第三十五話
第三十五話
昇と仁は真の家にやって来ていた。此処最近、慶太郎と共に部活に一切来ていないのだ。慶太郎に関しては何やら学校も家も把握しているけど詳細は教えられないとか言う実に怪しい公欠であるが、真に関しては完全に不明で家の方も無事だというメールを置くているだけで一向に音信不通なのだ。
二人が家に訪れると彼女の母親は憔悴しきっており、家の中はあまり家事がされていなかった。
「深見昇です。山口えっと真、さんとは同じ部活です」
「い、井上仁です。ま、真さんとは同じクラスで、お、同じ部活です」
2人は真の母親に挨拶をする。母親は真がいつもお世話になっておりますと告げる。お茶を出そうとしていたが直ぐに来客用の湯のみが出ず、また家の中もほとんど掃除されていないとかで2人が色々と簡単な掃除をした後の挨拶だ。
「迷惑をかけてごめんなさいね。
真、何処か行ってしまって……」
母親はそれだけ言うとウゥッと鳴き出した。昇は見るに耐えんという表情で少し失礼と咳を後にする。そして、廊下に出て携帯を取り出し柳葉に電話を掛ける。
「どうした?お前から電話とは珍しいな」
「僕の同級生である山口真と言う少女が此処最近家出しているそうです」
柳葉が待ってろと言う奥のほうでカタカタと何か音がした。どうやら、柳葉がパソコンで調べているようだ。
「おう、あったぞ。捜索願は出されたが、どうも解決してるらしいぞ。
中警察署の生活安全課では何故か解決済み事案として処理されてる」
「何?」
「詳しくは分からんが、帰って来たとかでそのまま解決してるそうだ」
昇はリビングで仁と話している真の母親を見遣る。あれが子供が帰って来た母親の表情ではない。
「巫山戯るな。真は帰って来ていない」
「だろうな。提出されて3日で解決したとはありえん。
しかも、提出してきた人物ではなく従姉妹と名乗る若い女が来たらしい」
「その若い女が怪しいな」
「ああ」
柳葉がこっちでも調べておくと告げると電話を切った。
「……失礼しました。
警察には?」
「既に捜索願は出しましたが、何も行って来ません」
それはそうだ。警察の方では既に解決済みなのだから。
「……真さんの部屋を見ても?」
「はい、どうぞ……」
昇と仁は真の部屋に。真の部屋に入る際、仁は女子の部屋に入るとかと一人ニヤニヤしていたが昇は何の感慨もなく部屋に入っていった。部屋はけっこう散らかっていた。
昇は少し眉を顰め、汚いなと呟く。
「それじゃあ、私は下に居ますから」
母親はそう告げると足早に去っていった。どうやら部屋に居るのが辛いらしい。昇は先ず机を漁りだす。棚には教科書が並べてある。机の上はノートPCだ。昇は仁にノートPCを投げ渡し、机をどんどん漁って行く。机に鍵が掛かっていたが、ピッキングツールを使用し開ける。
ピッキングツールに関しては魔法少女に渡される鍵で、いざと言う時にこれを使って鍵を開けろという物であるが、基本的に、と言うか魔法少女のほぼ全員が屋内に突入する際は扉を蹴り壊したりするダイナミックエントリー方法を採用するのでご丁寧に鍵をピッキングツールで開ける魔法少女は居ない。
最も、これに関しても「扉を魔法少女に壊された」と言う過去の訴訟内容から渡された物であるが、法定にて「必要な行為」として無罪判決が下されるので要らんツールと言えば要らんツールだろう。
他にも懐中電灯や方位磁針、地図等があるがどれもこれも使う事が殆ど無い装備だったりする。
「初めてコイツを使った」
「私も初めて使うところ見た」
鍵を開けるピッキングツールは自動で鍵を開けるタイプの物である。
仁はログイン画面で止まっており、真の生年月日を入れてみるがどうにもログイン出来ない。
「ん~、PCは本格的に私の家に入ってハッキングしないと無理っぽい」
「そうか、なら持って帰れ。
こっちは日記やメモ、手記を見付けた。ご丁寧に鍵付きの机にな」
昇はそう言うとノートと日記を仁に見せる。
「これって犯罪じゃないの?」
「母親に了承を取る」
「……許可出るの?」
「いざと成ったら正体をバラす」
昇の言葉に仁は思わず目を見開いた。そして、思わず首を傾げた。何故、其処までするのか?と。
「1つ、聞いていい?」
「ああ」
「何で其処までするの?」
仁の言葉に昇は暫く考え、それから口を固く結ぶ。
そして、鼻から息を吐いてから、誰にも言うなよと前置きをした。
「正直に言えば、僕は真に若干の恋心めいた物を持っていた。
思春期男子に良くある「もしかしてコイツって俺に気があるんじゃないの?」って言う勘違いに似たそれとも言って良い。まぁ、結果から言えば、それは勘違いだったのだが、それでも真は僕の部活仲間で、僕の青春に掛け替えの無い親友だ。
だから、僕は親友たる彼女のために全力を出す。もし、彼女が困っているなら、僕が出来る限りの事をする。もちろん、仁が其処までする義理はない」
昇の言葉に仁はフッと笑みを見せた。舐めてくれるなよ、と。そして、変身をする。ジェーン・ザ・リッパーに。
「真ちゃんは入学して最初に話しかけてくれた年下同級生よ。
隣の席であったと言う理由だろうけど、それでもあれからズッと話しかけて今では親友と呼べる立場に居る。生まれて初めての親友だ。私は彼女のお陰で学校生活が充実した。だから、私も彼女の為に使える手段は全て使う。
ジェーン・ザ・リッパーを舐めるなよ?」
仁の言葉に昇はにっこり笑う。そして、良い親友だと笑った。
「まぁ、その奥の手は取っておこう。
取り敢えず、他に目ぼしい物は無いようだ。そろそろ帰ろう」
「そうね」
2人は日記とパソコンを片手にリビングに居るであろう真の母親に会いに行く。リビングに入ろうとして、突然中から真の母親の声が聞こえてきた。
「どういう事ですか!?
