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第四十一話

第四十一話




 Q.遮蔽物にしている乗り物が火を噴いたらどうするか?


 A.逃げる。




「新車にご注意を」




 クアトロ・セブンがそう告げて慌ててMD500Nから離れていく襲撃者を確認してから銃撃を加えた。MD500Nは終ぞガソリンに火が周り大爆発をする。これで暫くは向こう側から攻撃は通行も攻撃も出来ないはずだ。


 クアトロ・セブンはそう思って立ち上がった瞬間に前方から金色の線飛んでくるように見えた。次の瞬間、アヴェンタドールがガチャンとすさまじい音がして、ライトが切れてしまった。フロント部分が何やら黒く焦げている。まるで落雷が落ちたように。




「おいおい、まさか魔法少女が敵に居るのか?」




 ジェーン・ザ・リッパーが構えを取る。すると燃え盛るMD500Nの後方から一つの影が飛んできた。漆黒の戦闘服に身を包み顔をバラクラバで隠している。右手にはQBBが握られている。QBB-75。中国製のQBZ-75を原型とする分隊支援用火器だ。


 口径は6.8mm。装弾数は75発のドラムマガジンにQBZの付ける30発弾倉も付けれるはずだ。バイポッドの代わりに大型のフォアグリップが握られている。また、上部のキャリーハンドルには半ば無理やり付けられた中国製のドットサイトコブラが載っていた。




「BFで私あんな感じで使ってるわ」


「奇遇ですね、私もでございます」




 ジェーン・ザ・リッパーとクアトロ・セブンがそんな事を告げる。


 2人の頭のなかには敵は中国政府の差金なのか?と言う疑問が出る。しかし、前方に立っている魔法少女は二人の記憶が正しければウィークエンドのお供に居た黒子だ。




「あれはQBB-95ではなく、QBB-97なのでしょうか?」


「さぁ?私はミリオタじゃないんでね。


 95だろうが97だろうがどっちでも良い。取っ捕まえて吐かせりゃ済む話。そうじゃないかしら?」


「ええ、そうですね」




 クアトロ・セブンは今は目の前の存在が何処の敵かを探る時間ではない。目の前の存在を捕まえる事が重要なのだ。


 クアトロ・セブンは弾倉を交換して狙いを定める。




「降伏しなさい。


 悪いようにはしません」




 クアトロ・セブンの言葉に黒子の魔法少女はQBBを撃つという返答をした。狙いはジェーン・ザ・リッパーだ。


 片腕で反動を抑えこみ、ほぼ無反動に近い反動で弾丸をばら撒いてくる。ジェーン・ザ・リッパーは弾丸を切り落とし、クアトロ・セブンが反撃する。しかし、黒子の魔法少女は空いている左手を前に突き出す。クアトロ・セブンの放った弾丸は空中でバチンと弾かれてあらぬ方向に飛んで行くではないか。


 弾丸が弾かれた際に何か青白い光がでたのをクアトロ・セブンは見逃さない。


 黒子の魔法少女が何らかの力で弾丸を弾いたのだ。




「電気を扱う魔法少女のようですね」


「学園都市の第三位?」




 ジェーン・ザ・リッパーはそう笑うと左手にもう一振り刀を出した。


 構えは腕を大きく左右に振り上げた、まるで威嚇する蟹のような構えである。




「狙いは私のようだよ、クアトロ」


「その様ですね。


 ですが、態々相手の“お願い”を聞くほど私達は優しくありません」


「勿論。


 プロですから」




 ジェーン・ザ・リッパーはそう笑うとクアトロ・セブンが黒子の魔法少女の頭部に向けて弾丸を放つ。弾丸は全て弾かれ、黒子の魔法少女は無駄だと笑んばかりに笑う。が、狙いはそこではない。ジェーン・ザ・リッパーはそれに合わせて凄まじい速さで駆け出した。彼我の距離は300メートル。甲種魔法少女が本気の跳躍をすれば一呼吸する間もなく到達する距離だ。


 そして、眼前を覆う火花と街灯だけというちっぽけな明かりのせいでジェーン・ザ・リッパーの行方を一瞬見失った黒子の魔法少女は次の瞬間には目の前にいたジェーン・ザ・リッパーに遅れをとった。


 突き出された左腕を切り落とさんと振り下ろされる刀に黒子の魔法少女は自身の左腕が失われる覚悟をした。しかし、次の瞬間、黒子の魔法少女もジェーン・ザ・リッパーも、クアトロ・セブンすらも予想をしていなかった出来事が黒子の魔法少女の左腕を守った。


