迷いの森の管理人
私の名前はレナ、十八歳、四姉妹の長女だ!
今日も今日とて迷いの森を巡回中だ!普段なら誰も近寄らないこの森だが、たまーにいるんだよなぁ、肝試しとか、酔っ払い、腕に自信のある冒険者がこの森に入り一生出られなくなるような事故が……私はそれらの人たちを無事に森の外へ出すお仕事をしているのだ。
箒に乗って上から人を探したり、歩いて人を探したりしているんだけど……ってあれ?私今日箒持ってきたっけ?
「あー!忘れてたぁー!!」
んー、でもかなり歩いてもう森の外側付近なんだよなぁ、また何時間も歩くのも面倒だしこのまま森を出て街に行って箒でも買ってこようかな。
「またミアに『忘れ物するたびに買うな!』って怒られそうだけど……まあいいか!」
「う、うわぁぁぁあ!」
男の悲鳴!?確か左ら辺から聞こえたな!
今いる場所は外周で深部よりは弱い魔物しかいないが、それでも迷いの森以外の場所の魔物と比べれば十分に強い魔物だ!これは急がないとまずいな。
「フル・アクセラレータ」
私なら無詠唱でも最大限に近い性能を引き出せるが、詠唱すればさらに強化される!
この魔法は移動速度を上げることが出来る魔法で、今の私なら本気で走ればドラゴンの全力飛行を余裕で超える!
いた!あそこか!
少し開けた場所に一人の腰の抜けた男が約十匹のヒートウルフに囲まれている。
ヒートウルフの爪や牙で攻撃を食らうと鉄の鎧を着てても食らった場所が溶ける程の熱を持ってるからな、あの男が攻撃を食らってなきゃいいが…
私はすぐに男の前に出た。
そして、
「ほらほら、お前たち。帰った帰った」
私はしっしっと手を振った。
するとヒートウルフたちはすぐさま走り去っていく。
「あれ?ファイアーウルフたちが去っていくぞ?なんでだ?」
その男は警戒しながらも不思議そうにヒートウルフたちを見つめる。
「怪我はないか?」
私は男に問いかける。
「あ、ああ、幸い何とも無かったよ、ありがとう、助かった」
「あとちなみにさっきのオオカミたちは、ファイアーウルフじゃなくて、ヒートウルフだぞ」
「はぁ!?ヒートウルフってあのヒートウルフか!?ありゃダンジョンや森の深部辺りにいるって言われてる魔物だぞ!?」
男がかなり驚いているが無理もない。
「そう、そのヒートウルフだ、てかおじさん、たてるか?」
「おじさんって歳じゃないんだが……すまん、腰が抜けて立てない、手を貸してもらえるか?」
私は男の人に手を差し伸べた。
「ありがとう」
「名前は?」
「リードだ、何故か気が付いたらこの森の中にいてヒートウルフたちに囲まれてた男だ」
「もしかして酔っ払っていたな?」
「あ、ああ深夜の三時まで友達と飲んでいたんだがその後から記憶が無くてな」
「今、朝の七時だぞ!?よくそんな状態でこの森で生き残れたな!?この森がどんな森か知ってるか?」
「も、もしかして…迷いの森か……?」
「そうだぞ、もう二度とこんな場所には来るんじゃ無いぞ」
「もしかして、結構深くまで来てたり…どうしよう、このまま家に帰れなかったら…妻と子供もいるのに……」
「そんなに心配するな。まだここは外周付近だ。浅い場所だから安心しろ!」
「迷いの森の浅い場所にヒートウルフがいるのかよ!?じゃあ深部には何がいるのか想像もしたくねぇ…」
「じゃあ私に付いてこい、出口まで案内してやる、一緒に歩いて大体一時間って所だな!」
「あんたって一体何者なんだ?こんなに詳しくて、迷いの森の中でも堂々と出来るなんて…」
「私か?私はこの森の管理人だ!」
「管理人!?森に管理人なんているのか!?」
リードが目を丸くさせた、余程驚いたのだろう
「じゃあもしかして迷いの森に住んでいると言われている魔女ってあんたの事なんだな」
「なんだ、私が魔女だって事わかるのか!」
「ああ、たまーに噂になるんだよ迷いの森に迷い込んだら魔女が助けてくれるってな」
「えへへ、そんなに褒めても何も出ないぞ!」
「あ、てか歩いてて思ったんだが、道中魔物は襲ってこないのか?」
「それなら私と一緒にいれば問題ないぞ!私を襲おうとする魔物は知能の低い魔物かまだ幼い魔物だけだからな」
「それなら安心だな、魔物は強くなればなるほど知能も高くなるし、実質この森ではあんたを襲うのは幼い魔物だけって事だな」
「そういう事だ!」
「そういや何でこの森は迷いの森って言われてるんだ?この森の情報なんて何処にも載ってないだろ?」
「あー、この迷いの森は入った途端に迷いの森特有の魔力で生物の方向感覚がおかしくなるんだ、だから誰も出ることが出来なくなる、ちなみに飛べば良いと思ったりするかもしれないが迷いの森の上空を飛ぶと上下の方向感覚がおかしくなって地面に頭から衝突する事になったりしてかなり危ないぞ」
「じゃあ、なんで魔女さんは方向感覚がおかしくならないんだ?」
「それは言えないかなぁー」
私は笑って誤魔化した。
しばらく雑談しながら歩いたら森の外へ出た。
「おお!出口だ!助かったぁぁ!ありがとうな!魔女さん!!」
「おう!もうこの森には入るなよ!」
「肝に銘じとくよ!」
「噂は本当だったんだな……」
リードはボソッと呟いた。
そこで私はリードと別れ、家に帰るために森の中へ戻った。
よし、ここから全力ダッシュで帰れば二十分くらいで家に帰れるかなーー
「お姉ーちゃーん!」
この声はミアか、箒で飛んで来たのか。
私の目の前にミアが降りてきた。
「また新しい箒買おうとしてないでしょうね!」
「あ、ああ買ってない買ってないぞ!」
そう言えば今日は箒を家に忘れたから街へ買いに行こうとしてたんだった、箒を買う事忘れてて良かったぜ!
「そう言えばノアが魔法を使えるようになったんだよ!」
「ほんとか!?早速家に帰ってノアに会いたいぜ!」
「はい、これ」
ミアが家に忘れてきた箒を私に渡してきた。
「おお、ありがとう!」
私たちは箒に乗り、家まで一直線で帰った。