私はそんな事をした覚えはないですし、そんな従姉妹は居ません!!」
昇は仁と共に部屋に入り込む。すると、真の母親が電話に怒鳴っているではないか。相手は恐らく警察だろう。半狂乱になっている真の母親から電話機を取り上げる。仁は真の母親を抱き締めるようにしてソファーの方に連れて行った。
「もしもし?
魔法少女協会の地区担当官である柳葉と言う男が居ます。彼に電話をして下さい。その際、クワトロ・セブンから電話があったと一言添えて下さい。それで後は話が通じるはずです。出来れば今直ぐ電話を掛けて下さい。それでは」
昇は電話を切る。真の母親は未だに暴れているが魔法少女たる仁に確りと抑えられているので身を捩りながら叫ぶぐらいしか出来ていない。昇は仁を見て頷く。仁もそれに呼応して手を話した。
仁から開放された真の母親は昇にどういう事だと詰め寄ろうとする。しかし、昇は一瞬光ると、魔法少女に変身。クアトロ・セブンに変わった。
「初めまして、私は乙種魔法少女第7777番、通称クワトロ・セブンと申します。
貴女の娘さんである山口真さんとは学友として仲良くさせて貰っています。最近、貴女の娘さんである真さんが学校に来ないことを心配して私、勝手ながら娘さんの行方を調べようと思い此処に来ました。
付きましては、真さんの鍵が掛かった机を勝手に開けて彼女の日記や手記等を入手しました。また、パソコンに関してもハッキングして内容を見ようと思っています。真さんは何かの事件に巻き込まれている可能性は非常に高く、現在、私と彼女、ジェーン・ザ・リッパーの権力を使って勝手に調査を致しています」
クアトロ・セブンが真の母親に口の挟む機会を与えず畳み掛けるように告げた。真の母親が振り返るとジェーン・ザ・リッパーに変身した仁が手を振るっている。真の母親は驚いた顔でクアトロ・セブンを再度見た。
相変わらずの無表情に無感動な顔だった。
「先程も言いましたが、私と彼女は勝手に調査を致しております。
警察にも言っていません。私の担当官で柳葉と言う男には言ってありますが、正直、彼も上から許可はまだ取っていないでしょう。事が大きくなれば捜査権は我々から警察に移ります。と、言うよりも我々には捜査権すらありません。
なので、出来れば事が明るみに出るまでは我々の活動や存在を内緒にして貰いたいのです。また、私共の正体を知ってしまいましたので、口外をせずお願いしたいのです」
クアトロ・セブンは携帯を取り出すと、其処に柳葉の携帯番号を表示した。そして、真の母親に柳葉の携帯番号であると告げ、後で此処に電話を掛けて欲しいと告げる。真の母親は直ぐにそれをメモに取る。
そして、再度真のノートPCと日記や手記を勝手に見る事を許可して欲しいと告げた。母親はクアトロ・セブンの申し出にお願いしますと深々と頭を下げる。クアトロ・セブンはそんな母親に我々や警察では事件を解決できない可能性があり、また、そっちの方が高い事を告げる。また、魔法少女としての本来の領分を大きく逸脱し、職権乱用に当たる可能性も非常に大きいので出来れば黙って欲しい。そして、正体を絶対に口外しないで欲しいと3つ告げた。
真の母親はそれら全てを承知してありがとうございますと涙を流しながら告げた。
「出来る限り、頑張ります。
お母様も気持ちを確り持って下さい。まずは家事に専念することです。もしかしたら真さんがひょっこり帰って来るかもしれません。その時、この家の惨状を見てどう思うでしょうか?また、真さんのお父様にもこの事は確りとお伝え下さいまし。
お父様もきっと心配しておられるでしょう」
クアトロ・セブンはそう告げると、変身を解く。真の母親はやはり信じられないという顔だった。
「それでは、失礼します」
「し、失礼します」
昇と仁は真の母親に頭を下げると彼女の家を後にした。色々言われる前に退散する方が良い。
外に出た2人はその足で仁のマンションに行く。色々な設備が整っているからだ。簡単なハッキングツールも置いてあるし、コピー機やらスキャナー等もある。
「真さんはどーしたんですかね?」
