初めてのルミナ王国!
今、私はリナ姉と同じ箒に乗っている。
お姉ちゃんたちは自分の力で迷いの森の魔力を防げるけれど、私はまだその方法を知らない。
そのため、今はレナ姉が私にだけ結界を張ってくれている。
「いい?ノア、ちゃんと私にしがみつくんだよ」
「うん!大丈夫!ちゃんとしがみついてるよ!」
私は後ろからリナ姉のお腹に腕を回し、その背中へぎゅっと抱きついた。
「まぁ、ノアが落ちた時には私がすぐに助けてみせるから安心しろ!」
後ろから、レナ姉の頼もしい声が聞こえてきた。
箒に乗って先頭を飛んでいるのはミア姉。そして私たちの後ろでは、もし私が落ちてもすぐ助けられるように、レナ姉が見守ってくれている。
しばらく北へ飛び続けると、ルミナ王国の王都が見えてきた。
「おおー!ここがルミナ王国の王都!すごく大きい!」
遠くには、数え切れないほどの建物が広がっている。
国を覆う薄い結界越しでも、その大きさは十分に伝わってきた。
初めて見る王都に、私は目を奪われた。
「ノアは今まで迷いの森から出たことなかったもんね」
「ちなみに、私が作った魔導具を卸しているお店も、この王都にあるんだよ」
「へぇー」
ミア姉が魔導具を作り、レナ姉に「いつもの場所に持っていって」と頼んでいるところは、何度か見たことがある。
あれは、この王都のお店へ運んでいたんだ。
「ちょっと魔導具屋さんに用事があるんだけど寄ってもいいかな?」
「おう!いいぜ!」
リナ姉が何かを思い出したように、肩越しに私を見た。
「そういえばノアはまだこの国の通行許可証を持っていなかったね」
「つうこうきょかしょ?」
「簡単にいうと国に入るための銀色の札だよ」
リナ姉はポケットから、細かな文字が刻まれた銀色の札を取り出した。
「ノアの通行許可証を発行してもらいに検問所に行くか」
私たちは国の入り口にある大きな門へ向かい、その前へゆっくりと降りた。
「おや、レナさんが地上の門を使うなんて珍しいですね。いつもは空の通路から入るでしょう?」
「今日はいろいろあってな」
レナ姉と門番の男性が親しげに話している。
「一人見たことがない子がいますね」
「私の末っ子だ」
「どうりで似ているわけだ、ということは通行許可証の発行ですか?」
「おう!話が早くて助かるぜ!」
門番の男性が受付の女性へ声をかけると、彼女は一枚の銀色の札を持ってきた。
でもそこには何も書かれていなくて、ただの銀色の札だった。
「これが通行許可証になります。本人確認のために、血を一滴だけ付けてもらえますか?」
受付の女性が袋に入った針を私に渡す。
「この針で親指を少し刺して、そのまま通行許可証に触れてください」
「大丈夫?」
リナ姉が不安な顔をしている。
「ゆっくりでいいからな、俺なんて針で刺すのが怖くて十分間何もできずにいたしな!」
門番の男性が笑いながら言う。
「大丈夫ですよ。少しチクッとするだけです」
受付の女性が優しく声をかけてくれた。
針で指を刺すのは怖い。大した痛みではないと分かっていても、自分で自分を傷つけるには覚悟がいる。
「ノア、針を貸してくれ。怖かったら目を閉じてていいぞ」
私はレナ姉に針を渡し、ぎゅっと目を閉じた。すると、誰かが私の左手をそっと握ってくれた。
「もういいぞ!」
「え?」
驚いて目を開けると、手を握ってくれていたのはリナ姉だった。目の前では、レナ姉が私の右手を優しく支えている。
「もう刺したの?」
「おう!痛くないように一瞬で済ませたぞ!」
親指を見てみると、そこには小さな血の粒が浮かんでいた。本当に、いつ刺されたのか全然分からなかった。
レナ姉が、私の親指を銀色の札へそっと押し当てる。
その血が札に触れた瞬間、淡い青色の光があふれ、何もなかった表面に文字が浮かび上がっていく。
《名前:ノア》
《年齢:十一歳》
《種族:魔女族》
《有効期限:三年》
「わぁ……私の名前が出てきた!」
「血が止まるまではこのハンカチを使って」
ミア姉がハンカチをそっと親指にあてる。
「これで通行許可証は完成だ。今後は、これを提示すれば、この国を出入りできるぞ。有効期限は三年だ。期限が切れる前に、検問所か役所で更新してもらってくれ。そのときも本人確認のために、血が一滴必要になる」
門番の男性がいろいろ説明してくれる。
「はい!ありがとうございます!」
「ようこそ、ルミナ王国へ!」
私たちは門をくぐり抜けて、結界の中へと入っていった。
次の瞬間、王都のにぎやかな声が一気に耳へ飛び込んできた。
「わぁ……!」
これが、私が初めて足を踏み入れた王都だった。




