みんなでケーキ作り!
私の名前はミア、十七歳。
私には、ちょっとポンコツな姉のレナと、可愛い妹のリナとノアがいる。
今からみんなでショートケーキを作るところだ。
「どうせなら、一人一個ずつ小さいショートケーキを作らない?その後みんなで食べ比べとかどう?」
私はみんなに提案してみる。
「いいな!それ!誰にも負ける気がしないぜ!」
お姉ちゃんが真っ先に反応する。心配だ。
「私も誰にも負ける気がしないよ。ノアはケーキ作りに自信ある?」
リナがノアに微笑みながら聞く。
すると、ノアは首を横に振った。
「自信ない」
「そっか、じゃあ最初だけ一緒にやろうか。飾りつけはノアが好きにしていいから」
「うん!」
相変わらずリナはノアのことが大好きなんだなと思った。
正直いって私も自信ない。
「じゃあまずはケーキの土台となるスポンジを作ります!」
作り方はリナが知っているので、リナが仕切る。
「ボウルに卵と、グラニュー糖を入れ、温めながら混ぜましょう!」
リナが手順を見せながら説明してくれる。
まずは卵を割るところから。卵の殻を入れると後々面倒なので、ここは慎重に…。
「あ!やっちまったー!」
みんなお姉ちゃんのほうを見る。
あ……。
「どうしたの?レナ姉」
リナがお姉ちゃんに近寄った。
「つい力を入れすぎてしまった、あはは…」
お姉ちゃんの手には潰れた卵の殻が残り、ボウルの中では卵と砕けた殻が入り交じっている。机にも黄身が飛び散っていた。
私は何とも言えない表情で、リナは苦笑い、ノアは口をぽかんと開けている。
「ま、まて!まだ慌てるような時間じゃない!」
「卵の殻には栄養がたくさん入ってるらしいじゃないか!ならこのまま殻ごと入れれば……」
お姉ちゃんはかなり慌てているようだ。
「待って!卵の殻にはばい菌がたくさんいるんだよ!私たちもレナ姉が作ったケーキ食べるんだから殻は取って!ノアが病気になったらどうするの!」
リナが止める。さすが自慢の妹だ。
「うーんそれは困るなー、でもどうすれば…」
お姉ちゃんはボウルに入った卵の殻を見る。
「一緒に入った卵の殻は、大きい卵の殻で取ると、取りやすいよ!」
「お、よく知ってるなノア!えらいぞ!」
リナがノアのほっぺたをぷにぷにする。
「えへへ~、前に本で見たんだ!」
「えらいえらい」
リナとノアがニコニコしている。それを見た私とお姉ちゃんも微笑ましくなった。
「はい、私が使った卵の殻使って取って」
お姉ちゃんに卵の殻を渡す。
「助かるよー!」
お姉ちゃんは言われた通り、大きな殻で小さな殻をすくい始めた。
「ノアはちゃんと入れられたかな?」
「うーん、ちょっと殻が入っちゃった」
「全然大丈夫!私が取ってあげるね!」
リナは慣れた手つきで殻をすくった。
「ありがとう!」
ちなみに私は一個も殻が入ってない!さすが私だ。
「なんかリナ、私の時とノアの時で態度違くないか?」
「お姉ちゃんは卵の殻を取ろうとしなかったからでしょ」
「うー、面目ない」
「はい!じゃあ次は、お湯から外し、ハンドミキサーを使って生地をふんわりさせましょう!」
「今から私が一回やるから見ててね!」
「あれ?このハンドミキサー、いつものより速さの段階が増えてるような…」
気づいたか、リナよ。
「市販のハンドミキサーは速さの段階が三段階までしかないから改造して二段階上に増やしたよ」
「おおー!さすがミア姉!これで早く混ぜ終わりそうだよ!」
リナが喜んでくれて、よかったよかった!