 何処からとも無く飛んできた弾丸がジェーン・ザ・リッパーに当たったのである。たかだか6.8mmの弾丸だ。ジェーン・ザ・リッパーを殺すどころか傷つける事すら願わない。全員が弾丸の飛んできた方向を見ると襲撃者達がQBZ-95を持って分離帯の茂みから銃口を突き出していた。


 黒子の魔法少女は驚いていたジェーン・ザ・リッパーの隙を見逃さない。人間が当たれば一撃で死ぬだろう100万ボルトに近い電撃を放つ。ジェーン・ザ・リッパーはその稲妻を両手に持った刀を投げ付けるという方法でなんとか防ぐ。




「やる!」




 ジェーン・ザ・リッパーが新しく刀を出して攻撃をしようとしたがQBZに依る銃撃でそれを防がれてしまう。


 黒子の魔法少女は手にしているQBBを中央分離帯の向こう側に投げる。ガシャンという落下音がしないのでどうやら向こうの襲撃者に火力強化の為に渡したのだろう。そして、空いた右手で近くの街灯を全て破壊してしまった。


 これで完全に暗闇に成る。クアトロ・セブンはジェーン・ザ・リッパーの援護射撃が出来無くなってしまう。


 クアトロ・セブンはどうしたものかと考えていたら突然無数の弾丸が飛んでくるではないか。クアトロ・セブンはアヴェンタドールの後方に隠れるとガンガンガンと弾丸がアヴェンタドールを襲う。ライフル弾はアヴェンタドールをアッと言う間に廃車にするだろう。しかし、エンジン周りは中々どうして壊れない。当たり前だ。エンジンは自身の中でガソリンを爆発させているのだからたかだか数グラムの弾丸をぶつけられた程度で壊れていたら走れないだろう。




「しかし、修理費だけでもう一台買えそうですね」




 他人の車であるが、自分のせいでヘタすると廃車になってしまうであろうランボルギーニをみて心を傷める。


 バイポッドを展開して反撃開始。弾頭はゴム弾頭。相手を殺しては駄目だ。情報が引き出せない。また、相手は人間だ。魔法少女が人間を殺す事は絶対にあってはならない。何故なら魔法少女はキメラではないのだから。


 暫く不毛な銃の撃ち合いをしていると携帯が掛かって来た。ヘッドギアから柳葉の声が聞こえてきた。




「俺だ。お前達の位置を特定した。


 いま、ベルサイユと赤池を遅らせた」


「ええ、コチラにはウィークエンドのお付とその部下4名から5名がおり、絶賛銃撃戦中です。


 ジェーンがウィークエンドのお付と戦っています。私はその部下と戦ってます。連中、QBZ突撃銃で武装をしているようです」


「何だそれは?」




 柳葉の返答にクアトロ・セブンは解放軍が装備しているアサルトライフルですよと告げた。その返答に柳葉は中国軍が来てるのか!?と驚愕した。




「それはわかりません。


 ですが、少なくとも人民解放軍の様な中国語は聞こえません。日本語ですね」




 クアトロ・セブンが耳を澄ませて銃声に紛れて聞こえる言葉は全て日本語だ。しかも、動揺しているらしくどうするんだ?とか見えないぞと声が聞こえてくる。


 その中で一際冷静に指示を出しているのがリーダーらしい。暫く撃ち合いを続け、ふとある作戦を思い付いた。向こうから銃撃が返って来て、至近弾があった瞬間に小さく悲鳴を上げるのだ。




「ギャッ!?」




 アヴェンタドールの上にBARを放り出し、影に隠れる。クアトロ・セブンの悲鳴を聞き、誰か撃たれたのか?と確認を取っていた。全員が無事だと分かった途端、彼等は一旦銃撃を止めた。そして、そっと生け垣の上から顔を出す。アヴェンタドールの上にBARが転がっているのが見えたはずだ。


 向こうでもゴソゴソと話し声が聞こえてくる。


 そして、生け垣をガサガサ音がして数人の兵士が現れた。手にはQBZを握っている。3人の兵士が現れそれぞれがお互いを援護するようにしてアヴェンタドールに近付いて来る。クアトロ・セブンは弾頭をゴールデンセイバー弾頭だ。ゴールデンセイバー弾はレミントン社が製造した弾頭で文字通り金色の弾頭である。


 弾頭には螺旋状に切込みがあり、着弾すると花弁のように広がりその様子からバナナピール現象と言う現象を引き起こす。そして、そんな凶悪な弾頭を乗せたライフル弾を携えたBARを持ってクアトロ・セブンはアヴェンタドールの影から飛び出した。


