コンビニで物資調達
辛いはずなのに涙が出ない。叫びたいほど精神が不安定なのに声が出ない。あの時と同じだ。両親が行方不明になってもう会えないと悟った時と同じだ。それほどに心に深い傷が残った。
1人、そう1人なのだ。世界がこんなことになり、これから生きていくために今後もこういったことをしないといけない。にも関わらず、1人倒しただけでこのショック。同じ人型、かつて人だったものを殺すだけでこうも疲弊するのか。俯きながらそう思った。
とはいえここで立ち止まるわけにはいかない。いつゾンビが襲ってくるかも分からないこの状況で武器を手放しているのは命取りだ。手を合わせ、バットを拾い再び歩き出す。申し訳ないがそのままにしておくしかない。
(ごめんなさい、埋葬も弔いも何もできなくてごめんなさい)
道中不思議なことにゾンビに出くわすことなく近くのコンビニへ来ることができた。中を覗いてみるが誰もいない。どうやら非難したようだ。荒らされた形跡はないが、慌てて避難したのかいくつか商品が落ちていて、ドアも開きっぱなしになっている。ひとまず物資の調達はできそうだ。入るとレジが空いていたので、紙幣を何枚か入れてリュックサックへものを入れていく。
(最近のコンビニは品揃えが多くて助かるな。ひとまず食料と日用品はある程度欲しい。それに冷蔵・冷凍食品は今のうちに食べた方がいいから優先的にもらうか。飲料系は....台車があれば借りるか)
大きめのリュックサックを持ってきたとはいえ、色々入れるとすぐに満杯になるので厳選して入れる。その後バックヤードを見てみると台車があったので、載せれるだけの飲料箱を積んで帰宅する。その帰りも誰とも出くわすことはなかった。住宅街とはいえ、往復で遭遇したのがゾンビ1人ということはあり得るのだろうか?大規模なドッキリだと言われた方がマシだと思いつつ家に着いた。
家に入り荷物を収納して一息をつく。冷蔵庫から冷えたコーラを流し込むと緊張が和らぐ。思えば起きてからまだ数時間しか経過していない。それなのに今すぐ寝たいと思ってしまう。そんな体に鞭を打ち自室へ戻るとカーテンを開ける。やはり状況は変わっていない。それどころか朝見た時よりも煙の量が増えている。火があちこちに延焼しているのだろう。区間的にここまで火の手が及ぶことはないと思うが心配だ。近くにあった双眼鏡で周囲を見回すと幾つかわかったことがある。
まず通った道に人が少なかった理由。家に閉じこもっている人も多いだろう。しかしちょうど近くの公園でイベントをして、多くの人が参加していたのだろう。公園の至る所でゾンビのおしくらまんじゅうをしている。入り口付近にゾンビが出現して、そのまま感染が広がったのだろう。生存者はいなさそうだ。唯一良かった点をあげれば、今火の波が公園にも到達しそうなところだろう。全員は無理でも何割かは焼けてくれることを願うばかりだ。
そしてもう一つ、これまた近くに学校があり、そこに生存者が避難しているのが見える。大勢の男達がさすまたや道具を持ってゾンビに立ち向かっている。どうやら学校方面にもゾンビが集中しているようだ。
(こっち側にゾンビが少ないのは何よりだな。今のうちに集めれるだけ集めた方が良さそうか。)
先ほどまで深く傷ついていたのにこの光景を冷静に観察できていることに自分でも驚いている。自分が関わらなければこんなものかと思いながら階段を降りる。
コーラを飲み干したらまた外に出た。学校方面にもゾンビが集中しているのがわかった今、動けるうちに動かないといけない。そう思い足を動かす。
「あのすみません!」
一瞬ビクッとなったが、急いで声がした方を振り向く。3人の人が立っていた。見れば普通の生きている人で体が弛緩する。
「はい何ですか?」
「貴方はどこに行かれるんですか?私たち家にご飯がなくて外に出てきたんです。でもニュースで暴動が起きているみたいですし、道に倒れている人もいて危険そうで...。」
気の弱そうな男はおずおずと話しかけてきた。ニュースで今の現状は知っているが、まだ状況を飲み込めていないようだ。いやこの状態が普通だろう。混乱した頭でまず物資調達とか考えて、バットを持って歩く人が異常なのだ。家に戻ったタイミングで着いた血を流しておいて良かった。そうでなければ余計なトラブルに巻き込まれるとこだった。
「私も状況が分からないのですが、食料を確保しにコンビニへ行くとこです。良ければ一緒に行きますか?」
「そうですか!是非よろしくお願いします!!」
メンバーが増えた状態で再度コンビニへ来た。づかづかと入っていく俺に3人は引いていたが、お金を入れているところを見せると同じように入れ始めた。
リュックサックに詰めながら様子を伺うが、特にこちらに対してのアクションはない。何買おうかなとワイワイしている。恐ろしいのが3人がかりでこちらへ襲いかかって来られることだ。数の暴力には対抗できない。本来声をかけられた時に濁しておけば良かったが、聞かれたことについ正直に答えてしまった。
(これからは要注意だな。切羽詰まってくると人は何するか分かったもんじゃないのはこの手の題材小説でよく見た。)
その後何事もなく各々物資を調達し終わったタイミングでふと男が言った。
「この辺に交番があるんですけど、警察官の方はいるんでしょうかね。もし入ればこの事態が何なのか聞きたいんですけどね....。」
交番。そういえばこの辺にあったなと適当に相槌を打っていたが、ふと気になったことが脳裏に浮かんだ。アレがあるかもしれない。
そう思った俺は男達と別れて家へ戻り、もう一度道を走る。コンビニへ残っている物資の最後の回収がてらアレの行方が気になり交番へと走る。
交番に着くと中を覗いてみる。誰もいない。いつも暇そうなおっちゃんがいるが今日は流石にいない。この事態の収集に当たったのかと思い中に入っていく。交番の中なんて入ったことがないが薄暗い。携帯のライトを照らしながら進むとつんと鉄臭い匂いが漂っているのに気づく。どうやら奥の休憩室?が匂う。そっとドアを開いて
ガッ バギィィ




