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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第七章 ルナティクス
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10




宴は続いた。


俺と銀は適当に話し、時々クガネが暴れるから取り押さえて、ガキは挨拶して回っていた。護衛にクロが肩に乗っている。どこに行ったかと思ったら、こいつも治療を受けていたらしい。



「腕をあげたな」


「あ?」


「先ほどのだ。私の力を的確にとらえ、過剰でも過少でもない力で相殺していた。決して防げないように陣を張ったつもりだったんだがな。あげくこちらの目を奪ってくるとはな」


「ティナに人間に魔物と相手してたら自然とな。ここにくるのも3年ぶりくらいか…。かわんねぇな」


「あれほどの変化を求めるのは人間くらいなものだ。ここは平穏であればいい」



さて、と銀が立ち上がる。持っていたグラスはいつの間にか消えていた。



「ルナの元へ戻る。アレを安定させるには時間がかかりそうだ」


「だろうな。頑張れよ」



無感情な返事に無感情な目で返され、銀は消えた。遠くで見る限り静かなのはここくらいで、ガキを中心にして盛り上がっているようだ。



「ほんと、好かれやすいやつ」



人間に恨みがあるとあれほど脅しておいて何だが、実際ここの奴らにはそういった考えはない。


戦争に敗れた。それを十分に理解しているからだ。


だから、ここにはティナ持ちもいるし、クガネみたいなわけわからんやつもいる。


それでもアビスシートという人間がくるのは初めてだった。


何か起きるかとも思ったが…。起こさなかったのはあいつの力だな。俺が初めてここに来たときは殺伐としてたもんだが、まぁしょうがないな。俺も荒れてたし。



「ぜろ!」



目の前に立ち耳が揺れる。主張の激しい尾はばっさばっさと激しい。


ああ、あれだな。遊んでほしいんだな。



「クガネ」


「なんだ!」


「あのガキのこと、頼めるか?」


「う?」


「俺はずっとここにはいられねぇだろ」


「おれはいいけど、めずらしいな!ぜろがおれにたのみごとなんて!」


「お前ら相性いいと思ってな」



馬鹿な感じとか、チビなとことか。



「でもおれはなにをたのまれたんだ?」


「困ってたら助けてやれ。そんくらいでいい」


「ふうん。ならかんたんだ!いいぞ!」



重い腰をあげ、片手に剣を呼ぶ。赤と金の目を輝かせて、クガネは満面の笑みを浮かべて構えた。尻尾がさらに激しい。



「じゃ、遊んでやるよ」


「よし!よし!いくぞ、ぜろ!!ガアァァウゥルルルルル!!!!」



獣の唸り声をあげてクガネの爪が飛ぶ。咄嗟に体を後ろに仰け反るも、髪の2,3本がひらりと舞った。



「…まだ早くなってんのかよ」



俺も剣を振るうがそれは空を切るだけ。とうにあいつは姿を消している。


耳を澄ます。当たり前のように音はなし。目に力を込める。あいつに…魔力はねぇからな。


自然と口元が緩んだ。


ティナ持ちで魔力まで見える俺が、まったく相手を捕えられないとはな。



「ガアァ!!」


「っと」



低姿勢からの一撃を飛びのける。


地面に腕がのめり込むほどの威力のままに、クガネは腕で俺の元までジャンプしてきた。クガネの獣の爪と、俺の悪魔の爪が交差する。


耳をちぎらんばかりの打撃音。


そしてその場で一回転したクガネの強烈な踵落としが炸裂する。


受けはしない。俺の剣でも砕ける。


剣の腹で威力を流し、クガネの足は大地へ衝撃を与えた。


衝撃波に地面の砕ける音。

俺もすぐさまその場を離れる。



「うー。くやしいな」


「俺を殺す気かよ。馬鹿げた威力しやがって」


「でもあたらない。ぜろはやっぱりつよいなぁ」



クガネがもう一度と姿勢を低く構える。耳と尾の毛が逆立ち、目は血に飢える猛獣のようだ。

俺は剣をその場に突き立て、爪を鳴らす。剣じゃ、あのスピードを捌けても反撃まではできない。


あいつの持つ尋常じゃないスピードは、視力で捕えることもできない。そしてそこから生まれる火力は掠るだけで下手すれば死ぬ。


自前の白い爪は切れ味よりも強度。正直あれが折れたところを見たことが無い。


で、あの足だ。あのスピードを作る足。爪という武器よりも、圧倒的な破壊力を持つ。俺でもまともに喰らえば即死だろうな。



「けど、甘いな、クガネ。お前は直線的すぎる」


「いいんだ。まっすぐに、おれはぜろをつらぬく」



俺の反応が間に合わないほどに。見えていても対応できないほどに。


クガネはそれだけで、技術よりもスピードのみを鍛えてきた。



「いくぞ!ぜろ!」


「かかってこいよ」



風を切り裂き、大地を砕き、黒と白の爪牙がぶつかった。





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