 3人は丁度アヴェンタドールと中央分離帯の中間に居た。クアトロ・セブンは飛び出るとトリガーを引くと3人の足元を凪いでいく。膝から下、足首あたりを狙ってトリガーを引く。1人は左足首に直撃し、足を吹っ飛ばされてその場に倒れ、他の2人も脛辺りに着弾して足の肉をほとんど失い倒れた。




「まだ生きてるぞ!」


「畜生!撃たれた!撃たれた!!」


「俺の足が!!」




 そして、更に2人が飛び出てくる。1人がクアトロ・セブンに銃撃を加えるが、クアトロ・セブンはそれを受ける。BARを縦に、体の中心に持ってきてものすごい速さで銃を撃っている者の懐に入る。そして、縦に構えていたBARの銃床を顎に叩きこむ。ベギャリと音がし顎が砕け、男が気絶し倒れる。


 更に次の襲撃者が仲間を引っ張りながらクアトロ・セブンに銃撃を加えるが、多少の被弾すら気にしないクアトロ・セブンには一切の躊躇いがない。


 魔法少女と一般人の最大の違いが此処である。彼女たちに通常弾では殆どダメージが入らない。クアトロ・セブンに着弾する弾丸は彼女の肌を傷付けて行くが、貫通する物は一切ない。勿論、貫通しないだけで彼女の肌は赤く腫れているだろうし数日は青い字になるだろう。


 魔法少女を殺すなら最低でも30口径ライフル弾を必要とする。




「大人しくして下さいまし」




 更に残った襲撃者の腹部に凄まじい一撃を叩き込む。乙種魔法少女は甲種魔法少女に比べて肉体的な性能は低い。が、一般人と比べるまでもなく高い。軽く殴っただけで襲撃者は気絶してしまった。




「後は1人ですか?」




 クアトロ・セブンは弾頭をゴム弾に替えて垣根を飛び越えた。


 垣根の向こうには禿頭の男が1人、QBBを持って立っている。




「降伏しなさい。悪いようにはしません」


「……フン」




 禿頭の男は馬鹿にしたように鼻で笑うとQBBを構える。直後、2人の後方から垣根からジェーン・ザ・リッパーと黒子の魔法少女が飛び出てきた。ジェーン・ザ・リッパーの刀は魔法少女の両腕に深々と突き刺さっており、高速道路の地面に縫い付けた。




「つーかまーえた」




 ジェーン・ザ・リッパーは黒子の魔法少女の被っていたバラクラバを取り去った。




「降伏しなさい」




 クアトロ・セブンは再度告げる。禿頭の男はQBBを脇に放り捨てると両手を上げた。直後、バタバタと音がする。見ると警察のヘリが1機飛んで来て、高速道路に着陸する。荷台からはM1919を担いだベルサイユとM3ベネリショットガンを担いだ赤池が降りる。




「やぁ、終わっちゃったかな?」


「みたいだな」




 2人は高速道路を見てからそう告げる。クアトロ・セブンが捕獲した6名の襲撃者達は止血や応急処置を施されて魔法少女協会の息の掛かった病院に運ばれる。また、両腕を封じられた黒子の魔法少女は拘束具を待ってから連行した。


 腕は綺麗に刺したので暫くすれば何の障害もなく動かせるだろうとの事だ。




「あらあら、随分と酷い格好ね」


「お前がボロボロに成るって初めて見たな」




 そして、犯人達が護送されたのを見た4人は改めて集まる。ベルサイユは腕をボロボロに成ったメイド服を纏っているクアトロ・セブンを見やる。クアトロ・セブンはパチンと指を鳴らすと服が一瞬光り元通り綺麗なメイド服に戻る。




「しかし、ジェーンには悪い事をしました」


「うん?」




 クアトロ・セブンの言葉にジェーン・ザ・リッパーは垣根を割って奥を見る。其処には廃車寸前のアヴェンタドールが一台。右側面は無数の弾痕が穿たれており、内装もシートも全てがボロボロに成っていた。




「お、おぉぉ……私のアヴェンタドールが……」


「あれって幾らぐらいするんだ?」


「……4300万」


「え?」


「アヴェンタドールは新車で4300万した。あそこに更に改造して大体5千万位……」




 ジェーン・ザ・リッパーが愕然とした表情で足元に崩れ落ちる。全員がなんとも言えない表情でジェーン・ザ・リッパーに同情する。




アラブ首長国連邦でアヴェンタドールをパトカーに採用してると知って愕然とした小市民S



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