↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女っ子四姉妹  作者: しるばーすたー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/14

カイルVSレナ

観客席がざわめいた。

生徒たちの前で魔剣顕現を使うのは、これが初めてだった。

以前、校長との模擬戦でこの魔剣を使ったとき、私はそれまでの劣勢を覆し、一時は校長を押し返すことができた。

それだけではない。私はいくつものダンジョンを一人で攻略してきた。

この力なら、迷いの森の管理人であるレナさんにも通用するはずだ。


「おお!すごいな、その剣!」


レナさんは、目の前に魔剣が現れたというのに、警戒するどころか目を輝かせていた。

その余裕が、いつまで続くか。

私は地面を強く蹴り、一気に間合いを詰めた。

レナさんの肩口を狙い、魔剣を横薙ぎに振るった。


「ウィンドショット!」


レナさんが片手をこちらへ向けると、小さな風の塊が魔剣の側面へぶつかった。

大した威力ではない。だが、当たる位置とタイミングがあまりにも正確だった。

剣の軌道がわずかに逸れ、その隙にレナさんが半歩後ろへ下がった。

魔剣の切っ先は彼女の服をかすめ、何もない空間を切り裂いた。

今のは、初級の風魔法。

しかも、レナさんは杖を使っていない。

杖の補助もないのに、あれほど小さな風の塊を魔剣の側面へ正確に当ててみせた。

初級魔法を、こんなふうに使う者がいるとは。


「速いな、カイル!」


嬉しそうに笑うレナさんへ向かって、私は右足を踏み込み、腹部へ向けて魔剣を横薙ぎに走らせた。


「ブースト!」


刃が届く直前、レナさんの全身を淡い光が包んだ。

初級の身体強化魔法。筋力や反応速度をわずかに高める、魔法学校でも最初に習う基礎魔法だ。

レナさんは強化された脚で地面を蹴り、後ろへ大きく跳んだ。

だが、その動きは読んでいた。私は魔剣へさらに魔力を流し込み、横薙ぎの軌道に沿って斬撃を放った。

剣の間合いから逃れても、飛ぶ斬撃までは避けられない。

取った!


「わ!?」


ドン!

結界に魔力を帯びた斬撃が当たった。

目の前にレナさんはいなかった。


「どこ行った!」


「ここだよ」


「な!?」


そこには、両膝を深く曲げ、上半身を地面につきそうなほど後ろへ反らしたレナさんがいた。


「いまの攻撃を避けたんですか!」


「いやー魔剣に注意しててよかったよー」


なんという体幹だ。あの体勢から、まだ動けるのか。

レナさんは何事もなかったように笑っていた。

私はすぐさま踏み込んで間合いを詰め、右足を軸にして体を回すと、左足でレナさんの足を払った。


「あたっ!」


レナさんは体勢を崩し、その場へ倒れ込んだ。私はすかさず魔剣を突き下ろした。

しかし、レナさんは地面を転がってそれをかわした。


「ファイアーボール!」


魔剣を地面へ突き下ろしたことで、私の動きが一瞬止まった。その隙を狙ってレナさんが放った初級の火魔法が、私の顔めがけて飛んできた。

私は同じファイアーボールを無詠唱で放ち、正面から相殺した。

火球同士が目の前で衝突し、破裂した炎と煙が周囲へ広がった。


まずい、視界をふさがれた!


