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突然激しい音が響いた。激しいどころか爆発音だ。
「な、なに!?」
「あー!クガネたちよ!気にすることないわ!」
「うきゅい」
頭の上にはルピナス、肩にはクロちゃん。
このメンバーで食事を楽しんでいたんだけど…。
なに?ここではあんな爆発音が当たり前なの?
「クガネはね!強くなりたいのよ!だからいつもゼロに修行してもらってるの!」
「うきゅうきゅ」
「ゼロはね!言ってたわ!俺を殺せる可能性が一番高いやつはクガネだってね!」
「うきゅきゅ」
「ということはゼロさんは、自分を殺せる人を鍛えてるの?」
「そうなるわね!」
そうなるわね!…じゃないよ、もう。そんな意気揚々と言うことじゃないって。
なんで鍛えてるかとか考えたら悲しくなるじゃん。
「でも遊んでるだけよ!ゼロにとっても特訓になるしね!たぶん!」
「まぁ確かに…楽しそうにしてる」
ゼロさんは戦いながら笑ってるのは珍しいことじゃない。実際に楽しくないわけじゃないらしいし、ゼロさんの境遇を考えると楽しんでないとやってられなかったと思う。それに…正直生きるとか死ぬとか、命に関しての概念がとんじゃってるし。
だから今も同じく笑顔。目は笑ってなくて、張り付いたように口の端をつりあげて。
……ゼロさんが声をあげて、目を細めて大笑いする日ってくるのかな。
「どうしたの?」
「ううん」
余計なこと考えてた。
「それにしてもすごいね…」
すごいというか、わからない。
ゼロさんの戦法ってカウンター気味なものが多いから、いつもあっちこっち移動するより待ち構える方が多い。まぁ行かなくても来るし、来なければそれにこしたことないってことだろうけど。
だからゼロさんの姿は見える。でも、襲いかかっているはずのクガネの姿は全然見えない。見えないけど音はして、音がするときにはゼロさんの腕も一瞬消える。
どんなスピード戦をしてるんだって。それに音とか周りの影響とか見ても威力がおかしい。絶対におかしい。
「そろそろ終わるわね!」
「え。ルピわかるの!?」
「これでも女王よ!戦況くらいわかるわ!」
ルピがえへんと威張るのとほぼ同時。
ゼロさんが地に突き立てた剣に手をかけ、そしてそれがブレた。間をおかずに金属音が響き、ザザーと地面をすべる音と一緒にクガネが現れた。
クガネの息はあがっていない。けど動かない。対してゼロさんはゆっくりと進んでいく。
「いまの、なんだ?」
「見せたことない技」
「うごけなくなった」
「だろうな」
ゼロさんが煙草をふかしながら、肩に担いだ剣をクガネの頭にコンと当てる。
試合終了だ。
よし、終わったなら、肉とお酒を差し入れに持っていこう。
「ぜろ。まだうごけない。なんだ、これ」
「衝撃」
「しょーげき?」
「お前、剣がきたら受け止めるか避けるかで弾かねぇだろ。で、突然きた攻撃は避けるより受け止める方が多い。あの攻撃は避けれねぇなら、弾かねぇとな。さっきのは肉を切る武器じゃなくて、ぶん殴る武器だったんだよ」
「…よくわからない」
剣が切っ先を向けながらぶん殴る武器になるって、わたしも意味わかんない。そしてそれを受け止めたら、動けなくなるのもわかんない。
クガネにお肉を渡すと一口で鳥一羽が消えた。
「受け止めた腕から衝撃が伝って、体の臓器が揺らされてんだよ。お前みたいな感覚派にはきついだろうな」
ゼロさんにお酒を渡すと一息で空になった。
なに。二人とも瞬間芸ですか?
