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異世界ブラックオプス   作者: 幽霊@ファベーラ


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16/42

プラン構築


 情報通りならば、敵である標的サイドは多数の兵を地上に割いて、俺を殺そうと手ぐすねを引いて待ち構えている。

 そのお陰でブツの在り処が判明した。

 だが、其処へ行くのはブッチャケ自殺行為に等しい。

 なら、すべき事は1つだ。




 「ミン。お前、標的サイドが展開して露見する以前からもう1つのブツの在り処を知ってたりしないか?」


 黒の戦闘服に身を包んだ龍兵に問われると、ミンはさも当然の如く答える。


 「あぁ、知ってる」


 アッサリと肯定されるが、龍兵は驚かなかった。

 寧ろ……


 「やっぱりな」


 「驚かないんだな」


 「アンタの事で一々驚いてたら身が持たねぇからな……で、そのもう1つは()()()()()。違うか?」


 龍兵が問うと、ミンはソレもアッサリ認め、具体的に答えていく。


 「その通りだ。更に言うなら、標的の住まう宮殿だ。宮殿の何処にあるか?具体的には解らなかったがね……」


 その情報を知ると、龍兵は瞬時に決断した。


 「なら、予定変更だ」


 「と、言うと?」


 ミンが意外そうに尋ねれば、龍兵はアッケラカンに答える。


 「連中の裏をかく」


 ソレを聞いた瞬間。

 ミンは悪戯をしようとする子供の様にワクワクとした様子で問う。


 「何をするんだい?」


 問われた龍兵は笑顔で答えた。


 「折角だから、挨拶してやる」


 「ほう。私に出来る事は?」


 龍兵が何を考え出したのか?察してるかの様にミンが問えば、龍兵は要求する。


 「コレをするのは俺独りでは無理だ。だから、アンタにはチームを揃えて欲しい」


 「君ならそう言うと思って用意してある」


 ミンが当然の如く返せば、龍兵は具体的にする事を答えた。


 「陽動を交えた押し込み強盗。一言で言い表すならコレに尽きる」


 「陽動は君が?」


 ミンの確認の問いに龍兵は当然の如く認めると、理由を語る為に敢えて問う。


 「そりゃそうだ。標的は完璧主義の全て上手くいくと自惚れてる脚本家なんだろ?」


 「その通りだ」


 「なら、その脚本を滅茶苦茶にした張本人である俺を殺したくて殺したくて仕方無い訳だ」


 そう答えれば、龍兵の非の打ち所の無い陽動成功の根拠にミンは納得するしか無かった。


 「つまり、君自身を囮にする事で私達は悠々とブツを確保出来ると言う訳か……」


 「安全かつ確実な方法だろ?」


 自らを危険な立場にするにも関わらず、龍兵は楽しい遊園地へ赴く子供の様にワクワクした様子であった。

 そんな龍兵にミンは呆れながらも、認めるしかなかった。


 「まさに非の打ち所の無い作戦だな。そう言う事なら私は喜んで、チームに空き巣をさせよう」


 「是非そうしてくれ」


 こうしてミンとの簡単な打ち合わせが完了すると、龍兵は自分とミンの遣り取りを沈黙と共に見詰めて居た彼女の方を向き、要求する。


 「さて、其処のお嬢さん。君にお願いがあるんだ」


 「私に?」


 彼女が首を傾げると、龍兵は彼女の前に立つと何故かその場にしゃがんだ。そうして目の高さを彼女に合わせると、龍兵はお願いの前に問うた。


 「標的である君の弟の住まう宮殿は君の住まいでもあった。合ってるかな?」


 「合ってる」


 彼女が肯定すると、龍兵はお願いを切り出す。


 「つまり、君は宮殿内の構造をそれなりに把握している訳だ。なら、君には君の弟が居るだろう部屋の位置を教えて貰いたい」


 そのお願いを聞くと、お願いを果たした結果。訪れるだろう結末が思い浮かんだのだろう。

 彼女は確認する様に尋ねる。


 「弟を。ヨルを殺すの?」


 そんな問いに対し、龍兵は意外とも言える答えで返した。


 「()()()()()()殺さない」


 その意外な答えに彼女は無表情ながらも驚き混じりに問い返してしまう。


 「何故?」


 「目的はあくまでもブツ。つまり、君から切除された宝珠の確保。それと、"挨拶"をしに行くだけだからだ」


 そう答えると、彼女は意味が解らずに困惑してしまう。

 そんな彼女を他所に龍兵は立ち上がると、ミンの方を向いて尋ねる。


 「このVIPは、お前と同じ扱いにした方が良いか?」


 ミンと同じ扱いにするべきか?

 ソレは一言で言うならば、救出対象から依頼人として扱いを変えるべきか?

 そんな問いを投げられると、ミンは答える。


 「君の好きにしたまえ」


 「なら、依頼人としては扱わん」


 その言葉は彼女が要求しても一切呑まない。

 仕事人として線引きを意味していた。

 そんな龍兵に彼女は尋ねる。


 「その場でヨルを殺せば良い筈なのに何で殺そうとしないの?」


 当然の事を問われれば、龍兵は正直に答えた。


 「コレは俺の最後の仕事。コレが終われば、俺は退屈な日々に戻る。だからこそ、大事に長く愉しみたい」


 狂気に満ちた笑みと共に龍兵が答えると、彼女は益々訳が解らないと言った面持ちで首を傾げてしまう。

 そんな彼女にミンは言う。


 「知る者は好む者に及ばない。好む者も楽しむ者には及ばない……彼は自分の立てた作戦を楽しんで成功させたいのさ。それこそ、君の愚かな弟の様にね」


 ミンの言葉に彼女は理解に苦しむと言った様子で漏らす。


 「意味が解らない」


 「俺は俺のヤりたい様にやる。その方が楽しくて面白そうだから、俺は敢えて殺さない選択肢を取った。ただ、ソレだけの事だ」


 この仕事を楽しんでる。

 そう宣言する様に龍兵が答えれば、彼女は益々理解に苦しむしか出来なかった。

 そんな彼女とミンを他所に龍兵は支度を始める。


 俺自らが囮になっての陽動。

 言うは簡単だが、やるのは難しい。

 いや、寧ろ自殺行為だ。

 でも、戦い抜いて生き延びるのが面白いからやる。

 こんな面白いシチュ、誰にも譲ってやらん。


 そんな事を心の中で独り言ちると、龍兵は考える。


 自らを囮に陽動するとして、どう言うスタイルで行くべきだ?

 普段通りの軽いスタイル?

 それともCoDのプライスみたいにガチガチの装甲に身を固めてジャガーノート?


 「迷うなぁ……どっちも魅力的で」


 どちらにもメリットとデメリットはあるが、どちらも魅力的であった。

 だからこそ、龍兵は迷ってしまう。

 それ故に龍兵はポケットからコイン(500円玉)を出すと、親指で上に弾いた。

 落ちてくるコインを手の甲に着地させ、コインの上に手を乗せた龍兵は胸中で言ちる。


 表なら軽装。

 裏ならジャガーノート。


 ワクワクした様子で手を退かすと、コインは……裏だった。


 「アガるな」


 ノリノリでそう漏らすと、龍兵は支度を本格的に始めるのであった。



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