第三十二話
第三十二話
魔法少女の仕事は基本的にキメラを殺すとである。
キメラを事だけであるが、流石にそれだけでは色々と不味いので防衛省と魔法少女協会は合同して世間体アップのために様々なイベントやる。例えば『第○○回魔法少女身体能力競技会』と言う堅苦しい名前の付いた運動会。テレビカメラが入り、NHKとその他民放が放映をする物で、日本でオリンピックやワールドカップと並んで最も注目を集めるイベントである。
また、某アイドルグループを真似て握手会を開いてみたり、あの手この手で何らかのイベントをやっている。出場に関して言えば、魔法少女各々に任されては居るが基本的に有名ドコロは持ち回りで出場させられる羽目になる。
そして、今回は初参加、クアトロ・セブンとして昇が柳葉からほぼ強制的に参加しろと言われたのだ。拒否権は無い。担当官からの命令であるからだ。また、クアトロ・セブンが出場すると言う事で仁ことジェーン・ザ・リッパーも出るし、巻き添えとばかりに教育係をされているテン・バーである礼威も出場する羽目になり、面白そうだとして健、つまりベルサイユが出た。
競技は色々とあるが、注目は己の武器と体を使った障害物競争、乙種魔法少女のみで行われるサバイバルゲーム、甲種魔法少女達による異種格闘技戦の3つである。
昇はこの内障害物競争とサバゲーに出る事が決定しており、健も同様だった。
チーム編成は各地方ごとに固まっており、主にその魔法少女が活躍する場所で選出される。なので4人は同じチームに成る筈である。
「何?兄貴あの運動会出るの?」
そして、昇がリビングで競技会への参加申込書を書き込んでいると桜が覗き込んできた。手には麦茶。飲み物を取りに来たようだ。
「出る羽目に成ったんだ」
「ふ、ふぅん。ま、まぁ、クアトロ・セブンの名前に恥じない活躍してよね。
殆どの人は知らないとはいえ、知り合いも居るんだし。大敗されるのも恥ずかしいから」
桜はそんな事を告げて去っていった。昇はウムと唸り、リアルツンデレは現実に居ると実に腹が立つと一人納得し、仁に電話を掛けた。
「も、もしもし?」
「リアルツンデレは腹が立つな」
「な、何事?行き成り何事?」
「お前は前、桜がツンデレだと言っていたな」
昇の言葉に仁がそうだねと告げる。仁がこの前昇の家に遊びに来た時に桜を見てそんな事を言っていたのだ。
「あれは二次元で、更に現実に居ないから美化されるだけであって、実際にいると腹が立つ。
桜にも注意しておこうと思う」
昇がそんな事を言い出し、仁は何てシスコンなんだろうかと一周回って感心してしまった。それから遊びに行っても良いかと言う話になり、仁は昇の家に遊びに行く事になった。
20分もすると仁が爆音を轟かせてやって来る。日産のGT-Rをフルチューンナップし、絶対に車検に通らないであろうモデルの物である。近所の人間も何事かと遠巻きに眺めている。
「お前は普通の車を持っていないのか?」
昇の呆れた顔に仁が普通じゃね?と首を傾げているので、昇はそれ以上突っ込むのを止めた。そして、仁が家に入ると例の如く桜が腕を組んで仁を威嚇していた。
「アンタ、何しに来たのよ」
「は、ハァイ、桜ちゃん」
「さっきの爆音はアンタ?近所迷惑よ。次やったら警察に電話してやるから」
桜のさっさと帰れと言わんばかりの物言いに昇が叱責するも桜はフンと鼻を鳴らして去っていった。仁は特に気にした様子もなく、相変わらず嫌われてますなぁと何故か嬉しそうに告げた。昇もここまでテンプレートなのでツッコミすら入れず、2人で部屋に向かう。
仁はベッドに腰掛けると、本棚に並べられた漫画を一冊手に取る。HELLSINGである。
「いらっしゃい、仁ちゃん」
そして、お茶と茶菓子を持ってきた祖母が仁に挨拶をするとそれを置いて去って行く。仁は祖母が持ってきた茶菓子であるポッキーを一本口にする。ポリポリと食べ終わると、新しく一本口に咥えた。昇は仁の隣で読み掛けていたラノベを手に取り、それを読んでいる。
仁は加えたポッキーの先を昇の方に向ける。最初、昇はそれを見て手で取ろうとし手を叩かれる。仁はクイクイとポッキーを動かし、昇はあぁと反対側、つまりチョコのついていない方を咥える。そして、仁と一緒に左右を食べ始めた。
ポッキーを折らないように慎重に、しかし素早く。仁はユックリと昇の肩に手を伸ばし、昇は仁の腰を抱き寄せる。首だけから体ごと正面を向き合わせ、そしてお互いの唇まであと1cm程の所で仁が昇を押し倒した。
それと同時に、部屋の扉が蹴り開けられんばかりの勢いで開いた。
「何やってるのよ!!」
桜である。手には漫画を持っており、前に昇が貸した漫画である。
「キスだが?」
「キスよ」
2人揃って冷静に答えると桜が顔を真赤にして2人に離れろと一喝する。
「不潔よ!
