初めての魔導具屋さん!
私たちはしばらく歩いた後、魔導具屋さんについた。
「着いたぞ!ここがミアの魔導具を売ってる店だ!」
店は、ここへ来るまでに見かけた民家と同じくらいの大きさだった。
「ロゼッター!いるかー?」
レナ姉は店のドアを開けながら、大声で店内へ呼びかけた。
「なんだい?あたしはいつもここにいるよ」
店に入ると、カウンターの奥に赤褐色の髪と狐耳を持つ女性が座っていた。深緑色の服の上に、実用的なエプロンを身につけている。
椅子の横からは、大きな狐の尻尾がのぞいている。
店内の棚には、見たことのない魔導具が所狭しと並べられていた。
淡い光を放つランプや、ひとりでに動く掃除道具。中には何に使うのかまったく分からないものもある。
初めて見る魔導具ばかりで、私は思わず店内を見回した。
「ロゼッタ、久しぶり!」
ミア姉が親しそうに声をかける。
レナ姉も慣れた様子で手を挙げた。
どうやら二人は、この狐耳の女性を知っているらしい。
でも、私とリナ姉は会うのが初めてだった。
「そっちの二人は初めて見る顔だね」
「初めまして。私は四姉妹の三女、リナです。こっちの小さな子が、末っ子のノアです」
リナ姉が私の両肩にそっと手を置きながら自己紹介をした。
「二人のことはレナやミアからよく聞いてたよ。こんなに可愛い子たちだったとはねぇ。あたしはロゼッタ、この店の店長さ。よろしくね」
「当たり前だ!」
レナ姉が腕を組み、得意げな顔をしている。
「ロゼッタ、今日は見てもらいたいものがあって来たの」
「ということは新商品かい?」
「そう。見てほしいのは、これなんだけど」
ミア姉がマジックバッグから、親指と人差し指で作った輪ほどの大きさの魔導具を取り出した。
「これは?」
「魔石節約器だよ。これを魔導具に付けると、魔導具から漏れてる魔力を抑えてくれるんだ。新しい魔石を買うより、今使っている魔石を長く使えるようにした方が、みんな助かると思って」
「それに節約器に使ってる加工済み魔石は、魔力を供給するんじゃなくて、流れを整えるためのものなんだ。だから、ほとんど魔力を消耗しないよ」
「ただ、この節約器はE級魔石を加工して作ってあるから、E級魔石を動力にしている魔導具にしか対応してないんだ」
「魔石の種類や魔導具にもよるけど、だいたい三割くらい長持ちするよ」
「それでも十分さ、一般家庭向けに使われている魔導具にはE級魔石が主流だからね」
ロゼッタさんは節約器を受け取り、表と裏をじっくり眺めた。
狐耳がぴくりと動き、大きな尻尾が楽しそうに揺れる。
「こいつは売れるよ。魔石代に悩んでる家庭がどれだけあると思ってるんだい?」
「とりあえず値段は八千リルで売りたいんだけどどうかな?」
「いいと思うよ。店の取り分は、いつもと同じでいいね?」
「うん」
「まずは十個、作ってもらえるかい?」
「分かった。完成したらお姉ちゃんに届けてもらうね」
「また私が運ぶのか!?」
「いつものことでしょ」
「まったく、仲がいい姉妹だねぇ」
「ついでに、先月分の売上金も渡すから待ってておくれ」
ロゼッタさんはバックヤードから封筒を持ってきた。
「この中に、先月分の売上から店の取り分を引いた五十万リルが入ってる。確かめておくれ」
ミア姉は封筒から札束を取り出し、紙幣を一枚ずつ数えた。
「一度にこんな大金、初めて見たよ!」
リナ姉が驚いている。
私はこれまで自分で買い物をしたことがないので、五十万リルがどれほどの大金なのか、いまいち分からなかった。
「うん、ちゃんと五十万リル入ってるよ。ありがとね!」
ミア姉は、五十万リルの入った封筒をマジックバッグへしまった。
「礼を言うのはこっちさ。ミアの商品がなかったら、うちは商売あがったりだからね」
「それじゃあ私たちはもう行くよ」
ミア姉がドアノブに手をかける。
「おや、もう帰っちまうのかい?もう少しゆっくりすればいいのに」
「このあと、王立魔法学校に行く予定があるの」
「予定があるならしょうがないねぇ。気をつけて行っておいで」
ロゼッタさんは、笑顔で軽く手を振った。
「またね!」
私たちも手を振り返し、お店の外へ出た。