煙が晴れるまでには数秒かかる。ここはいったん距離を取り、態勢を整えよう。

すると、土が両足に絡みつき、私をその場に縫い留めた。

土属性の初級魔法、アースバインドか。

だが、身体強化魔法を使えば、初級の土魔法による拘束など簡単に破れる。


「ハイ・ブースト!」


中級の身体強化魔法、ハイ・ブースト。無詠唱でも発動できるが、拘束を確実に破るため、今回は魔法名を口にして効果を高めた。

私はまず右足に力を込めて踏み出し、拘束を引きちぎった。

続いて左足も前に出そうとしたとき——


「なっ!」


今度は先ほどよりも大量の土が両脚に絡みつき、膝下までを固めた。

驚いている暇もなく、四方八方から火と水の魔法が飛んできた。

大きさと込められた魔力量から、飛んできたのは初級魔法のファイアーボールとウォーターボールだと分かった。

いくつかが体をかすめたが、ほとんど痛みはなかった。

だが、レナさんの狙いは私に直接攻撃を当てることではなかった。

ファイアーボールとウォーターボールが私の周囲で次々と衝突し、真っ白な蒸気が立ちこめていった。

煙が晴れたと思った直後、今度は蒸気によって再び視界を塞がれた。

その瞬間、胸の奥で苛立ちが弾けた。

なぜだ。これだけ攻撃する機会がありながら、なぜ初級魔法しか使わない。私を侮っているとしか思えない。

私は空いている左手を掲げた。


「サイクロン!」


青緑色の風が私の周囲で激しく渦を巻き、立ちこめていた蒸気を一気に吹き散らした。

その向こうに、レナさんの姿が現れた。

同時に、私は強化された両脚へ力を込め、まとわりつく土を蹴り砕いた。


「なぜ、初級魔法しか使わないのです!?」


返事を待たず、私は魔剣へさらに魔力を注いだ。


「ヴォルテクス!」


魔剣の刀身を中心に、青緑色の風が激しく渦を巻いた。

風は唸りを上げながら圧縮され、闘技場の空気までもが刀身へ引き寄せられた。

私は魔剣を振り抜き、渦をまとった斬撃をレナさんへ放った。


「うわっ!?」


レナさんは横へ低く跳び、攻撃を避けた。

キーン!

渦をまとった斬撃が防護結界へ食い込み、甲高い音を響かせながら表面を削り続けた。

やがて斬撃は弾けて消え、結界には細いひびが走った。

だが、ひびは結界へ流れ込む魔力によって、すぐに塞がれていった。


レナさんを追って踏み出した瞬間、つま先の下で地面が僅かに沈んだ。

土属性の初級魔法、アースピットか!

私は反射的に後ろへ跳んだ。直後、踏み込もうとしていた地面の表面が崩れ、その下に隠されていた穴が姿を現した。

避けた――そう思った瞬間、着地した足元までもが大きく沈み込んだ。


「なっ!?」


一つではなかった。レナさんは蒸気で視界を奪っている間に、私の周囲へいくつものアースピットを仕掛けていたのだ。

冷静に地面を見ていれば、僅かな色や凹凸の違いに気づけたはずだ。だが、レナさんへの苛立ちで頭に血が上っていた私は、後ろへ跳ぶ前に着地点を確かめていなかった。


上半身と両腕は、かろうじて穴の外へ出ている。だが、穴は狭く、両脚を曲げる余裕がない。これでは跳び上がれない。

すぐにここから出なければ。

だが、もう遅かった。両手首に土が絡みつき、地面に固定された。さらに、穴の中にある両脚までもがアースバインドに拘束された。

ここは魔力を温存している場合ではない。


「フル・ブース――」


「させるか!」


右手首を固定していた土が指先まで伸び、魔剣を握っていた指を強引に開かせた。

滑り落ちかけた魔剣をレナさんが奪い取り、その切っ先を私の喉元へ突きつけた。


「そこまで!」


校長が声を上げ、終了を告げる鐘が鳴った。

一瞬静まり返った観客席から、遅れて大きな歓声が上がった。


「レナ姉、すごーい!」


レナさんが片手を上げると、私の手足を拘束していた土だけが崩れ落ちた。だが、深い穴はそのまま残っていた。


「ほら」


レナさんは魔剣を片手に持ったまま穴の縁へしゃがみ込み、空いている手を差し伸べてきた。

私は敗れた悔しさを飲み込みながら、その手を握った。すると、レナさんは私の体を軽々と穴の外へ引き上げた。


「助かります」


私が穴から出ると、レナさんは再び地面へ手を向けた。穴の底がゆっくりとせり上がり、やがて何事もなかったように元の地面へ戻った。

完敗だ。私は最初から本気で勝ちにいっていた。決して手を抜いていたわけではない。それでも、初級魔法だけを使っていたレナさんに負けた。

この程度で、私は本当にこの学校を守れるのだろうか。


「いやーカイルってかなり強いんだな。あれ、カイルさんって呼んだほうがいいのか?」


「カイルでいいですよ。それと、なぜ初級魔法しか使わなかったんですか?」


「初級魔法しか使わなかったのは、ノアに見せたかったからだ。強い魔法が使えなくても、工夫すれば戦えるってな!」


「そういうことだったのですか」


「それに、カイルが弱かったわけじゃないぞ。この魔剣を見た瞬間、戦いを長引かせるほど厄介になる気がした。だから先に動きを封じたんだ!」


レナさんはそう言いながら私に魔剣を返した。

この魔剣は、完全に斬った魔法の術式を同時に三つまで記録できる。記録している間は、同じ術式で発動された魔法を無効化できる。さらに、記録した魔法を私自身の魔力で再現することも可能だ。

戦いが長引けば、それだけ私が有利になる。

まさか、レナさんは魔剣の能力を知らないまま、その厄介さを直感だけで感じ取ったというのか。

今の戦いを振り返れば、レナさんは一度も、自分の魔法を魔剣の刃で斬らせていない。

校長が私たちのところへやって来た。


「完敗だったな、カイル。だが、お前もよく食らいついた。今回は相手が悪かったと思うしかないだろう」


「いえ、また一から鍛え直します」


「そうか」


戦闘技術でも判断力でも、私はレナさんに及ばなかった。

今日の敗北を忘れず、どんな状況でも冷静に戦えるよう、自分の戦い方を見直そう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。