本当の魔法を使うために
セドリック校長先生が受付の女性に声をかけると、固く閉ざされていた校門がゆっくりと開いた。
私は期待に胸を膨らませながら、お姉ちゃんたちと一緒に校門をくぐった。
「まずは受付の女性から来校者カードを受け取りなさい」
「来校者カード?」
「この学校の生徒や教師ではない人が身に着けるものだよ」
それを聞いてミア姉が受付の女性に近づく。
「来校者カードを四人分ください」
「それでは、こちらの用紙にご記入ください」
ミア姉は、クリップボード四枚とペン四本を受け取った。
クリップボードには用紙が挟まっていた。
「これに書いて」
ミア姉が私たちにクリップボードとペンを渡す。
用紙の記入欄には、訪問日時、氏名、在校生との関係、訪問目的が書かれていた。
「在校生との関係がないんですけど、ここは記入しなくてもいいですか?」
疑問に思ったミア姉が受付の女性に聞く。
「はい。いいですよ」
受付の女性が笑顔で答える。
「ノアは書けたかな?」
リナ姉が聞いてきた。
「うん、書けたよ!」
「じゃあ一緒に受付の女性に渡しに行こうか!」
私とリナ姉は、記入した用紙とクリップボード、ペンを受付の女性へ渡した。
「はい、ちゃんと記入されていますね。ではこの来校者カードを首から下げて、帰る際にはここに返却しにきてください」
「はい」
レナ姉とミア姉はもう首から来校者カードを下げて私たちのことを待っていた。
「では、わしがこの学校を案内しよう」
「学校なんて初めてだから楽しみだぜ!」
「ねー楽しみだねー」
「私もワクワクするよ!」
お姉ちゃんたちは、いつにも増して笑顔になっている。
「私はちょっと不安かな」
「お主には三人の優秀な姉がいるのだ、そう不安になることもないだろう」
「実は私、魔法が使えないんです」
「どういうことだ?」
「これを見てください」
私は腰に下げていた小さなマジックバッグに手を入れた。これはミア姉が私のために作ってくれたものだ。
中から、魔力を見るためのゴーグルと、魔法を使うための杖を取り出す。
「この魔導具があれば、私にも魔法が使えるんです」
「ノアは魔力を見ることができず、自分で動かすこともできないんです。だから私が魔力を見るためのゴーグルと、ノアから魔力を吸収し魔法に変えてくれる杖を作ったんです」
「ふむ……入学試験には、実際に魔法を使う実技試験がある。今の杖は、ノアの代わりに魔力を吸収して魔法へ変えているのだな?」
「はい」
「それでは、ノア自身が魔法を使ったとは認められない。残念だが、今のままでは実技試験に合格することは難しいだろう」
やっぱり、そうなんだ。
本当は、うすうす気づいていた。杖から魔法は出たけれど、自分の力で魔力を動かしたわけではない。
それでも、生まれて初めて魔法を使えたことが嬉しかった。
本で読んだ物語のように、友達を作って、一緒に遊んで、たくさん勉強する。そんな学校生活を送れるかもしれないと思っていた。
やっぱり、私には無理なのかな……。
「ノア、大丈夫?」
リナ姉が心配そうに私の顔を覗き込んだ。
ミア姉は手元の杖を見つめ、悔しそうに唇をかんだ。
「ごめんね、ノア。魔法を出すことばかり考えて、入学試験のことまで考えられてなかった」
「謝らないで。ミア姉が悪いわけじゃないよ。あの杖のおかげで、初めて魔法を出せて嬉しかったもん」
「おいおい、言いすぎだぞ、セドリックじいちゃん」
「すまない。だが、入学できないと決まったわけではないぞ」
「え?」
「ゴーグルの力を借りながらでも、ノア自身が魔力を動かし、杖へ送り込めるようになればよい。その場合は、ノア自身が魔法を使ったと認められる」
「私にも……できるようになりますか?」
「できる、とは断言できないが、お主には優秀な姉が三人もいる。その姉たちからきちんと学べば、できるかもしれないな」
「はい!」
落ち込んでいても、何も変わらない。
簡単ではないかもしれないけど、魔力を動かせるようになれば、私にもまだ可能性はある。
よし、頑張ろう!
「それなら私も、ノアが自分で魔力を動かせるようになるための魔導具を考えてみるよ」
「本当?」
「まだ作れるとは断言できないけど、試してみる」
「ありがとう、ミア姉!」
「任せて」
ミア姉は少しだけ笑顔を取り戻した。
「ノア、もう大丈夫?」
「うん!」
「では、気を取り直してわしが学校を案内しよう」