「てから、からだ?なんでだ?」
「それが技」
「…うぅうううううう」
クガネがばたりと倒れて、じたばたと暴れだす。口だけはもぐもぐと動かしたまま。
「わざってなんだぁぁぁぁあ!!」
肉を飲み込んで涙目で喚くクガネ。面白そうにゼロさんはその様子を眺めていた。
「仕方ないわ!クガネ!ゼロは表のルナティクスで鬼剣にも勝ったのよ!技術じゃ勝てないわ!」
「俺の技術は体を鍛える余裕がある奴には辿り着けねぇって。毎日死にかけてたら追いつけるかもな」
「がうううううううぅぅぅぅいーーりずぅぅぅうぅ」
飛びついてきたクガネを思わずよしよし。背丈はそこまで変わらないけど、なんとなくお姉さんになった気分だ。もふもふ気持ちいい。
「キケンってなに?」
「剣士の等級で、上から剣王、龍剣、鬼剣。剣王は一人で、龍剣は2人、鬼剣は3人しかなれねぇらしい」
「それって世界で5本指に入るかもしれない人を倒したってことじゃん」
「まぁそうなるか。確かにいつもよりあの仕事大変だったか」
そりゃとんでもない仕事だよね。世界のトップクラスを倒してこい、なんて。
「殺してねぇよ。そいつの師からの依頼で鼻っ柱折ってきてくれって連合宛てにな」
「すごい金額が動きそうだね…」
「まぁ有名な道場だったし、そこまで負担でもねぇだろ」
ゼロさんは煙草を消すと、唸るクガネの尻尾をもしゃと掴んだ。連動しているかのようにピンと立つクガネ耳。
ゼロさんは尻尾を引っ張ってわたしから引きはがすと、そのまま宙づりにしてしまった。目を白黒させて、妙におとなしくなるクガネ。
「クガネ。そんだけスピードがあるならもっと柔軟に動け。直線的過ぎて体に負担がかかってる。
お前のスピードを殺さずに、直角に曲がるなんざ不可能に近いんだよ。それをしようとするから体が壊れ始めてる。もっと円をイメージしろ」
「えん・・・まるか!」
「ああ。あと腕が耐えきれてない。スピードに振り回されて、脱臼しかけてんぞ。筋も伸びてるし」
「そうか!うごきにくいとおもった!」
「…今回何回俺に攻撃された?」
「3回だ!」
「7回だ。どこいったんだよ、4回」
体が右に左に、振り子のようにされるクガネ。振り回されながら考えている。尻尾、痛くないのかな。
悩むクガネをみて呆れた様子でため息をつくゼロさん。掴んでいた尻尾を離した。
「お前、死んだことにも気づかずに動きそうだよな」
「それはつよいな!」
強いけど、生き物としてどうなの。それ。
着地したクガネはすっかり元気になって、ルピから新しい肉をもらい、ゼロさんにはちゃんと食えと、クロちゃんが変身までして料理を持ってきていた。
「ここに銀がいたら最強メンバーね!」
嬉しそうにルピが言った。
何故か開始されそうな小さな宴会に、大騒ぎ担当のルピは抑えないといけない。絶対にゼロさんの機嫌が悪くなる。あの煩さなら耳の良いクガネやクロちゃんも嫌だろう。
「ささ!乾杯しましょ!いええええぇぇぇぇい!!!」
ダメだ。もううるさい。
カーンとグラスが響いて、ルピの持ってきた飲み物を煽るみんな。
ルピはうるさいけど、盛り上げ隊長としては最適のようだ。なにせ本人が一番楽しそうだし。もうこれでもかっていうくらいに楽しそう。
ゼロさんもクガネも嫌な顔してないし、こういうときにルピの煩さはいいのかもしれない。
「う?」
肉を咥えたまま、クガネの耳がぴくりと動く。
ゼロさんは無言で料理の並んだテーブルを持ち上げた。
なぜ?
「イーリスちゃん!避けて!」
なぜ!??
そんな言葉言う暇もなく、景色は真っ赤に染まった。
「あー。めんどくせえことになった」
「おれにげていい?」
「うちもちょっと勘弁かなー」
わたしは燃えてなかった。
焼けるかと思ったけど、寸前でゼロさんに首根っこを捕まれたようだ。さっきのクガネみたいにぷらんぷらんと揺らされている。
「みんなどうしたの?」
「すぐわかる」
そしてその言葉通りに現れたのは、大きな尻尾だ。
ひとつじゃない。尻尾が9本。クガネみたいな灰色じゃなくて、輝く黄金色。そして長いストレートの金髪が炎に揺られて舞っている。
「ゼロ!!」
その女性は尻尾を逆立てて激怒していた。




