!」
顔を蒼白にさせながら天使が報告すれば、ヨルダバオトは憤怒を露わにするしか出来なかった。