「青少年に良くある非行、と言うわけでもあるまい。そういう予兆は無かったはずだ」
エレベーター内部、仁と昇は真の手記と日記を見ていた。日記はキャンパスノートに数冊、Diaryとか日記とか書いてシール等で装飾がされていた。また、彼女の使っていたであろう手帳等も持ってきている。
部屋に付いて2人は直ぐに資料を並べる。仁は真のノートパソコンを自分のディスクトップに繋げ、ハッキングツールのデータを流す。
「まずは日記だな」
昇は日記で一番新しい物を探す。一番新しい物の一番新しい日を見る。日記には何やら思い詰めたようにバケモノがどーのとか書いてある。日付は昇と仁がウィークエンドと出会った日だ。文字は震え、取り留めの無い震える文字が連なっている。何かに怯え後悔してるような感じだった。
前日の日記とは打って変わっている。また、それ以降の日記は日付が書かれておらず、何やら悩んでいるような感じであるが、全体的に内容が無い。
「……日付が無いな」
それから暫く読んでいると「先生」と言う記述に「彼」と言う記述が見つかった。どうにもこの先生と言う存在がその化け物についての悩みの根幹を握っているらしく、彼と言う存在が真自身を手助けし守ってくれているらしい。
この「先生」という存在がカギを握るのが確かである。
「そっちはどうだ?」
ある程度の事態を把握した昇は仁を見る。仁はノートPCを抱えたままインターネットの検索履歴や訪れたサイトを次々と開いていく。魔法少女のまとめブログや防衛省、キメラに付いてのサイトが此処1ヶ月で急激に検索されたらしい。
「ん~何かキメラとか魔法少女とかそういうワードとページが多いわ。
キメラ関係の事件に巻き込まれたのかしれない。キメラと魔法少女の関係とか、違いみたいな単語もあるから、魔法少女に成ったのかもしれない。真さん、魔法少女に偏見とかそういうのある?」
仁がカチューシャで髪の毛を固定してう~むと首を傾げた。
昇も仁の脇でモニターを覗いたが、正直、パソコンに関しては素人に近い昇には仁が行っているデータの抜き出しやら何やらに付いて一切理解できない。なので、ノートPCに関しては完全に仁に任せっきりだ。
「偏見はないが、お前、正確に言えばジェーン・ザ・リッパーがキメラを細切れにしていたのを見て食べていたご飯を戻した。ジェーン・ザ・リッパーは気違いだ、そう言っていたのは覚えている」
仁は昇の言葉に如何ともし難いと言わん表情に成る。
「まぁ、それ以外の魔法少女に関して言えば特に嫌悪もないようだった。
世間一般の人間と一緒だと思う」
「うぅん?
じゃあ、なんで急に魔法少女の事を調べだしたんだろう?」
「ウィークエンドに付いても調べてるな」
昇がモニターのネットニュースやまとめサイトのウィークエンドと言う文字を指さす。
仁がそれをクリックする。
「サイトを更に調べてくれ」
「うん」
仁が更にサイトをサルベージすると、まとめサイトのウィークエンドについての考察と言う記事にコメントをしていた。仁はそれを解読していく。
「何々、『彼女は自分の意志で暴れている訳じゃない』。
……どういう事かしら?」
仁は首を傾げ、それから昇を見た。
「ウィークエンドは男か女かそこに結論は?」
昇の言葉に仁はNoと答える。ウィークエンドの性別は未だに不明である。現在、女であると言う説が漸く濃厚になってきているが、少なくとも彼女がこの記事にコメントを残した時は男とも女とも言われておらず、世間一般では男と考えている方が多かった。
男尊女卑の影響か、それともその特異過ぎる存在からかつい最近までウィークエンドは彼と言われおり、海外でもHeと言われる事が多かった。
「何故、山口は此処で彼女と断言している?
少なくとも、この記事を見る限り、この時期にウィークエンドを彼女と断言しているのは彼女だけだ」
「……あ~
トンでもなくバカみたいな仮設を思い付いたんだけど……聞く?」
仁の言葉に昇は僕もだと答えた。
「「山口真がウィークエンドである」」
そして、2人は答え合わせのように告げた。
そろそろ、真編も佳境に入ります
見どころはHCARとBARの新旧対決です