ありえないわ!」
そして、桜はそう言うと2人の間に割って入り座ってしまう。
「まぁ、確かに10秒間ディープキスをするだけで8000万の細菌が交換されるという実験結果があるしな」
「そ、それにキスすると風邪は勿論、いろんな病気が移るとも言うし」
2人は不潔といえば不潔だなと桜の意見に賛同する。勿論、桜はそんな事を言いたい訳ではないし、2人もそれは分かっている。2人の不真面目な回答に桜は更に起こる。
「真っ昼間から!2人で、し、しかも家の中で!き、ききキスなんて!!」
桜がそう昇に詰め寄ると、昇は少し困ったように頬を掻き桜の頭をポンポンと撫でた。
「まぁ、僕も仁そういう関係だしな。
多少は大目に見てくれよ。お互い高校生だし」
「こ、此奴は高校生じゃないでしょ!
もう成人してるでしょうが!」
実際、仁は成人している。
「だが、高校に居れば高校生だ。
桜だって中学卒業してる歳だが特例として中学生の課程を受けているから中学生だろう?」
「そ、そうだけど!そうだけども!!」
桜が屁理屈を言うな!と怒りだした所に祖母がやって来る。
「桜ちゃん、買い物に行きましょう」
「お、お祖母ちゃん!?」
「さ、お買い物お買い物。
仁さんも一緒に食べて行きなさいな」
「あ、ありがとうございます」
「はぁ!?」
祖母は桜を半ば強引に釣れだして買い物に行ってしまった。その際、昇に上手くやりなさいよと告げて去って行く。昇は仁の方を少し苦笑気味に振り返る。仁も同様に笑っていた。
昇はベッドに腰掛ける。仁はそんな昇の上に対面で座るのだ。
「私はね、ノボル君」
そして仁は囁くように告げる。昇の耳元で。
「私はね、不安なんだよ。
桜ちゃんの言うとおり、私は既存の常識から少なからず逸脱した“高校生”だ。桜ちゃんのように中学生と言うには少なからず歳を食い過ぎている。外見は10代であるが、心はもう20代を過ぎた。世間様で言えば社会人として漸く何とかやってけている年齢だ。
今も時々、制服姿の自分を見ていると無性に負けた気分になる。如何ともし難い劣等感に苛まれる。君の周りには私よりも若い、普通の女子が一杯いるんだ。君は知らないだろうが、君は黙っていればイイ男だ。神秘的って言うタイプの男子だ。
ちょくちょく学校を休むが、運動も勉学も上位に近い。とりわけ剣道に関しては学校一だ。全校集会で何度も表彰されているだろう?ファンは多いんだぜぇ、ノボル君」
仁は昇の耳を舐める。
「君は前に私に言ったね。
私と会うと必ずセックスかフェラをするって」
仁の言葉に昇はああと頷いた。事実、仁と昇の肉体関係は付き合う前よりも一層深い部類に入っている。最近では新たなプレイ、つまりはコスプレやソフトなSMまでも手を出し始め、アナルにも行くんじゃないか?と言う勢いだ。
「私は不安なんだよ、ノボル君。
私は何時、君に捨てられるのか、不安で不安で堪らない。私は君が居なくなったら本当に狂ってしまう。ジェーン・ザ・リッパーに成ってしまう。インサニティ・ジェーンに成ってしまう。せめて君に体だけでも良い。彼氏彼女という関係じゃなく成っても、ただの性欲を満たすだけの肉奴隷としてでも君に必要とされたいんだ。
だから、私はこうして合う度に君に求めてしまうんだよ」
仁の言葉に昇は反論しようとする。しかし、仁は昇の唇に人差し指を当てて押さえ込んだ。
「君の言いたいことは分かる。
僕はそんな事をしない。勿論だ。君はそんな人間ではない。なぜなら、君は私と違って人が出来た人間だ。だから、こんな事を言うと君を傷付けているのも分かっている。でもね、ノボル君。
だからこそ、私はこうして私の中の黒い感情を君に伝えている。そして、そうする事で君を縛ろうとしている。軽蔑されても仕方ないだろうが、君はそんな事はしない、そういう浅ましい算段を踏まえての告白だ。
本当に申し訳ないと思う。だが、私は謝らない。謝ってもしかたがないことだ。この性格ばかりはそうそう変えることは出来ないんだ。申し訳ないと思う。だが、それだけだ。
そして、君が君を信用させる為に唯一出来るのは私とセックスをし利用することなんだよ」
仁はそう告げると昇をギュッと抱きしめた。体は少しばかり震えている。昇はそんな仁を力強く抱きしめてベッドに倒れた。
「今日はセックスもフェラもなしだ。
桜達が帰ってくるまでこうしていよう。仁に信じて貰うためには君を利用しなければならないそうだ。しかし、それと同時に僕は仁の告白に酷く傷付けられたわけだ」
「ごめんね」
「別にいい。
仁はその性格を抜いてもいい女だ。肉体的にも相性がいいと言うしか無いほどに良い女だ。仁とならば一晩中どころか一日中セックスしたって飽きないだろう。
そんな良い女が僕に尽くしてくれるんだ。最高だ。男して冥利に尽きる。だが、このままでは僕の自尊心が許さない。プライドが許さない。だから、今日はお前を抱かない。どんなに欲情した所で、お前となんか一切セックスしてやるもんか。フェラもそうだ。お前の様な女に誰が僕のモノをしゃぶらせるか。
だが、仁みたいな女をただ脇においておくだけでは勿体無い。だから、僕は仁を傷ついた心を癒やすためにだき枕代わりにする」
拒否権はない。昇はそう告げると、仁はありがとうと告げ、ごめんねと言った。
会話文が多くなって来てるね
いかんね、これはいかんよ