「すごいねこれ!もう生地がふんわりしてきてるよ!」
「じゃあ次、ノアの番ね」
リナがハンドミキサーをノアに渡す。
「わぁ!これ楽しい!」
「でしょ?ノアも料理の楽しさに気づいちゃったかな?」
「うん!」
ノアが嬉しそうにしている。
「それくらいなら私にもできるぜ!」
お姉ちゃんはハンドミキサーを使わず、ホイッパーを使って、あっという間に混ぜ終わる。
「す、すごい!」
ノアがびっくりしていた。
「いい?ノア、レナ姉が世の中の普通だと思わないようにね」
リナが呆れたように笑っている。
全くその通りだ。
「なんだ?まるで私が普通じゃないみたいな言い方は!」
「ハンドミキサーより早く混ぜ終わるなんて、明らかに普通じゃないでしょ」
「な!?」
私の言葉にお姉ちゃんは言葉を詰まらせる。
「はいっ!次ミア姉の番!」
ノアが笑顔でハンドミキサーを私に渡した。
「あっ、これ楽しい!」
「ミア姉も気づいちゃったか!」
混ぜているうちに、黄色かった卵液が少しずつ白っぽく、ふんわりとしていく。それを見てると新鮮でなんだか楽しかった。
「みんなできたね! 残りの材料を混ぜて型に流したら、オーブンで焼くよ!」
「よっしゃ!混ぜ終わったぜ!」
「レナ姉早ーい!」
「だろー?私は長女だからな!これくらいできて当然だ!!」
お姉ちゃんが胸を張る。
「きゃー!すてきー!」
ノアが両手を小さくパチパチした。
もうお姉ちゃんはバターとハチミツを入れ、混ぜ終わったらしい。
「もう!レナ姉!私の説明全部聞き終わる前に始めたでしょ!」
「ノアはゆっくりでいいからねー」
「うん!」
「ボウルを手でずっと固定してキツくない?私が支えるよ!」
「ありがとう!リナ姉!」
なんとも微笑ましい。妹二人が天使に見える。
私もバターとハチミツを加え、ゆっくりと混ぜ始めた。
「私もリナに支えてもらいたいなー」
「レナ姉はもう終わったでしょ、はやく型に入れといて」
「ぶーぶー」
お姉ちゃんがほっぺたを膨らましていた。
みんなが今作った生地を、それぞれの型に流し入れ、オーブンへ入れていく。
「あ、ミア姉、オーブンの魔石にある残り魔力量で火力足りるかな?」
私はオーブンに取り付けられている魔石を見る。
「んー、あと一回はもつかな、この魔石はE級で家庭用の奴だから魔力チャージもできないしね、次で他の魔石に交換だね」
「リョーカイです!」
「オーブンで焼いてる時間でシロップや生クリーム、果物を切ります!」
「レナ姉はこれ!このボウルに生クリームと砂糖を入れて、氷水に当てながら泡立てておいて!」
「おう!まかせとけ!すぐ終わらしてやる!」
「時間はたくさんあるからゆっくりでいいよ」
「お、おう!」
「ミア姉は、イチゴを小さく切ってね」
「分かった」
「私はシロップを作ろうかな」
「ノアはミカンの果肉を取ろうね。ちょっとミカンはやる事いっぱいあるから、すぐ私も手伝うからね、待っててね」
リナがノアの頭を軽くポンポンと触る。
「うん!」
イチゴはヘタを取って切るだけだからすぐ終わらして、私もノアの手伝いがしたい。
イチゴはだいたい十個切ればいいかな。
「シロップは鍋に砂糖と水を入れ、少し混ぜて、沸騰するまで待てばいいから...」
「よし!ノア、今から手伝えるよ!」
私がイチゴを六個ほど切ったところで、リナがノアの手伝いに向かった。
「まずミカンは、大きい皮を取ろうか」
ノアは真剣な表情でミカンの皮をむいている。
リナもノアの隣に立ち、手元を優しく見守りながら、ミカンの皮をむいている。
「できた!」
「おー!はやーい!」
「次は白い筋を取ろうね、これはけっこう、めんどうかな」
「む、むずかしい…」
ノアは白い筋をつまんでは途中で切れてしまい、少し困ったような顔をしている。
「大丈夫だよ、ゆっくりでいいよ」
イチゴも全部切り終わった。これで私もノアの手伝いができる!
「イチゴ切るの終わったから今から手伝えるよ」
「お、ミア姉助かるよ!」
「たすかるー!」
「私ももう終わったから手伝えるぞ!」
「レナ姉もはやーい!」
「ふっふっふ!ノアのためならなんでも早く終わらしてみせるさ!」
こういうところ、すごくお姉ちゃんらしくて、そんなところを私は尊敬してる。
「最後に果肉についてる薄皮を取るよ!」
「これかんたん!」
「うんうん、じょうずじょうず!」
ノアは楽しそうに一つ一つ薄皮をむいていく。
リナはそんなノアを優しく褒めながら、笑っていた。
二人の様子を見ているだけで、なんだか心が温かくなる。
「これ、むくだけなのに難しくないか?」
「お姉ちゃん、さっき生クリームは一瞬で終わらせたのに」
「力でどうにかできないものは苦手なんだ!」
「不器用なんだね!」
ノアが核心をつく。
「そうなんだよ!だから手伝ってくれないか、ノアー」
「なんで手伝いにきてる人が手伝ってもらうの!」
リナは笑っている。
みんながミカンの薄皮をむき終わったころ、鍋に入っている水が沸騰した。
「リナ姉、なんかお鍋がグツグツいってるよ」
「あ、ほんとだ!今火を消すね!」
