03
船内を探索。
元海賊船なだけあって構造は複雑のようだ。隠れる場所も逃げる場所にも困ることはない。
案内図には非常口や避難場所が示してあるが、まぁこれは役に立たねぇな。
命が何より大事な連中が、こんな細道を綺麗に並んで通れるわけがない。ましてやあのガキなんか、あっという間に揉まれて踏み潰されるだろう。
ま、んなことさせねぇけど。そんな緊急事態になったら殺られる前に殺る方が楽だし、こんな通路通るより空飛んだ方が100倍楽だ。
機関室、ボイラー室、客間、倉庫…。それぞれを回り、それぞれの弱点を見つけておく。
万が一鮫野郎が裏切ったら、ボイラー室と機関室を壊せば、金持ちもろとも沈んでくれるだろう。壊し方もわかった。別に力を使う必要もねぇな。
「それも無理だったら船底をボーン、とか考えてねぇか?お客さん」
「………」
「関係者以外立ち入り禁止。見えなかったか?」
「船に乗ってる時点で関係ないとはいえねぇだろ」
「一理あるがよ。常識ってもんを考えろや」
「生憎、存在が常識外れなもんで」
背中に突き立てられた拳銃。それに構わず振り向いた。
おーおー、見ない内に老けたな。こいつ。
「元気そうじゃねぇか!ゼロ!」
ネズミも逃げ出すほどの大音量。
じいさんのくせに、でかい図体もでかい声も何も変わってねぇらしい。
あ"ー、耳いてぇ。
「……こんなとこで何してんだよ。鮫の頭がよ」
そこには鮫の大頭、昔縁があった大男がいた。記憶にある頃よりもシワが増えて、体も丸み帯びているが、死にかけてはないらしい。残念なことに。
「ぶわっはっは!まぁいいじゃねぇか!倅が世話になったらしいしな!ぶわっはっはっはっは!」
でかい手のひらでバンバンと背中を叩くジジイ。
痛ぇよ。並みのやつだと悶絶もんだぞ、それ。
「うっせぇよ。声落とせ。響くだろうが」
「おっと!悪い悪い!“ゼロ”は、内緒で乗ってんだったな!わっはっはっは!」
わはははじゃねぇよ。
「何年ぶりだ、ゼロ!積もる話があるだろ!うん!今晩はゆっくりワシと飲もう!」
「話はねぇし飲む気もねぇよ。誰がやかましいジジイと飲むかよ」
「口の悪いガキやっちゃな!相変わらず!あ、あと倅はシメといたから許してくれな!」
いや、別にシメなくていいよ。ただただお前が気に入らなかったんだろ。勝手に話進まされてさ。
「まぁいい!よしよし、元気そうで安心した!」
「で?何でお前がいるんだよ。表の仕事はしねぇんじゃなかったのか?」
「ワシの船にいて何が悪いぃ!!」
まぁそうだけど。
「……実はの、今回はワシが船長をすることになってな。うん。そのー、予定しとったやつが怪我してな、うん。仕方なーく、な!」
怪我させたな、お前。しかもそれ息子だろ。
「ということで、安全安心の航海を約束してやらぁ!ワハハハハハハ」
船長になるために身内に攻撃するような奴に何の安心があるんだか。
……まぁいいや。話してたらキリがねぇ。
「じゃ、俺は戻る」
「待てぃ!!」
ぶっとい腕が肩に回る。
太すぎて肩というか首がしまりそうだぞ、おい。
「駄目だ!行かさん!少しは付き合え!」
「なに出港直前に酔っぱらおうとしてんだよ、クソ船長!なにが安全安心だ!」
「なーに!ワシの育てた船員だぞ!船長の一人や二人おらんくても平気平気!」
なら船長いらねぇじゃねぇかよ。
引きずんな!この馬鹿力が!
「そんなに抵抗すんなら港に帰っちゃうゾ★」
「…………」
「ほら、ワシ、船長だし」
「………」
あ"ー、もうなに言っても無駄だな。
「………くっそめんどくせぇ奴だな」
「がはははは!それでいい!がっははははははは!」
よし。作戦変更。
速攻で飲み潰してやる。