リナは鍋の方に近寄る。
「あ、ミア姉、そろそろオーブンで焼きあがったところだろうから出してみてくれない?」
「分かった」
私はオーブンへ近づき、扉を開けた。
「わー!いいにおーい!」
ノアが嬉しそうだ。
部屋中が焼いたスポンジケーキの甘い匂いに包まれる。
私はオーブンに入っているスポンジを1つずつ取り出し網の上に置いた。
すると玄関のドアが開いた。
「何やら甘い匂いがすると思ったら、皆で菓子を作っていたのか」
「あ!りゅーちゃんおかえりー!」
目の前に立っていたのは、長い黒髪を揺らす美しい女性だった。
穏やかな笑みを浮かべているにもかかわらず、その瞳だけは竜を思わせる鋭さと神秘性を宿している。
「あのね!これみて!」
ノアが、私の作ったゴーグルと杖をりゅーちゃんに見せる。
「ふむ、これは?」
「ミア姉がね!私のために作ってくれた魔導具なんだ!」
「ほう、さすがミアだな」
「そ、そうかな、えへへ」
私は照れくさくなり、思わず笑った。
「これのおかげでノアは魔法が使えるようになったんだよねー!」
リナがノアの頭を軽くなでる。
「うん!」
「よかったなー、ノア、良い姉たちがいて」
「みんな私の自慢のお姉ちゃんなんだ!」
「当たり前だろ!」
お姉ちゃんがドヤ顔をしている。
「ノアー!」
リナがノアに抱きついている。
「ところで、今は何をしているところなんだ?」
「ノアの記念日だから、みんなでケーキを作ってるんだ。せっかくだから一人一つずつ作って、食べ比べすることにしたんだよ」
「りゅーちゃんも食べる?」
「よいのか?」
「もちろん!」
ノアが嬉しそうに返事をする。
しばらくしてスポンジとシロップが十分に冷めると、私たちは飾りつけを始めた。
「じゃあ、次は自分が作ったスポンジケーキにデコレーションしていってね、さっきみんなで作った生クリームとシロップ、切ったイチゴとミカンがあるから好きなの使ってね」
私たちはそれぞれ、自分のスポンジケーキに生クリームを塗り始めた。
ノアはミカンを楽しそうにたくさん並べ、リナはその様子を優しく見守りながら手伝っている。
お姉ちゃんは果物を山のように盛りつけ、私は崩れないよう慎重に生クリームを整えた。
こうして、それぞれ個性あふれるショートケーキが完成した。
私たちはそれぞれのケーキを五等分に切り分け、みんなのお皿に並べていく。
「わぁ……!」
ノアがテーブルに並んだケーキを見て目を輝かせている。
お姉ちゃんのケーキは果物が山盛りで、今にも崩れそうだった。
私のは派手さはないけど、生クリームだけは綺麗に塗れたと思う。
リナのケーキは、高級店に並んでいても違和感がないほど綺麗だった。
ノアのケーキにはミカンが花のように並べられていた。少し形の不揃いなイチゴも、一生懸命飾りつけたことが伝わってくる。
「いただきます!」
私たちは声をそろえて言った。
みんな一斉にケーキを口へ運ぶ。
「おいしい!」
ノアがパッと笑顔になる。
「ノアが作ったケーキも美味しいね!」
リナは真っ先にノアのケーキを一口食べる。
「お姉ちゃんのは果物が多くて豪華だね」
「ふっふっふ!勝負は見た目からだからな!」
お姉ちゃんのは果物が豪快だけど、生クリームの甘さとのバランスは意外と悪くない。
「ミア姉のは見た目以上にうまいね!」
リナが私のケーキを褒めてくれたってことは、自分のケーキに自信をもってもいいのかも。
「リナのケーキ、店で売れるぞ!」
お姉ちゃんが感心したように声を上げる。
「それぞれ違った美味しさがあって飽きないな」
りゅーちゃんが微笑みながらケーキを食べる。
私たちは楽しくケーキを食べ終えた。
「それで、誰のケーキが一番だったんだ?」
お姉ちゃんが期待に満ちた顔で聞いた。
「うーん……全部!」
ノアの答えに、みんなが笑った。
私はノアに声をかけた。
「このあと王立魔法学校へ過去問を受け取りに行くけど、ノアも一緒に行く?」
「誰か魔法学校に入学するのか?」
りゅーちゃんが不思議そうにしている。
「ノアが魔法を使えるようになったからな。王立魔法学校に入学したいみたいなんだ」
お姉ちゃんが説明する。
「魔法なら私たちでも教えられるが、人との関わり方までは教えられない。学校へ行くのも、よい経験になるだろう」
「私はノアと毎日一緒にいられなくなるのは少し寂しいけど、ノアのためならまぁ、仕方ないか」
リナは少し寂しそうだ。
「リナもそろそろノア離れした方がいいんじゃないか?」
お姉ちゃんがからかうように笑った。
「えーなんだよそれー!」
みんな思わず笑ってしまった。
「後片付けは私がしよう。たまには四姉妹そろって出かけるのもよいだろう」
「ほんとに!?たすかるよー!」
「それじゃあ!いってきまーす!」
私とお姉ちゃんはそれぞれ自分の箒に乗り、ノアはリナの後ろに乗った。
私たちはそのまま、ルミナ王国の王立魔法学校へ向けて飛び立った。
ノアにとって、初めて訪れる魔法学校。
そこでどんな出会いが待っているのか、この時の私はまだ知らなかった。




